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第二話

 デミグラスソースのかかった特大オムライス。

 それが、瞬く間に1人の少女の胃の中へと消えていく。



「…よく食べるね」

「今日は朝から何も食べてないからね~」


夏音のその言葉に、微かに眉をひそめる海斗。


「ちゃんと食べないといけないよ、夏音。倒れたらどうするの?」

「入院する。…そんなに心配しなくても死なないよ、今の医学はすごいもの」



 さも当然、といったように即答する夏音に、海斗はため息をついた。


「……とりあえず、無理だけはしないでね」

「うん。海斗もね」

「もちろんだよ」


 海斗はそう答えると、夏音の頭を撫でた。



「むぅ……?」


 食べていたところをそれで中断された夏音は、少し不機嫌そうにくわえていたスプーンを置いて、海斗を見上げた。

 

「……」

「……」

「……」

「……」


 ご機嫌斜めな夏音の漆黒の瞳と、上機嫌な海斗の焦げ茶の瞳が交差する。

──それから、どちらも決してそらすことなく、数刻が経過し──

 


「……ん?」

 それを破ったのは海斗の方だった。

 何かに気付いたのか、ふと辺りを見回す。


「…どうかしたの?」


 それに毒気を抜かれた様子の夏音が、頭に『?』を浮かべて海斗を見上げる。





「──ねぇ、夏音」

「ん?」

「逃げようか」

「……は?」




 いきなり逃亡計画始動!?



「食器は僕が持って行くよ、夏音」

「…ありがとう…?」

「どういたしまして」




***



 ────時は少しだけさかのぼって。




「……」


 

 彼──海斗は不機嫌だった。

 原因は、周り。



「見てみて!あの子、かっこいいよね!」

「きっと恋人だよ…」

「えー。……あの女がぁ?」

「絶対に私の方が釣り合うよ!」


「ナンパしてこようかな」

「あぁ、あの子な。すげーかわいい」

「止めとけよ、彼氏いるぜ?」


 

 海斗たちがこの食堂に入ってきてから、そこらかしこでこのような囁きが聞こえる。

 

 正直、恋人だの彼氏彼女だのはどうでも良い。むしろ嬉しい勘違いだ。

 ──海斗が嫌なのは、視線だった。

 自分に向けられる、好奇の目はまだ堪えられる。




「でもほら、あの子美人じゃね?」

「体型はあの服だと分かんねーな…


「……(堪えられるわけ無い)」



 妹を舐め回すように見る視線。

 妹に対する嫉妬の瞳。

 幸い、夏音は気付いていないようだが…。




「(はぁ……鈍感なんだよね、夏音は…)」



 海斗は、こちらを不思議そうな表情でみている夏音に気付かれないように、心の中でため息を付いた。

 ……夏音は鈍いのだ。こーいう色沙汰に関してだけだけど、それはもう致命的に。

 

 …自分が美人だってことを自覚してくれれば、まだましだとは思うけど、こんなに騒がれてもなお気付かないところも夏音のかわいいところだよね!



 ───まあとにかく。



「──ねぇ、夏音」

「ん?」

「逃げようか」

「……は?」


 いきなりのことで戸惑う夏音。


 いや、だって、この視線から逃れさせるためにはこれが一番手っ取り早いんだよ?



「食器は僕が持って行くよ、夏音」

「…ありがとう…?」

「どういたしまして」



僕は、未だに戸惑っている夏音を連れて、自分の病室へと戻るべく歩調を早めた。







作者から『お願い』です。


低評価の場合はその理由も付けてください。

評価していただけるのは嬉しいのですが……。




 今後とも、息抜きとして楽しんでいただけると嬉しいです。

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