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王宮とリン 後編

リュシアンとフアナとリン

 ジュリアンとの面談が終わった後、リンの侍女から今夜の王家の晩餐に是非出席して欲しいと言われた為、用意してもらったイヴニングドレスみたいな物を着せてもらい晩餐会場へむかった。


リンは心の中でこんなドレスを着るのはピアノの発表会以来だなと思いつつ裾の長いドレスをそっと持ち上げながら移動した。


リンの侍女はミミという名前らしく、待機時間にすっかり仲が良くなった。

そんなに若いのにすごいねぇ〜とリンが感心していると「これも花嫁修業の一環ですから」と鼻息が聞こえてきそうなぐらいの勢いで教えてくれた。


いい相手が見つかるといいねぇ〜と言うと、実はもう婚約者がいるらしい。

でも、王太子みたいに急に心変わりされるのが怖いとも教えてくれた。


 えっ?何それそんな事件があったの?

リンにとっては横恋慕の成功なんて事件レベルの扱いだった。


「リン様も王太子殿下と同じ感じになるのでしょうか...。」


ミミは悲しそうに話しかけるが、多分それここで言うのアカン内容だと思うよ?

誰が聞いているか分からないからね!


やんわりとミミに伝えると「はっ」とした後、周囲をキョロキョロしだした。


 遅いよ...。ミミさん。



晩餐会場には王太子夫妻とリュシアンが既に待機していた。


「遅くなってすみません?」


リンは軽く謝りながら自分の席へ行こうとすると、リュシアンが席を立ちリンをエスコートをした。


その姿を見た王太子妃が驚きながらリンをじっと見ていた。何度かジュリアンに視線で何か言いたそうにしたが、ジュリアンは王太子妃の手をそっと握って微笑んだ。


リンが席に着くと


「本来ならば父上と母上も参加予定だったのだが、せっかくなので若い者たちで楽しみなさいとのことだ。では、聖女様の降臨に乾杯」


ジュリアンが軽くグラスを上げると皆もそれにしたがってグラスを上げた。リンはなんだかとっても恥ずかしかったので気持ちだけグラスを上げる。


乾杯をスタートに色々と食事が運ばれてきた、カラトリーに自身がなかったが、リンの為にお箸もそっと添えられていた。


「あっお箸あるんですね。」


思わず呟くと


「そうだよ、前回は他の国で聖女様が降臨されたのだがフォークとナイフが苦手な方らしく作ったと言われているんだ。もちろん我が国でも用意させてもらっているんだよ」


「うわぁ〜助かります。ではお箸でいただきます。」


リンはフォークとナイフを使うことはできるが許可されているのだったら慣れたもので食べたいなと思いそのまま御厚意に甘えることにした。

その姿を見てやはりめずらしいのか三人共感心しながらリンの食べる姿を見ていた。


「リン様は本当に、異世界からいらしたんですね...。」


王太子妃がしみじみと呟いた。


「ブリジット、失礼な発言は控えなさい」


ジュリアンが食事を止めて王太子妃のブリジットに注意をいれる。

その言葉にブリジットは体を少しふるわせた後


「リン様申し訳ございません」


と落ち込みながら謝った。

リンも食事を止めて


「王太子妃様、大丈夫ですよ。私も、王様とか初めて見た時驚きましたからね」


エヘヘと笑うと、ブリジットは胸に手を添えて


「リン様が心の広い方で良かったです。私、リン様と仲良くなれそうな気がしますわ」

と嬉しそうにジュリアンに伝えた。

すると、リュシアンも嬉しそうに


「リン様と仲良くしていただけると私も嬉しくなります。これからこうして四人で食事をする機会も増えると思いますし」


リュシアンは綺麗な所作で食事をとりながら嬉しそうにジュリアンに微笑んだ。


「あっ、ああ。そうだねぇ~。」


リンはそんな会話をスルーしながら心の中で「あっ、これ初めて食べる味だけど美味しぃ〜」と一人で感想を述べていた。


微妙な晩餐会が終了した後、リンはミミと一緒に客室へ戻ろうとすると


「リン様、もしよろしければお部屋までご一緒してもいいですが?」

とリュシアンに聞かれたのでリンはジュリアンをチラリと見ると彼は小さく頷いた。


「はい、ではお言葉に甘えてお願いしますね~」


リンの返事にミミとブリジットは少し動揺していたがそのままリュシアンに手を引かれて客室に戻った。


リンの客室の前までたどり着くと


「リュシアン王子、もしよければこの後お茶を飲みませんか?」


とリンの誘いにリュシアンは頬を染め


「えっ、いいんですか?喜んでお受けいたします」


と嬉しそうに一緒に部屋の中に入っていた。


「リン様私がお茶の準備をいたしますね。」ミミも一緒に部屋に入ろうとしたが


「あっ、大丈夫だよ。さっき王太子がもう一人侍女を付けてくれたんだ。ミミちゃんはもう仕事上がっていいから!今日は彼氏に会う日なんでしょ?」


