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マーティン卿からの恋文

色とりどりの布が部屋一杯に広がっていた。

ブランカは呆然とそれを見下ろしていた。

先ほどからボイド夫妻を始めとするボイド家の人達は、我がお嬢様に似合う色、似合わない色などを業者と話していて、流行の型などについても話を進めている。

気が付くと布を肩に当てられて、あーでもない、こーでもないと言われている。

「お嬢様は肌理の細かい美しい肌と美しい黒髪をしておいでです。どのような色合いでもこなしてしまわれますわ。」

悦に入った表情でいうのはクレインハイブ家御用達の洋裁店店主マリアンヌである。

公爵夫人の洋服のデザインも彼女が一手に引き受けているそうで、彼女は常々夫人から息子であるジオンの素行についての悩みを聞かされていたため、やっと本気の相手が見つかったのだと嬉しかった。

しかも、着飾ることに慣れていない令嬢を自分の手で美しく変身できるのだ、マリアンヌは嬉しくてたまらなかった。

「で、できればもう少し薄めの色を。派手なのは好きでは・・・。」

「よろしゅうございます。そう言う控えめなところがジオンさまのお心を捕えたのですね。」

ギョッとする。

「そ、それは違う。」

正式なプロポーズは今度とか言われたが、俄かに信じられないことだ。

社交界に疎いブランカにすら、彼の噂は耳に入ってきていた。

噂に違わぬ麗しい顔と姿をしていたのには、驚いたが、表情が上手くでない性質なので、余計に彼の興味を惹いてしまったのだろうと思っていた。

笑うのも、お世辞を言うのも、ダンスも苦手であることをパーティに出るたびに伯爵令嬢に暴露され、裏で笑われた。

そんな自分が家のためとは言え、相手を探すためにパーティに出なければならないという苦痛に耐えなければならない。

それは、仕方ないことだと思った。

かといって、あの伯爵家の愛人などにはなりたくなかった。

そのため、ジオンからの誘いは天からの救いに思えたのだが・・・。

やはり、自分では彼に迷惑をかけるだけなのではと思ってしまう。

「これが終わったら、レース編みに戻って良いだろうか。」

「お嬢様?」

何か1つの事に集中したいと思ったのだ。

暫しの間、パーティや家のこと、ジオンのことなどを忘れていたかった。

しかし、その日のうちに届けられた招待状と彼からの手紙の内容に益々眠れなくなったブランカであった。



愛しのブランカ


出会ったばかりの私にこんなことを言われたら君はきっと戸惑ってしまうことだろうね。

けど、君に出会って、君の美しい紫の瞳と見詰め合った途端、私の心は大きく揺さぶられたんだ。

長い間、自分だけの誰かという存在を探し続けてきた。

その相手に出会えたんだったって、あの瞬間思うことが出来た。

何故かなんて聞かないでくれ。

私だって戸惑っている。

君という存在にもっと早く出会いたかった。

その件では母を少し恨んでいる。

君の母上と私の母は、親友というじゃないか。

母が君の母上と君を私に紹介してくれていれば、余計な回り道などしなくても

君に愛を囁けたのに。

ブランカ、君を見つけられたなかった自分を悔いたよ。

けど、漸く見つけて、出会うことが出来た。

私の将来の姿の隣には君が必要だ。

君と離れていたくない。

君が私以外の相手を探すと言うのなら、全力で阻止するつもりだ。

それほどに君に夢中であることを分かって欲しい。

これからのシーズンに私のパートナーとして一緒に出かけよう。

君の大好きな人達のために私は力を尽くすよ。


 愛を込めて   ジオン・G・クレインハイブ(マーティン卿)


つづく

ジオンは余裕そうで、必死です。

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