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第二十七話


お久しぶりです。

お待たせいたしました。





 ──王宮図書館大改革二日目。



 昨日のように、出勤前のエルから王宮図書館まで送り届けてもらった夏音は、図書館に入るとすぐに、本の整理を開始した。


「…入り口側が図鑑と初心者向けの魔導書でー、窓側には国と人間に関する書物を揃えるとして。…植物と動物の図鑑は奥の方が良いかな。

 ──この、いかにも怪しげな書物たちは一カ所にまとめておこう。本当は鍵付きの部屋か隠し部屋に保管が良いんだろうけど、それはみた感じないし。……中身、黒魔術じゃないと良いなぁ」


 だって、黒魔術って、生け贄を捧げたりしてそうで怖いんだよ。

 うぅ、死霊召還とか生ける屍を造る方法とかが載ってそう…。(完全に偏見)


「……うーん。人目に付かない所ってどこかな?

 …それとも、いっそのこと、書物と書物の間にところどころ入れとくとか? 『木を隠すなら森の中』って言うし!」


 それが一番良いかもしれない。

 そう考えた夏音は、早速行動に移し始めた。

 適当な間隔で、普通の書物の棚に、件の怪しげな書物を一冊、二冊…と紛れ込ませていく。

 ここんとこは、流石は図書館補。

 慣れた手つきで、それこそ怪しまれない程度に入れておく。



 それが終わると、夏音は少し早い食事を開始した。

 豪華な食事を咀嚼しつつ、午後からの予定を頭の中で組み立てていく。


「(あとすることといえば……?

 内部は大体それらしくなってきたし、変に手を加えるのは控えようかな。苦情や要望が出てきたときには、その都度対応して…。

 じゃあ午後からは外かな)」


 夏音は、ちらりと図書館の周辺を一瞥した。


「(結構草ボーボーだね…。森もそうだけど、やっぱり太陽が複数あると日の光で光合成しやすいのかな。

 ……ん? そもそも、この世界の植物って光合成してるのか…?)」


 深く考えようとしたが、考えればキリがないだろうな、とぼんやり思ったので、泥沼化する前に切り上げておく。

 自分は、知りたいと思ったことはとことん突き止める性格のようだから、その判断は賢明だろう。


「(──…そういえば、私って王女様だっけ。王女様って何するのかな…?

 天皇皇后両陛下はどんな事をしていたっけ。……あー、お茶会みたいなの開いてたな。園遊会、だっけ?)」


 ある期間、連日ニュースで報道されていたから、よく覚えてる。


「(小説の中では、王女様は何してたっけ?

 …それにしても、まさか自分が王女なんて身分を名乗ることになろうとは思ってなかったなー。

 知っていたら、もっと勉強してきたのに。政治についてとか、国の仕組みについてとか。……その知識が、頭の中に残るかは別として)」


 まぁ、それは海斗の仕事らしいけど。

 でも、やっぱり、兄の役に立ちたいという気持ちはあるわけですよ、うん。


「(外交かぁ……政治だの策略だのって言ったら、思い出すのは『君主論』かな…マキャベリの。あとは孔子の『論語』とか)」


 あ、本の内容なら覚えていられるんだよ。何せ関心があるから。



「(…そうだ。

 ……今はまだ、こうやってのんびりしていられるけれど、ずっとこのままな訳じゃないよね。

 ある程度落ち着いたら、王女としての公務も入ってくるだろうから、そしたらここにはあまり通えなくなるかな…。

 でもそれじゃあつまらないから、側に見張りがいないのなら人目を盗んででもちょくちょく来ようかな。

 …海斗に怒られるかもしれないけど)」


 そう考えていると、ふと、とある本の記憶が頭を掠めた。


 『人目を盗んで』『見張り』ってキーワードで真っ先に思い出したのが、『伊勢物語』。作者は不明だ。

 …たしか、在原業平が主人公って言われてて、頭の中の話の題名は『通ひ路の関守』で…───って、本の話になると際限がなくなる。


 このまま座っていると、また思考の海に漂いそうだったので、ここらで中断。

 頭の中を図書館補モードに切り替えて、立ち上がる。

 スカートに付いた草や僅かな土を、ポンポンと軽くはたき落としていると、また時計の音がした。


 ──ボーン、ボーン…


 鳴り終えるまでの数を数えてみたら、十一回。

 十一時ということだ。


「意外と妥当な休憩時間かな」


 夏音は一人呟き、そこから一歩も動かずに、首だけ動かして辺りを見回した。

 見えるのは、辺り一面の雑草。それと、迷路の森だ。


「……。この状況が軍の作戦だったら、勝手に除去すると悪いよね」


 もしかして、この伸び放題の雑草の下に、人間の軍の侵入を防ぐためのトラップを隠しているとか。

 或いは、図書館の窓に絡まっている蔦は、有事の際に敵を薙ぎ倒すような物であるとか。


「……うーん?」


 撤去すべきか、せざるべきか。

 夏音は頭をフル回転させる。


 ──そんな機能がないという可能性も有り得るのだが、そんな事には気付かない夏音は、『この状況は策略の一つである』という認識の元、様々な憶測と、その場合の対処法を考えたのだった。



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