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第十二話



「──で、これは一体どういうことかな、夏音?」



 ───あれから。


 あの口喧嘩は、騒ぎを聞きつけた使用人が呼んできた、目の前の魔王様かいとによって一気に収束へと向かった。


…見事だったよ。

海斗が「何をしてるの?」って話しかけてきた瞬間、皆海斗を見て固まったっきり、誰も何も話さないんだもん。 あ、ちなみにこれ、現在進行形ね。


「…えーっと…エル見下されていらついたので、応戦しました」


「……応戦?」


「言葉の応酬おうしゅうってやつです」


「……まぁ、気持ちは分からなくもないけれど」


 なるほどね、と納得した感じの海斗。 …今の説明で分かったのか、すごいな。


「分かってくれるだなんて、さすが私のかいと!」


「それは当然だよ。 だって僕らは双子──…たった2人の兄妹なんだから」


 そう言って、儚げに微笑む海斗。


「……私は海斗とずっと一緒だからねー?」


 たったふたり、ってところが強調されていたので、もしやと思い、当たりをつけてそう言ってみる。

──慰めの言葉としてではなくて、もちろん本心だ。


「…ありがとう、夏音」


 ふわりと抱き締められたので、お返しにと、海斗の背中に手を回して優しく力を込めつつ、抱き返す。

体格差のせいでか、やっぱり海斗が私を被うような感じになるけれど…それはまぁ、ご愛嬌ってことで。


「本当のことだからね。

 もちろん、海斗を嫌いになることも有り得ないから。 …むしろ、私は海斗に嫌われないかが心配だけれど」


「僕の方こそ、夏音を拒絶するわけないよ」


「…海斗だいすきー、愛してる」


「僕もだよ、夏音」


 ───そうして、ぎゅーっと抱き合って、暫くしてから離れる。

この一連の動作は、海斗も頃合いを分かっているのでスムーズだった。


「「「…………」」」


「…どうかしたの? 皆、呆けた顔して」


 そして、その何か言いたげな視線は一体何…?私たちをまるで珍獣のように見ないでいただきたい。

減るものではないけれど、不可解すぎる…。

……い、いい加減、怖いから止めようか!


「え、えるー? せっかくの可愛い顔が台無しだよ…? だからさ、今すぐにその表情止めようか…?」


「……?」


「あ、戻ってきた?」


「…えぇ」


「あー良かった。あのまま帰ってこなかったらどうしようかと」


そーいや、黒魔術にありそうだよね、人殺す術。 黒魔術っていうものが、この世界にあるかどうかは謎だけれども。 …まぁ、今は全然関係ない話だけれど。話脱線してすみません。


「……仲がいいのね、貴方たち」


「うん。 なんせ2人だけの存在だもの」 (意:双子だもの)


「双子全員がそうだってわけでは無いだろうけれどね。 でも、なんにしろ、仲が良いのはいいことだよ」


「ねー」


 海斗の意見に賛成する。

『きょうだいなかよく』って大切なことだからねー。ほんとにそう思うよ。 日本には『いつまでもあると思うな親と金』っていう素晴らしいことわざもあることだしね。

 ……なんせ、経験しましたからねー、私たち。 もう親孝行とか出来ないわけですよ。まぁ、親不孝もしてないけれどさ。物心付いたときにはもう両親いなかったからね。まさかのシングルですら無いっていう。

 

親戚は優しかったよ。同情ってのが大部分だったろうけど。

あー、あと、海斗は親戚の同年代の女の子達にめちゃくちゃモテてた。

 …今考えると、自分の子供が海斗を気に入ってるから優しく接しておこうってのもあったのかもね、彼女たちの親としては。

だから、両親いない子供わたしたちでも、引き取ってくれるって名乗り出るところが多かったのかなー。あ、それとも…


「……カノン? 急に黙り込んでどうしたのよ。考え事でも?」


「へ…? ……え、何の話してたの?」

 ──気が付いたら、もう話し合い(?)は終わっていた。

声をかけられてはっとし、顔を上げる。

すると、顔を上げた正面で、エルがきょとんと不思議そうな顔で、こちらをみているのが見えた。


「…だからね、もう行っていいんだよ、夏音。

このことは、さっき相手方も自分たちの非を認めたから、おあいこってことでお互いに不問にする。

…水面下ならまだいいけれど、間違っても今日みたいに表立ってはしないようにね?」


「うん…分かった。 ありがと、海斗」


 続けて掛けられた声の方を向くと、海斗の心配そうに見つめる瞳と視線が合った。


……心配させてすみません。ちょっと考え事をしていました。 いや、考え事っていっても、別にたいしたことじゃないからね?

 むしろ、話聞いてなかったんだから怒ってくれても良いんだよ?


──と言いたかったけど、話を蒸し返して、海斗をまた心配させたりすると嫌なので、心の奥にしまっておくことにした。

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