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先手必勝のかまえ

サブタイトルを数字にすべきだったと反省中。

マーティン卿の提案にブランカは少しばかりの躊躇を見せていた。

彼の実家と比べれば、貴族とは言え身分も低く、自分を連れて行くことで彼に恥をかかせるのではないかと。

「では、良縁を求めて、また1人で、伯爵夫人のパーティにまた出るのかい?父上は一緒に行ってくださらないのだろう?」

黙っているブランカにマーティン卿が尋ねた。

「とりあえず、そろそろ招待に答えなくてはならないとは考えている。伯爵夫人は私の家の事情も知っておられるから、・・・よい場に招待してくださればいいが、一応、今まで断ってきたお詫びをかねて、今日納めたレースに手紙を添えてみた。」

マーティン卿は視線を外すブランカを見つめながら言った。

「でも、本音を言えば、伯爵家の主催するパーティには出たくないんだね?」

ブランカはそっと視線をジオンに向けた。

綺麗な紫の瞳が彼を見つめていた。

「では、私からのお願いだ、それらのパーティの時に、私をパートナーとして連れて行っていただけないだろうか。」

「えっ?」

「これは提案ではなく、お願いかな?さっきも言ったけど、伯爵家に従うより、私の方に乗る方が賢いと思うよ。」

彼がパートナーとなってくれるのであれば、伯爵もその子息も怖くないし、色々な門戸が広がる、願っても無いことだが、ブランカは恐れ多いと断りの言葉を述べた。

「私などのパートナーになっては、クラインハイブ家の名に泥を・・・。」

彼はそっと彼女の手をとった。

「君が多くのパーティに出ることには、男爵家にとっては必要なことだ。しかし、無理に結婚相手を見つける必要はないと言っているんだよ。」

良い結婚相手を見つけるためにパーティに出なければならないのに?

ブランカはジオン・クラインハイブ・マーティン卿をじっと見つめた。

「つまり、結婚相手は別として、男爵家の資金援助を求めるためにパーティには出る必要があると言ったんだ。そのためには、君という人物がいかに素敵な女性かという事を世間に知らしめなくてはならない。ならば、私をパートナーとして連れて歩けばいいんだよ。そうすれば、クラインハイブ家がアシュットバル家に資金援助をしているという宣伝になるだろ?クラインハイブ家に従う家は多い。きっと、無理矢理相手を見つけなくても、男爵家の財政は救われることになるだろうね。」

ブランカはジオンを尊敬のまなざしで見た。

「そ、そのために私のパートナーとなってくださるのか?」

ジオンは苦笑した。

「分かってるのかな?今言ったことは、あくまでも建前だってこと。」

「えっ?」

ジオンはブランカの手をとり、その手に口付けをした。

「!!」

「私はね、ブランカ。君を一目見て、妻にしたいと思ったんだよ。」

ブランカは絶句した後、呆然とした。

「は?」

「君にふさわしい相手は私しかいないと言いたいんだ。だから、男爵家のために一肌脱ぐことにした。

そして、君という存在を私のパートナーとして世間に披露したい。」

ブランカは慣れていないので、ジオンの行為に頬を染めながらも戸惑った。

「き、気まぐれでそ、そのような。」

「気まぐれ?大いに真面目だよ。ブランカ。生涯私だけの者になってくれ。」

唐突なプロポーズ。

ブランカは固まってしまった。

今まで付き合った女性とは違う反応にジオンは苦笑してしまった。

「・・・手始めに、弟のパーティでそれを世間の皆に知らしめてあげるよ。」

軽く引き寄せられ、ブランカは頬にキスを受けた。

「はぁ?何を言って・・・は?」

気が付くと馬車はアシュットバル家の前だった。

出迎えたミセス・ボイトをはじめとした使用人は、自分の大切なお嬢様が社交界で知らぬ人はいないとまで言われるマーティン卿にエスコートされて馬車を降りてきたのを見て一様に驚いていた。

「やあ、こんにちは、」

「は、はい。」

緊張が隠せないボイド夫妻。

「唐突で悪いんだが、私は、今日彼女にプロポーズをしたんだ。」

笑顔と共に発せられた言葉にぽかんとしている使用人達。

馬車から降ろされたブランカ自身もぽかんとしている。

「もう一度、言おうか?私は、このブランカ嬢に恋をして、求婚をしたんだよ。」

マーティン卿からブランカに求婚したことを再び耳にし、今度は、声をそろえて驚いた。

「正式なプロポーズは、近いうちにするから、それまで色々なところに一緒に行こう。いいね、ブランカ。」

帰り際に受けた唇へのキスにブランカは、何が起こっているのかわからないままだった。




つづく

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