第四十一話
エルの魔術講座のはじまり、はじまりー。
内容は、子供レベルのものである、弱い風を吹かせることだ。
これくらいなら私にもできるだろうってことで、エルがチョイスしてくれた。
「どーやんの? 詠唱いるの?」
「あぁ、これくらいなら、詠唱はあまりする必要はないわ」
「……うん。(詠唱しなくていいのは嬉しいけど、もしかして、できなかったら詠唱しないといけないのかな?)」
それは嫌だ。
「そんなに心配しなくても……子供にも扱えるように簡素にしてあるから、想像するだけでだいたいの人はできるわよ。…その分威力は弱いけどもね」
「それは良かった!」
いや、ほんと良かったよ。
また、あの中二病発言をしなければいけないのかと思ったよ。
周りに誰もいない状況で唱えただけで悶えるほどに恥ずかしかったのに、エルの前であれを言うだなんてとても耐えられないからね。
「(あー…でもエルは魔術師だから、別に恥ずかしくはないのかな。そうだとしたら、おそらく魔族は皆あれを平然と……)」
…わー。見てみたいような見てみたくないような。
怖いもの見たさってやつかな。
「……じゃあ挑戦しまーす!」
イメージイメージ。風を吹かせる感じ…って、ここ室内だよね? 風なんて吹くんだろうか? …って、集中しないと……。
「……」
「……」
「………出来てませんよね?」
「……そうね」
魔力量は充分だし意欲もあるから成功するはずなんだけど、と首をひねるエルを前に、居たたまれなくなる。
「……素質、ないのかね」
「いや、そこは心配しなくても良いわ。…カノンに聞きたいのだけれど、イメージはできていた?」
「風がサーって吹き抜ける感じでしょう? ちゃんと想像したよ」
「……何で発動しないのかしらね?」
「その質問、そっくりそのまま、そちらへお返しいたします」
私の方が知りたいよ…。
「──ま、ここで二人で悩んでいても仕方がないからね。せっかく暖まったのに湯冷めすると悪いし、部屋に帰ろうか、エル。…原因究明は明日、王宮図書館で調べてみるよ」
人間たちの国へと行くのは明後日。といっても明後日はバタバタするだろうから、それまでの猶予期間は実質明日一日のみ。
……素質はあるって、優秀な女魔術師のエルからお墨付きを貰ったからね。
明日一日で、頑張って原因解明してやろうと思います!




