第十三話
今回は短いです。
「お邪魔しましたー」
あれから、しばらく2人っきりで執務室にこもり、海斗に世間話という名の現状報告をした。
……というか、海斗の『最近どう?』という質問から始まって、最後は『何かあったら言うんだよ?』で締めくくられた。
…そこまで念をおされなくても、駄目だと思ったら海斗に相談するから心配ないのにねー。
それに、『最近どう?』って聞かれても正直困るよ。こっちきてまだ一週間も経ってないし、目覚めたのは昨日のことだから、別に報告することがないんだよね。
強いて言うなら、食べ物が地球のものとあまり変わらないことくらいかな。主食はお米(見た目からして日本米)みたいなものだし、スイーツは西洋のものみたいなのが大半だし。
味や食感、色とかは少し違うけれど、これはこれでおいしい。お米があるんなら、日本の伝統食である、味噌とかもあるのかな?
「エル、待っててくれてありがとうねー」
「別に構わないわ。 それより、次はどうしたい?
魔術はあれで基本は教えたし…詳しいことが知りたいなら、私に聞くより、図書館にある本を読んだ方が良いと思うわ。なにしろ、覚えることが多いし……」
「図書館? …ねぇ、図書館があるの!?」
図書館と聞いたとたんに、夏音は身を乗り出すと、説明を続けるエルの話を遮って、そう質問した。
「ええ、あるわよ。…あまり皆使わないから埃っぽいでしょうけど」
夏音の、いきなりの問いかけと、あまりにも興味津々の様子に若干引きつつ、エルはそう肯定した。
「えー、何で皆して使わないの? 勿体ないじゃん、せっかくそこに本があるというのに!」
「何でって…本って言っても、この王宮図書館にあるものは、魔導書とか、国の歴史についてとかの、難解な書物ばっかりよ?
それより小説の方が面白いもの。
いくら魔術師でも、そんなに魔導書を読むわけではないのだし。どちらかと言えば、魔術師は知識よりも、冷静さとか判断力のほうが重要視されるわ。
それに、小説を読みたいのなら、街に出ればいくらでも売っているから、手軽に読めるし。
わざわざ貸し出し許可が必要な王宮図書館を使う機会はそんなにないわ」
「難解な書物だろうが小説だろうが、本は本だよ!」
良いこと聞いた。
よし、今度本を買いに街に行こうっと。
「街にも図書館はあるの?」
「あるわよ」
「そこに、図書補とか…図書館を管理する人はいないの?」
「図書館を管理……? 本を盗るやつなんていないから、管理職なんて無くても大丈夫よ」
「え、本は傷んだりしないの?」
「傷むけれど…傷んだら新しいものを買えば済むことでしょう?
魔導書や国の文献はさすがに売っていないから、傷んできたら手書きで写すけれど」
「傷まないように、って考えはないの? 物は大切にしないと…」
「無いわ。物は傷むのが普通だもの」
「……本は湿気とか日差しで簡単に傷むほどデリケートなんだよ。これは初歩的な、管理するときに気をつけることのうちの1つだね」
「…? そうなの?」
「そうだよ。……ねえ、エル」
「何?」
「私さ、前──日本で、図書補っていう仕事をしていたんだよ。
これは、図書館とかで働く人のことなんだよ。この世界にはいないのかもしれないけれど──
お客さんが本を見つけやすいように本を整理したり、皆が気持ちよく本を読めるように図書館の環境づくりに努めるのが仕事なんだよ。
知ってる?」
「知ってるもなにも……そんな職業こっちにはないわ」
「そっか…」
まあ、その本の扱いだと無いだろうね。本来、本はそんなに消耗品では無いんだけどな…。
溜め息を吐き──かけて、ふと気付く。
そうだよ、私がなれば良いんだよ!
「───エル!!
私、王宮図書館付き図書補になる!」




