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節約・倹約・大歓迎!

貧乏貴族ブランカちゃんの質素な生活を覗いてみましょう。

アシュットバル家には、暖かい暖炉がなかった。

いや、暖炉はあるが、火が入っていない。

朝起きて、霜がはる早朝と就寝前にしか暖炉に火は入れない。

それが家訓である。

『寒ければ、厨房へ。』

後は、執事の編み出した、暖炉の熱を利用して沸かした湯に浸かり、厚着をして寝る。

お嬢様であるブランカが一番に入って、次々に使用人たちが温まる。

最後に執事が入って厚着をしてから暖炉の火を消しに来るのだ。

湯は、庭の草木に翌日撒くことに再利用される。

昼間は先に述べた合言葉で乗り切り、夜も節約のため本当に質素な生活をしている。

それが、アシュットバル家である。


今日も皆、厨房にある5人掛けのテーブルで暖かいお茶をしながら内職をしていた。

「お嬢様に狙っていただきたいと言えば・・・。」

執事と家政婦長の2人からは同じ言葉が出た。

金持ち貴族、もしくは、上流社会への足がかりとして貴族娘との婚姻を必要とする成金。

もっか、花嫁募集中の金持ちの名前を執事は上げていく。

「どちらにしても、」

その二つの内、どちらかを相手に選ばなければ、その内アシュットバル家はおしまいである。

「分かっている。」

淡々と返事をするブランカ。

こうなったら、相手が父以上に年上でも仕方ないかもしれないと最近は思うようになっていた。

「できれば、お嬢様に愛する方と結婚をしていただきたいのですけど。」

家政婦長はブランカを娘のように思ってくれているのだ。

しかし、その言葉を有難いと思いながらばっさりと切り捨てる。

「この貴族社会に愛だの恋だのは無用だ。」

気苦労のせいか、もう1つ男っぽい口調のお嬢様にも皆がため息をつく。

「しかし、お嬢様・・・旦那様は、奥様を愛しておられますわ。」

うっとりと話すのは、メイドのジェシカ。

「うむ。それは分かるが・・・それだけでは、生きてはいけないのだ。」

屋敷の一室しかも厨房で、その家の令嬢と使用人が集まってレースの生地を繋ぎ合わせる作業をしている光景など、他の貴族の者に見られたら笑いものにされるだろう。


お金のない男爵家の当主は、学者肌で趣味がこうじて大学で教鞭をとっている。

彼の研究にはお金がかかり、母は、その仕事にお金を注ぐ事に躊躇をしていない。

以前は騙されて、他人にお金を渡していたため、研究費にはお金を廻せなかったが、ブランカが管理するようになってから、奥方は娘の管理下の下、夫の研究にお金をつぎ込むようになった。

「考古学というものも金がかかる。方々に出かける費用こそ、国が負担してくれているが、父上は、ご自身のことは何も出来ない人だからな。一回の発掘旅行に幾らの金がいるのか。考えただけで頭が痛い。」

もう少し小遣いを増やして欲しいと頼む親に、欲しければ金を掘り当てろと言い捨てた娘である。

「そうですねぇ、けれど、お嬢様。旦那様も反省なさって、発掘には行かれても期間を短くされておりますわ。」

「あれだけの明細書を見せれば帰ってこざるおえんだろう。私の作戦だ。」

ふと内職の手が止まる。

「母上と父上は、互いに傍に居られれば幸せと仰っているが、食べるものにも困るほどでは、駄目だと思うのだ。」

皆の頭に浮かぶのは先日の事件である。

「作用にございます。先日はとうとう最後の宝石を売ることになってしまい・・・。」

「さすがに母上も落ち込んでいたな・・・。田舎に引きこもってしまわれた。」

母親にはメイドのマリーが付いて行った。

「それはそうでしょうとも、あの宝石は男爵が奥様に、送られた婚約指輪についていたものですもの。それを忘れておしまいになるなんて。」

ため息が漏れる。

母親に出て行かれた父は研究そっちのけで彼女を追いかけていった。

取り戻す手段などないくせに。

けれど、やらなければ、家庭崩壊の危機である。

「とりあえず、あの紫水晶を取り戻す。そのために・・・よい相手を見つけねばならないのだ。かと言って、貴族のパーティなど・・・着ていくものもないし、招待状もない。ははっ、八方塞りだな。」

美しい紫の瞳を持つ彼女はもう1つため息を吐いた。

そう、着ていくものがないのだ。

この玉の輿作戦が話題に出てすぐレースの上客である伯爵夫人からパーティに招待状が来た。

ブランカは屋敷にある母親のお古のドレスを少しでも見栄えよく見えるようにリメイクをしてみたが、パーティでは笑いものにされただけだった。

仕方ないとは思ったが、少しだけ貧乏であることを恨んだ。

「さて、どうしたもんかな…。」

皆が一様に同じようなため息を漏らした。



つづく

次回は、5/27です。

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