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親友との一時

サブタイトルなんかつけるんじゃなかったと反省中。

翌日の昼、アシュットバル家に正式な招待状が届けられた時、ジオンは親友の部屋にいた。

いつも真面目で気難しい顔しかしない彼が終始ニコニコしている。

どうやら運命の半身を見つけたらしい。

社交界はその話で持ちきりだ。

自分と彼女とのことを自慢されるのかと余り訪問に乗り気ではなかったが、話の内容は、フランスにいるもう1人の親友が今年の社交界に帰ってくるという前情報を得たことに始まり、仕事の事もあった。

「この間、インドの貿易会社から言ってきたことなんだが、」

ライモンの彼女について聞きたかったが、どうやら仕事が先らしい。

何処までも真面目なヤツだと思っていたら、ライモンは突然話を振ってきた。

「男爵家の御令嬢とはね。」

まだ話しても居ないことを簡単に口にするライモンにジオンは呆れた。

「何処からその情報を?」

「レディ・ミランダ。ついさっき本家のお茶会に来てた。」

頭に浮かぶ顔。

あの店に居た女かと納得した。

「君が自分を無視してその貧乏男爵令嬢を送っていったって、かなりの噂になってる。レディ・ミランダは君に夢中みたいだね。自分の方が相応しいのにジオン、君を彼女が誘惑したとか何とか。君の母上も困っていたようだ。」

熱烈アピールは興冷めだとジオンはため息を吐く。

別にレディ・ミランダと約束などしていない。

ただ、弟の誕生日会の招待状をくれと言うからやっただけなのに。

「持参金も出せない家柄の女をジオン様が相手にするはずはありませんわって、母親の前で言い切っていたぞ。」

「それをお前は黙って聞いていたのか?」

にっこりと笑う。

「隣の部屋でな。叔母様は引きつった笑いをしていたが、アレは嫌われたな。」

「母は、身分とかに拘り蔑む人が嫌いだからな。レディ・ミランダの実家はおしまいかな。父さまは、母に甘いから。」

母は、暢気なお嬢様だが、好き嫌いがはっきりしている人だ。

幼い頃から領民と共に泥まみれになって畑仕事などをしていたこともあり、労働階級の者たちへの気遣いを忘れない。

未だに暇を見つければ実家の領地へと出かけ、農地を耕す領民が止めるのも聞かず畑仕事をしている。

父との出会いは、泥まみれの母に踏んづけられた時だというから笑える。

「で、彼女の何処に引かれた。」

「真っ白なところ、白すぎると汚したくなる。俺だけの女にしたくなる。」

フッと笑う。

おそらくライモンもディアナに対しては同じ事を思っているのだろう。

「お互い将来の伴侶を見つけたんだ。逃しはしない。」

カチンとワインの入ったグラスを合わせる。

「でも、まぁ、今頃、男爵家は大慌てだろうな。」

「ああ、彼女の顔が戸惑っているのを見るのも面白い。」

「悪趣味だと言われるぞ。」

クスリと笑う。

「悪趣味だろうが何だろうが、あの顔に表情がともる時、俺が側にいないのはイヤだな。」

再びグラスを合わせる2人。

「お互いの将来に。」

「将来が明るいことを祈って。」

2人の貴公子は、お互いの検討を称えあった。




「それにしても・・・美しいが、変わり者と有名な令嬢だろ?」

ライモンが面白そうに言う。

「社交界には、全くと言っていいほど出てこない。深窓の姫君だよ。」

彼の言葉にまたライモンは笑った。

「まぁ、男爵も奥様もあそこは少し変わっているからな。検討を祈るよ。」

友人に見送られ、屋敷を出たジオンこと、マーティン卿の足取りは軽い。

ライモンとは従兄弟同士。

何かと比較され、ライバルだ何だと言われているが自分達はいたって普通に遊び、学び、仕事をしている親友同士だ。

お互いに大きな家の跡継ぎであることは間違いなく、王家にも連なる血筋でもある。

見目麗しい姿と立ち居振る舞いで世の貴婦人方を虜にしている彼は、かなりの浮名を流していたが、ここ数ヶ月はその名も終息気味で、社交界の貴婦人方からは、淋しいとの声も聴かれていた。

「そろそろ遊ぶのを止めて、半身を見つけろよ。」

そう友人に苦言を呈されたことは何回もあった。

(早いトコ見つけないと、勝手に婚約者が登場しそうだからな。)

彼が選ぶ相手なら誰でもいいと両親からは言われている。

一方、周囲の貴族連中は、彼に、

「運命の相手など、私達が決めて差し上げます。」

と言っては自分達の娘をこれでもかと進めてくるのだ。

そんな彼が気になる相手を見つけた。

純真無垢な姫君。

少々懐の固い、しっかり者とくれば母も父も喜ぶだろう。

何しろ、自分が気に入ってる。

母の許しも貰った。

「さて、招待状を彼女が喜んでいてくれればいいんだけど。」

彼は家に向かう馬車の中でそう呟いた。




つづく


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