第二十四話
「御馳走様でしたー」
きちんと手を合わせて、感謝の言葉を述べる。
夏音は鞄にお弁当を片付けると、立ち上がってドレスについている埃や草を払った。
「…そぉいや、けっこう汚れてたんだっけ。あの中」
埃がドレスに付着していたなんて思わなかったよ。てことは、このまま昼食食べてたって事だよね。次からは気をつけよう。
「お腹いっぱいでちょっと眠いけど……それより図書館ー」
まずは掃除をしたほうが賢明かな。私は気管支系は弱くないからまだ良いけど、子供とか、喘息持ちの子とかが利用するには過酷な環境だからね。
ま、普通の人でも、何度もここに入っていたら気管支悪くしそうだけど。
「……掃除するには、はたきと箒と雑巾が最低限必要だな……。掃除は明日にしようっと」
──では、道具が何もないこの状況で、他にできることと言ったら?
「(ええっと……掃除が終わったら何しようと思ってたんだっけ…?)」
畳の件も後日にするとして、あとは?
「本の整理だったはず。
種類別に並べて、見やすいようにしようっと」
それにはまず、この図書館にどんな本があるのか調べなくては。
「(埃を吸い込むのは体に良くないしなぁ…)」
今更な気もするけど。
それでも、やらないよりはやった方が良いだろうってことで、私は早速、お弁当をくるんでいたバンダナもどきを剥ぎ取った。そしてそれを三角に折って、口を当てて後頭部で縛る。
バンダナは、本来は頭に巻いて、髪が埃を被らないようにしたり、いざという時は落下物から頭を保護する役割を担っているんだろう。
しかし、今は頭よりかは気管支を守って欲しいわけで。
「いざ行かん、図書館内部!」
いやー、気合いを入れることも大切だからね。
図書館の扉を開いて、中にはいる。
「……げほっ…。(もう、この扉開けっ放しで良くないか?)」
その方が換気もできるし。
風も入ってくるから、埃を舞い上げるっていうのもあるけど…あの風の吹き具合だと、舞ってもせいぜい私の腰付近までだと思うし、気管支系には被害を与えないはず!
「(ええっと……)」
先ほどのメモを片手に、片っ端から本を確かめていく。
──これら三冊は魔法学、これとこれは植物図鑑、その隣は擬人に関しての本……。
「……て、あれ?」
何で私、読めてるの?
本の背表紙に書かれている文字は、見たこともない文字だ。何かの形であるのは理解できるけど、読めるなんて──…
「『魔法学についての見聞録』」
……うん、読めるわ。
あれ? え、何で!?
「(ってか、見聞録って…ほとんど噂と同義の気がする。せめて『魔法学に関するまとめ』にしようよ。たしかな真実を書いておこうよ……)」
まあ、筆者に言っても無駄なんだろうけど。第一、筆者が誰だかすら知らないし。
「(……まーいいや。どうして魔界の文字が読めるのか気になるけど…あとで海斗に聞こうっと)」
分からないことは海斗に聞くべし!
「(それより、この膨大な書物を全て種類分けするのはさすがに骨が折れるな…)」
一旦、その行動だけに集中してしまえば楽なんだけども。
──自分なりに、分かりやすいようにメモをとってみた結果。
「図書館内部全ての本を調べた結果──魔導書12483冊、 国の成り立ちだの歴史だのの書物が4252冊、人間に関する書物が1213冊、植物と動物の図鑑は合わせて135冊、読めなかったもの630冊……総計17500冊っと」
統計を終えた私は、すぐさま図書館から出て、先ほどお弁当を食べるために座った所へと避難した。
この広さにしては少なかったなー。私の図書館よりも少ないし。
「…それでも、国の重要文献としては多いのかな?」
ここに、国の重要機密はさすがに無かったみたいだけど。…他のところに保存されてるのかもね。
「うーん…。
魔導書はこっちの本棚で。分類方法は、難易度にするべきか、それとも内容で分けるか……」
初心者が上級者向けの本を読んで魔術を暴走させるっていう懸念もあるなぁ。
魔術についてよくは知らないけど、日本の小説ではそういう描写があるものもあったし、念のために難易度別にしたほうがいいかな?
危なそうな本は厳重に保管したほうが良いよね。軽々しく使われても困るし、悪意がある者が使用したら大変なことになる。
……黒魔術に関する書物とかあったっけ?
「いっそのこと、初心者向けのコーナーを作って、その中で内容別に分類するとか……」
ボーダーラインが分からないから、後で帰り際にでもエルに聞いてみようっと。




