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第四十話


「ふぅー…いい湯だったぁ」


 用意されていた浴衣に着替えた夏音は、片手をパタパタと仰いで、長湯のせいで火照った顔に緩やかな風を送る。


 長い黒髪はタオルでくるんだまま、放置だ。もう少し時間が経ってから、ちゃんと乾かそうと思ってる。…ぶっちゃけ、髪の手入れはものすごく面倒だけど…しないと海斗に注意されるからねぇ。だから渋々してる。


「えぇ。…久しぶりにこんなに長い時間入ったわ」

「うん、私もー」



 一時間以上湯船に浸かっていたのは、エルとの女子トークが非常に盛り上がったからだった。

 エルから、魔界の美味しいスイーツ店とか可愛い雑貨店とかを教えてもらった。私は日本のスイーツである和菓子や、洋スイーツの話をした。


 …あ、今度シフォンケーキ作るって約束もしたよ。

 失敗するかもしれないけど、って言ったらそれでも構わないって言われた。エル優しい。


「でも気持ちよかったねー。温泉なんて久しぶりだったよ」


 正確には、ここ温泉じゃないんだけどね。

 でも、それくらい広かったよ。これで露天風呂やサウナもあれば完璧だね。いや、サウナは使わないだろうけど。


「オンセン?」

「こういう所のこと。男女別のもあるけど、混浴もあるんだよ。天然温泉っていって、山奥や川の近くにあるものもあるんだよ。…あいにく私は天然温泉に行ったことがないけど、やっぱ一度は行ってみたかったねえ」


 単なる好奇心です。あ、魔界に来たことを後悔してなんかいないからね? 大丈夫!


「自然のお湯が熱すぎるからって、竹を使ってそのお湯の温度を冷ましてから温泉に注ぐ所もあるんだよ」


 有名だよね、竹にお湯を伝わせるやつ。…竹だったっけ?

 どこにあるかも温泉の名前も知らないんだけどさ。



「温泉はね、あったかいお湯が湧き出ていてね、昔は治療に使われたこともあるくらいなんだよ。

 たしかに病気治癒に効果がある温泉もあるけど、今は医学が発達しているからねぇ……。でも、今でも病気治療のために温泉に入る人もいるよ」


 たしかに、温泉に入ると湯冷めしにくいから、私みたいな冷え症には嬉しいよね。特に冬とか。


「ニホンは豊かなのね。…はい」

「お、ありがとー! うん、火山の国だしね」


 どこからかエルが持ってきてくれたのは、色がない飲み物だった。


「あぁ、それ熱いから気をつけなさいよ」

「ん? …でも、容器持っても熱くないよ?」

「そりゃ、魔術が織りこまれているもの」

「oh…。魔術って便利だね」

「そうね」


 渡された湯飲みを受け取りながらそう質問すると、さも当然と言うようにエルが答えてくれた。おー、ワンダフル。


 自分の湯飲みを持って隣に座ったエルを視界の隅で確認しつつ、夏音は液体の香りをかいでみる。


「(……なんていうんだろ…フローラル? 爽やかな香りだなぁ)」


 熱いのは苦手なので、冷めるのを待つことにする。

 じーっと液体を見つめて湯気が出なくなるのを待っていると、隣のエルが「どうしたの?」と聞いてきた。


「あっついの飲めないんだよねぇ…」

「そうなの? 魔術で冷ましてあげましょうか?」

「え。無駄遣い……」

 

 自然に冷めるのを待っているよ。別に急ぐわけでもないし。

 ……にしても、本当に便利だよね。魔術って。


「そうだ! 今教えてよ、魔術をっ。簡単なので良いからさ」

「……この場でできるのって、風とか水系統のものくらいしかないわよ? それでも良いのなら教えるけど」

「ウェルカム!」

「……?」

「よっしゃ来い!」


 意味が分からなそうだったので言い換えてみました。




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