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危機的状況

「そうです、恩です。」

ブランカは、固まっていた。

「で、でも・・・今は、レディ・ミランダのことを対処してはいかがですか?」

ジオンはがっくりと体を一瞬倒した。

「はぁ・・・。」

大きなため息にブランカがびっくりする。

「ど、どうなされた?な、何か変なことでも言っただろうか?」

珍しくオロオロしている自分に少々呆れながらブランカは彼を見る。

ジオンは青い瞳をスッと細めてから優しく微笑むとその手を彼女の頬に添えた。

「では、レディ・・・。」

「レディ・ミランダ。」

「そう、そのレディの対処が終われば、私への返事をしていただけますか?」

戸惑う彼女の意志など置いて、ジオンは彼女の手の甲、そして、頬にキスをする。

「わっ!」

乙女らしからぬ声にまたジオンは苦笑を漏らしながら立ち上がると部屋を出て行った。


彼を見送って、1人になって初めてブランカはホッとした。

貴族とは言え、本当に自分の暮らしとは全く違う侯爵家。

ぐるりと見渡した広い部屋にも恐縮してしまうほどだ。

「本当に必要とされているんだろうか。」

疑問ばかりが口をついて出てくる。

1人悶々と考えていたブランカの部屋の扉が勢い良く開かれ、彼女は飛び上がった。

「あれ?」

そこには見たこともない貴族らしい男が立っていた。

「ジオンは、何処に行った。」

彼はブランカを上から下までじっくりと見ると中に入ってきた。

彼女は、その不躾な視線がイヤだと感じたが、ジオンの知り合いらしいと判断し、軽く礼を取った。

「ジオンさまは、会場の方へと向かわれました。」

「ふうん・・・で、君は、今日のジオンの相手?」

ブランカの前に立ち見下ろしてくる男。

その視線に嫌なものを感じ、彼女は一歩下がった。

「・・・ふうん、いつもと違う毛色だな・・・。」

左に垂らした髪を掬ってくる男の手から逃れるようにまた距離を開けるが、男はまた近付いてきた。

「逃げなくてもいいのに・・・ジオンはどうせ、君を可愛がった後、ボクにくれるんだよ、」

「な、何を言ってる・・・。」

「ジオンの女遊びさ。いつも真面目な交際を匂わせて、飛び込んできた哀れなひよこを喰って捨てる。俺は彼と違って、少々乱暴なプレイが好きだから、女に、特に淑女と言われてる娘には脅しの材料だ。」

間合いを詰めてくる男にブランカは距離を一定に保とうと懸命だった。

男の口から語られる言葉も気になるところではあったが、身の危険を感じて仕方なかった。

「私は、あなたの相手をするつもりはない。」

きっぱりとした口調で言うブランカに男は笑い声を上げる。

「クラインハイブ家の財産?地位?名誉?んなのにあんたも惹かれたんだろ?貧乏貴族のアシットバル家のお嬢さん?その身一つ、一定期間ヤツを喜ばせるだけであんたの家も、あんた自身も安定した生活を得られる、とでも思ってる?」

ジオンが差し伸べてきた手を取った事実。

彼の口から齎される甘い言葉。

全てを信じている訳ではなかったブランカにとって、男の言葉は突き刺さるものだった。

「愛人契約だけでも、あんたは安心できるんだろ?あんたのその顔、髪、何がアイツをそそらせたのか、俺にも教えてくれ。」

逃げ場がない。

ブランカは、目の前に迫る男を睨み付けた。



つづく

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