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第三十九話

「え、エルフ? クレトンさんが!?」


 まさかの…!?

 驚きで素っ頓狂な声を上げる夏音。


「あら。…エルフは知っているかしら?」

「うーんと、地球のであればそこそこは知ってるよ。エルフはね、ゲルマン神話っていう北ヨーロッパの伝承に出てくるんだよ」

「……きたよぅろっぱ?」


 エルから、聞き慣れないであろう単語を聞き返された。

 発音があやしいのは、やはり日本語が独特の発音だからだろう。

 当たり前と言えば当たり前なんだけど、どうも、こちらの世界の人が発音するのは難しいらしい。


「北ヨーロッパ、だよ(……あっれ? そういや私、今、日本語を話しているのかな? それともこちらの言葉を喋っているのかな?)」


 日本語とこちらの言葉が同じ言語だとか…? 可能性は限りなく低いだろうけど。

 それとも、召喚される時に、日本語とこちらの言葉を互いに自動翻訳してくれるチート能力でも備わったのかな…?

 んー…よく分かんないや。

 

「いくつもの国がある地域で…うーん。そうだね、魔界とか人間界っていうのと同じ感じだと思ってくれれば良いよ」


 適切な例えじゃないかもしれないけど、今の私にはこれが限界なんだよ…。

 ああ、もっと勉強しないといけないなぁ。…本音はしたくないけどね。誰が好き好んで勉強なんてするか。




「…その、キタヨーロッパという所では、エルフはどんな種族として語られているの?」


 いつの間にやら、エルはほぼ完璧に『北ヨーロッパ』と発音できていた。


「元々どういう風に伝えられてきていたのかは知らないけど、一般的には、とても美しくて若い外見で、不死または長寿、魔法を使えるって設定だよ。…あ、元は森の妖精の総称だったっけかな。知識に富んでいるとも言われているし、運動神経が良いというか動作が速いというか…とにかく、運動面でも優れているというよ。

 ちなみに、今の日本のアニメではハーフエルフもよく登場しているよ。たしか。あー、あと、耳が長くて尖っているという設定もあるし」


 

 ──そういう者たちは差別対象になることが多いんだけどね、とは言わなかった。

 だって、クレトンさんとエルが結婚するとして、その二人の子供はハーフエルフと呼ばれる存在になるから。

 結婚もまだ(…たぶん婚約者っていうのは本当なんだろうからね。根拠は女の勘です)だというのに、その先の心配までさせたくない。

 ……あぁ、でも、魔族は皆仲良いらしいからそこそこ大丈夫かな? …魔術師は人間だから、その内の何人かは、何か言ってくるかもしれないけど。

 ま、そこはスルーすれば良いさ。

 もし何かあったら私も味方になるからね!



「それで、魔界の本物のエルフはどうなの?」

「ニホンのエルフ像と似たり寄ったりね。エルフは皆美形だし、運動神経もそこそこに良いけれど……若い頃に外見の成長が止まるだけで決して長寿や不死ではないわ。知識量も人それぞれ。

 …だけど、そういえばエルフには風の魔術を得意とする者が多いから、そういう点では動きが速いというのは事実なんじゃないかしら」

「へえー!」


 生のエルフ講義ですよ。テンション上がる!


「付け足しておくと、彼らはあまり争いを好まない種族よ。だから、ゼノムのような者は稀ね。…けれど、別に異質だからといって追い出したりすることはないわ」

「なるほど、なるほど」

「……耳の先が尖っているのは当たりだけれど、鋭く尖っているわけではないし、耳の長さも普通よ?」

「……その根拠って、クレトンさん?」

「もう一人いるわ。…前に、私の上司だった女性エルフよ」

「ん、そうなん?」

「ええ。今は里帰りしているから、最近は会ってないけど…元気みたいよ」

「それは良かったね」


 エルが信頼している人のようだし、少なくとも悪い人ではないんだろうなー。

 機会があったら会ってみたいな。




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