リンが肘でミミをつっつきながら羨ましいぞ〜。リア充めぇ〜。と冷やかすとミミも顔を赤く染めながらまんざらでもない表情をした。


「それでは、リン様のお言葉に甘えまして、ミミは失礼させていただきます!」

と綺麗なお辞儀をした後帰っていった。


その様子を微笑ましそうに眺めながらリュシアンは


「リン様は人の心を掴むのがお上手ですね」と言いながらリンの隣のソファーに腰をかけた。


「そうですね。私はコミュニケーション能力が強い方だとよく言われます」

といいながら侍女を呼ぶベルを鳴らすと寝室から今日会ったばかりのフアナが出てきた。


「どうして、君がリン様の部屋にいるんだ!どうゆうことなんだ!」


リュシアンがフアナに詰問すると、フアナが悲しそうな顔をしながらリュシアンを見つめた。


「そんな目で私を見ないでくれ!!」


リンの隣で小さく震えるリュシアンを見ていると、イライラが爆発しそうだった。


「フアナさん?とりあえず、そちらの席に座ってもらえますか?」


リン達の向かい側のソファーを進められたのでフアナは静かに座った。

混乱しているリュシアンと今にも泣き出しそうなフアナに挟まれてリンは眩暈がしそうだったがとりあえずこの状態を早めに打開しようと思った。


「フアナさん、これは浮気じゃないですからね!話し合いは後ですよ!」


とリンがフアナに声を掛けた後、リュシアンの手を恋人繋ぎにした。


「「えっ」」リュシアンとフアナが同時に驚いたがリンは無視をしてそのままリュシアンが付けている父上に貰ったというブレスレットをギュッと握った。


すると、それまで見えていなかったブレスレットにまとわりついていた黒い靄が目視できるようになった。リュシアンは驚いてリンの手を放そうとしたが


「ちょっと待って、もう少しだがら!」といいながらその黒い靄が消えるまで握り続けた。

最後に「シュッ」という音と共に黒い靄が無くなるとリュシアンはそのまま気を失いリンと反対側に倒れこんだので「うわっ」といいながらリンがゆっくりをリュシアンをソファーに寝かした。


 さすがのリンも軽く汗をかいたらしく席を立ってバスルームにある小さめのタオルを借りて額の汗をふいた。


フアナさんがどこからか冷たい飲み物をリンに出してくれた。

リンは疑うことなくそれを頂いた。


「冷たくて柑橘系の香りがしておいしぃ!!」

と素直に喜ぶ姿をみてフアナは涙を流し始めた。


「!!フアナさん、大丈夫?」


フアナは持っていたハンカチで涙をふくと、ニコリと笑って


「このような醜態をすみません。なんだか安心してしまって」


フアナがリンに何かを話しかけようとしたので


「フアナさん、とりあえず席交換しましょうか?」

とリンが声を掛けた。フアナは瞳を揺らしながら「いいのですか?」と尋ねるので


「多分、目覚めて隣にいて欲しいのはフアナさんのはずですよ」とリンが言うとフアナが立ち上がり、リンに抱き着いた。


「ふっフアナさん、浮気はだめですよ!あなたには王子様がいるでしょ!」


突然のフアナの行動にリンもあたふたするとリンの背中でフアナが小さく笑い


「リン様は楽しい方なんですね」ともう一度自分の涙を拭いながらリュシアンの隣に座りなおした。


「せっかくなので少しいたずらしましょうか?」

とリンはいいながらフアナの膝にリュシアンの頭を乗せいわゆる膝枕状態にした。


リュシアンの髪をフアナが愛おしそうに撫でる姿をみながら

「フゥー。いい仕事した」とリンは汗をぬぐうジェスチャーをしてフアナにおどけて見せた。


 フアナは一通りリュシアンの髪を触った後、リンの方を見た。


「お話しを聞いてくださいますか?」


リンは何も言わずに頷いた。


「もしかすると、既にお耳に入っているかもしれませんが、私の本来の婚約者は今の王太子のジュリアン様でした。幼少期から決められていた仲なのでお互いこのまま結婚すると思っていました。しかし、ジュリアン様は学園で今の王太子妃のブリジット様に出会い二人は真実の愛を見つけたそうです。しかし、我が家はこの国でも有力と呼ばれている上位貴族なのでジュリアン様のわがままで婚約解消をすることはこの国のパワーバランスを崩す事を意味します。そこで、今の国王が私の父、つまり現当主に莫大な慰謝料と国の直轄の領土を譲ることによりリュシアン王子の婚約者へ変更することになったのです。」


「え~、あまり分からないけど、得したのは国とフアナのお父さんだけじゃん?フアナさんの気持ちとか関係ないの?」


リンが半分キレ気味にフアナに質問すると


「ジュリアン王子とリュシアン王子と私の三人でよく遊んでいました。ですのでそんなに違和感はありませんでした。リュシアン王子の婚約者になってから私の事を本当に大切にしてくださったんですよ。」


