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いざ、ゆかん!byボイド

短いですが・・・。

大きなため息を吐いた。

目線の先にはマーティン卿からの手紙。

「ブランカさま?先ほどからため息ばかりですよ。」

ボイド夫人はクスクスと笑っている。

ジェシカもそれにつられているのが分かった。

今、2人はブランカのコルセットを締めていた。

そう、今日はマーティン卿の弟君の誕生会。

ブランカが出席した今までの会とは比べ物にもならない侯爵家主催のパーティなのだ。

マーティン卿が手配したマリアンヌと言うやり手の服飾家が、ブランカのトータルコーディネートをしてくれたのはいいが、金額のことを考えると、どれくらいだろうとブランカは頭の中で勘定していた。

生地1つにしても高級品だ。

もう少しランクを落としてはと言ってみたら却下された。

(何着作ったんだ?)

毎日フル回転でドレスが作られ、運ばれてくる。

味気なかったブランカのクローゼットが花を咲かせたように鮮やかになっていくと、ボイド夫人も娘のジェシカもうっとりとして、マーティン卿の愛情の深さを褒め称える。

で、ブランカはその度に顔を引きつらせているのだ。

(どれだけのパーティに出させるつもりだ?マーティン卿は・・・。)

彼女はまた大きなため息を吐いた。


クラインハイブ侯爵は、女王陛下の弟君である。

本来なら王家の血筋を持つ公爵家として暮すはずであったが、兄であるシルヴァリー公爵に遠慮して今の地位を名乗っている。

「公爵なんてものになったら、周りが煩すぎるでしょ。」

何故だと尋ねる人にはいつもこうやって答える侯爵に、人々は戸惑う。

目立たず、裏方に徹したいと言う弟の思いに答えて女王陛下は彼に侯爵の地位を与えたが、兄が陛下の右腕なら、弟は左腕と言っていい存在である。

そんな家の長男、つまり跡継ぎに見初められたとボイド夫人を始め家の者は浮き足立っているが、ブランカにとっては、ため息ばかりなのだ。

店でそこはかとなく嫌味だったお嬢様も来るだろうし、侯爵家と繋がりを持ちたいと願う貴族も多く来るだろう。

それに、弟君はその愛らしさと音楽センスに優れており、弾くピアノは女王陛下の癒しにもなっていると言う。

招待して欲しい貴族は山のように要るだろう。

そんな中に、何の繋がりもなかった自分が直接マーティン卿から招待を受けてしまったのだ。

「緊張しないわけがない。っていうか、久しぶりの会なのだ、あんまり締めすぎると苦しくて仕方ない。もっと緩めてくれ。」

「何をおっしゃいますか、細いウエストは貴婦人の基本ですよ。」

分かっているが、本当に久しぶりの会のため、ブランカは早くも倒れそうだった。

「でも、頼むからほどほどにしてくれ。今にも倒れそうだ。」

マリアンヌの手ほどきを受けたジェシカはブランカの長い黒髪を流行の髪型に結っていく。

「お嬢様が美しくしてらっしゃると私も鼻が高うございます。」

ニコニコと言う彼女。

いつもお金、お金と質素倹約を心がけてきたブランカだったが、主人があまり我慢をしすぎるのもよくないのだなと彼女達の笑顔を見て思った。


「ま、まぁ、お美しいですわ、お嬢様。」

目頭を押さえながらボイド夫人が言う。

「大袈裟だ。それに、どう考えてもこれはドレスの力だろう?」

苦笑するブランカにボイド夫人始め、使用人達は皆が期待のまなざしを送る。

「な、何?」

「よろしいですか、お嬢様。何が何でも、マーティン卿を骨抜きにするのですよ。」

ギョッとする。

「これで、もし、彼に失礼なことをして振られてしまったら、アシュッドバル家はおしまいです。カントリーハウスに居られるお父上とお母上もかなり期待されてますからね!」

そんなことを言われても困るとは言えないブランカは硬直するのみだ。

「できるだけマーティン卿には愛想良くですよ?」

またまた自然な笑顔などブランカにとって最も難しいことだと分かってるくせに・・・。

「マーティン卿の馬車が来られたぞ。」

執事の声が飛ぶ。

(ああ・・・来てしまった。)

頭では分かっているが、心が未だについていかないブランカであった。



つづく

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