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ブランカ、硬まる

言ってみれば、対して豪華でも新しくもない屋敷である。

その屋敷に侯爵家の紋章の入った馬車が付けられた。

馬車から出てきたのは、正装に身を包んだ銀髪の若者。

身のこなしは優雅でソツがない。

馬車を遠まわしに見ている住人に視線を送るとニッコリと笑う。

その笑顔に街娘などはポ~っとなってしまっている。

彼が玄関に着く前に家の執事が素早く扉を開け、中へと誘う。

入り口をくぐり正面の階段を見ると、彼の望む人がそこにいた。

「・・・。」

言葉を発することができない彼にブランカは眉をしかめた。

(やはり似合ってないのではないのか?)

思わず自分の肩口や足元を覗き込もうとする。

「お嬢様!」

小声でボイド夫人に注意されて階段を慌てて下りる。

なれない高いヒールとドレスに梃子摺りながらも何とか下に降りると、かの若者がすっと自分の手を取っていた。

「あ、こ、こんにちは。」

彼はニッコリと笑うと手に取った彼女の甲にキスをする。

「ブランカ、とても素敵だ。」

「そ、そうだろうか・・・。」

「ドレスの色も、髪飾りも私の瞳に合わせてくれたんだね・・・。」

そう言われて気付く。

着ている服が綺麗な青色であることを改めて知る。

「えっ、いや、あの・・・これは・・・。」

そんなことにはちっとも気付いていなかった彼女に彼は苦笑する。

目線の先に居るボイド夫人もジェシカもうんうんと頷いている。

そんなこだわりがあったのかとブランカは頬を染めた。

「お子様の誕生会だから、昼間に行うんだけど、ブランカ、君には我が家でディナーも一緒に過ごして欲しい。」

ジオンの言葉にぎょっとする。

その顔にまた彼は微笑む。

自分の誘いにこんな反応を示す女性はいなかったのだ。

「あ、いや、その・・・近日中に仕上げたいレースが。」

ジオンはちらっと執事を見る。

「お嬢様、大丈夫でございますよ。お約束の日は随分と先にございますれば、今宵はマーティン卿とごゆっくりお過ごしを。」

何を言い出すんだとブランカは彼を睨んだが、ボイド一家は、ブランカにガンバレとの期待を載せた視線しか送っていなかった。

(私なんか本気で相手するわけがないだろう!)

心の中で何度言って見てもボイド一家には通じない。

「さあ、レディ・・・参りますか。」

エスコートされるのも久しぶりのブランカである。

ジオンのエスコートは一流でブランカは自分が姫君にでもなったような錯覚を覚えた。

ふわりと浮くような感覚のまま馬車に乗りこんだ。

自分の家にある馬車に比べると随分広い。

そんな車内でジオンの視線を彼女は感じていたたまれなくなっていた。

「あ、あの・・・お、弟君は何歳になられるのか教えていただけないだろうか。あ、それと、贈り物も用意せずに行くなんて、失礼だと思うのだが・・・。」

ジオンは何故かブランカの手を離さない。

狭く感じないはずの大きな馬車なのに何故距離をこんなに詰めるのかと彼女は不振がっていたが、彼が何か言い出さないうちに自分の思っていることを告げることにした。

「リオン?あいつは、7つかな。生意気にもその年で婚約者もいるんですよ。」

7歳で婚約者!

ブランカは驚きを隠せない。

「親友の妹に一目惚れだそうで。子供なのに、生意気なって。一目惚れなんてある訳ないって笑っていたら、何のことはない、私も貴方に一目惚れをしてしまった。」

熱の篭った視線。

まっすぐに自分を見つめる青い瞳に頬を真っ赤にしながらブランカは視線を外した。

「それと、プレゼントならちゃんと用意してますよ、ブランカ。」

何を?と彼女はまた彼を見た。

「リオンは、ホント生意気で私に恋人か妻ができるのを楽しみにしてたんですよ。優しい姉上が欲しいとね。だから、貴方こそが彼の誕生日プレゼントなんですよ。」

沈黙が流れる。

ブランカは首をかしげて彼の笑顔を見つめた後、驚きの声を出した。

「あ、姉上って、その・・・私は!」

彼の手がギュッと握られる。

「今直ぐに返事が欲しいのではないのです。けど、私の心が、体が、貴方だと決めてしまったようなので、貴方も覚悟を決めてお嫁にいらっしゃい。幸せにしますよ。」

「え、あ、あの。」

「で、私を幸せにしてください。」

ブランカの思考能力はこの時を持って固まってしまった。

「あらら・・・ん~。戸惑っている内に婚約発表でもしてしまうか。」

すっかり、どういうことなのか訳の分からない状態の彼女を乗せて馬車は走っていた。


tuduku

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