そういった後、フアナはリュシアンの髪を耳にかけると


「ある夜会で2人バルコニーで涼んていた時リュシアン王子が言ってくださったんです。『本当は兄上の婚約者に恋をしていました。叶わぬ恋ならば義弟として傍にいることでこの気持ちを消化させようと考えていた』と。その言葉は私の気持ちを掬いあげてくださいました。婚約解消を理解しているつもりでもやはり女性として納得していなかったのです。私の存在価値とは一体なんだったんだろうと」


「今度こそ、リュシアン王子と幸せな夫婦になると思っていました。」



「でも...。」


フアナはリンを見て悲しそうに微笑むとリンは思わず溜息をついた。


「あ~、その先はなんか話を聞かなくても見えてきたわ。リュシアン王子の態度が急変して、突然私が現れる。んでもって、私を見る目が恋そのもの...。」


リンはソファーに倒れこむと


「本当にしんどいんですけどぉ~。この国どうなってんの?大丈夫なん?」


リンは倒れこんだままいっそ目をつぶって寝ようかなと思っていると。


「フィー?」


と戸惑いながらもフアナを呼ぶ声が聞こえた。

リンは少し面白くなると思い体を起こし今の二人の状況をみると


膝枕をしてもらっていたリュシアンがフアナを下から見つめていた。

その視線は先ほどまでリンを見ている目と同じ熱量を帯びていた。


「ん?これはフィーから僕へのご褒美か何かなの?手を握ることも中々許してくれないのに。僕は幸せすぎてこのまま夢の国行きたくなるよ」


といいながらフアナの頬にそっと触れるリュシアン。


「リュシアン様、あのっその...。」


「ちょっと〜。二人の世界に羽ばたく前に私に何かいう事ないのぉ~」


リンはジト目でリュシアンを見ていると、リュシアンの首がグゴゴゴゴと聞こえるぐらいの方さでリンの方を振り向いた。

そして、みるみる耳まで真っ赤に染め上げたリュシアンが腹筋で起き上がると


「えっ、あっ、その...。これは...。」


あたふたしながら言い訳を考えているらしく、助けを求めるようにフアナの方を見た。


「大丈夫ですよ。リン様は分かっていますよ」とフアナに声を掛けられ気持ちを落ち着かせることができたようだった。


リンはまだ冷たいお水をグイっと飲むと


「で、リュシアン王子御気分はいかがですか?」


「えっ、はい。幸せです」


リュシアンはフアナの手を握りとろけるような笑顔をフアナに見せた。

リンは歯を食いしばりながら。小さく「くs王子め」と言った後、


「ううん。そのブレスレットにはおまじないがかかっていましたよ。記憶の混濁とかありませんか?」


リンは、リュシアンのブレスレットを指さして説明をした。


「えっこのブレスレットがですか..。父上が私にくださったこれが...。」

リュシアンの幸せそうな表情が一気に暗くなった。


「と言っても、そこまで重い呪いではありませんよ。気休め程度?ですので、後はリュシアン王子の気持ちという事ですね」


「私の...。気持ち...。まさか私はリン様の事を」


 はぁ~ふざけんなや、あんなにイチャイチャしやがって!

 あっフアナさんも不安な表情しだしてるでしょ!


「どちらかというと、親の期待に応えたいの方だと思いますよ。ほら、それみてまだ私が~とか言います?」


リンの視線の先にはしっかり握りあった二人の手があった。


「とりあえず、この件は王太子も知っています。後はそちらで解決してくださいね。でもしばらくはそのブレスレットの効果を保っていた方がいいかもですね。」


リュシアンとフアナはブレスレットを眺めてから二人で見つめあって頷いた。


「この御恩は忘れません。なにかリン様にお礼をしたいのですが...。」


フアナがリンに声を掛けるとリンは少し考えてから


「フアナさんってこれからどうするんですか?」


「そうですね。リュシアン王子の小芝居を見ていたい気もするのですが、一時的に領地に戻ろうかと思っています。」


「ちなみに、その領地ってどこですか?」


「はい、私の慰謝料として頂いた元国の直轄地ですのであまり栄えてはいませんが...。」


リンとフアナが話をしていると


「あっ」

リュシアンが突然声を上げた


「確か、フアナの領地の中にフォミテ村が入っていたよ!」


「本当ですか!!」


フアナが何かを思い出すようにう~んと唸った後


「そうですね、とても辺鄙な村ですが確かにありますね。今はお父様の寄り子が代理で治めてくれていますよ?」


「フアナさん!私、フォミテ村に帰りたいの!!」


リンは思わず叫んでしまった!


 やった〜!これなら最短でキリに再会できるかもしれない!!!


最後までお読みいただきありがとうございました。

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