第3話:小さな約束と、10人放課後
第3話:小さな約束と、10人の放課後
「……ねえ、これって運命、なのかな」
凛がぽつりとつぶやいたのは、放課後の帰り道。
桜の花びらが舞い散る坂道を、湊とふたりで歩いていた。
「運命……?」
「だってさ。6年も離れてたのに、またこうして隣に座ってるんだよ?」
湊は、何も返せなかった。
照れくさくて、気恥ずしくて、それでも心は少しずつ近づいている気がして。
「昔みたいに、また話せるようになれたらいいな」
凛の言葉に、湊は小さくうなずいた。
◆ ◆ ◆
一方、放課後の教室では、クラスメイトたちが思い思いの時間を過ごしていた。
「でさ、次の休日、みんなでカラオケ行かね?」
そう言い出したのは藤村奏汰。にこにこ笑いながら手を挙げる。
「いいね! 湊も来なよ〜」
陽葵が明るく声をかけてくる。
「え、俺……?」
「もちろん、凛ちゃんもね!」
「……行く」
凛の即答に、その場の空気が一瞬止まり、すぐにざわざわと騒がしくなる。
「おおお、これは……急接近の予感?」
「羨ましい……青春ってやつだなぁ」
玲央が大げさに肩をすくめると、千紗が後ろからツッコミを入れる。
「はいはい、バスケの練習忘れてるんじゃないの、玲央?」
「げっ……マジか」
その様子を、三条蒼は窓際で静かに見つめていた。
何かを思うような瞳で——。
「じゃあさ、次の土曜日、10人で遊びに行こうよ!」
花音が声を弾ませて言った。
こうして、それぞれの想いが少しずつ交差しはじめる。
小さな再会が、10人の青春を動かしていく。