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王宮とリン 中編

ジュリアンとリン

 聖女様のリンに部屋を案内した後、リュシアンは自分の執務室に戻った。

初めて彼女を見た時から、胸のときめきが止まらない。

これが恋というものなのだろうか。


 兄上が長年連れ添った婚約者との縁を切ってまで今の王太子妃と結ばれたように、私もリンと結ばれることができるだろうか。


「でも、どうしてフアナを見るとこんなに苛立ち胸が苦しくなるのだろう」


リュシアンは無意識にブレスレットに触れながら自分の気持ちをまとめようとするとスッと心が軽くなったような気がした。


 大丈夫、自分の気持ちに素直になって。

 父上にも期待されているのだから


「そうだ、父上は私に期待してくださっている。裏切るわけにはいかない」


 だから、()()()()()()()()フアナの事を裏切ってでも

 リンの心を手に入れなければ...。


リュシアンは流れてくる涙の意味を理解できずにそっと拭うと自分の仕事にとりかかった。




 リンはリュシアンに部屋を案内してもらった後、仕事があるらしいのでその場で解散してもらった。リュシアンは仕事を放棄してまでリンの傍にいようとしたがちょっとその圧が怖かったのでやんわりと断った。


「あ~。疲れた。移動と人に会っただけなのに...。」


リンが通された部屋は寝室とソファーなどがある部屋だった。ホテルのスイートルームのような豪華さがあった。

リン専用の侍女が「何か御用があればお呼びください」と呼び鈴みたいなものを置いて部屋を出ていった。一応のプライバシーがあるみたいなので安心できた。


「さてと...。この状況どうすればいいんだろう」


やたらと沈む高級なソファーに身をゆだねながらこれからの事を考えていると

コンコンコンと部屋をノックする音が聞こえたので


「は~いどうぞ~」とリンが声を掛けると


「失礼する」と言いながらリュシアンの兄らしき人が部屋に入ってきた。


 「げっ、王太子」

とリンは思わずぼやいた。本人には聞こえてなかった。


リンは姿勢を正して王太子に向かいのソファーに座る様に伝えた。

王太子もソファーに座ると


「一応、私も個人的に挨拶をしようと思ってな。現在この国の次期国王になる予定のジュリアンだ。先ほどは弟のリュシアンがお世話になったね」


「いえいえ、ちゃんとお部屋まで案内してもらいましたよ」


「そうか...。ところで中庭でフアナ嬢と会ったらしいが、リン様は大丈夫だったか?」


リンはやっぱりどこかで誰かが見ている世界なんだなぁ~と感心しながらジュリアンの話を聞いていた。


「特に何もありませんでしたよ。ただ、リュシアン王子が昨日婚約が解消されたって言っていました。」


「昨日?そのような話は聞いていないな...。」


ジュリアンは顎に手を添えながら少し悩んでいた。


「あのぉ〜。ジュリアン王子にいくつか質問があるんですが聞いてもいいですか?」


リンはこの世界に来て1カ月が経つが世の中の事をあまり理解していなかった。

知っているのは、キリが面倒な立場にいることとジャンが面倒な立場から逃げたとことリュシアンがリンを面倒な立場にさせようとしていることだった。


ジュリアンはニコリと微笑みながら


「私が答えられる範囲だったらいいよ」


と神対応をしてくれたので


「良かった!じゃあ、始めに聖女様ってなんですか?もしかして魔王とかを退治するんですか?私、早く王宮から出て村に戻りたいのですができそうですか?リュシアン王子には変な呪いがかかってますよ?最後に王様を滅しても大丈夫ですか?」


リンが質問を課されるたびにジュリアンの口元の笑顔が引きつっていった。


「え~。う~ん。なんだかリンちゃん最後の方は物騒な思想(質問)だったよ?大丈夫?一応王様って私の父親なんだけど」


と言った後、じゃあ一つずつ答えていくねと続けた。


「まず始めに、聖女様とは何十年に一度この世界のどこかに降り立ってその国を豊かにしてくれる人の事を言うよ。ちなみに男性だと聖人様って呼ばれるね」


「次に魔王討伐はないかな。そのような王は存在しないよ。魔物と呼ばれるものは昔存在していたらしいけど、魔法の衰退と比例していなくなったみたいと言われているよ。でも今も魔術師はいるし、魔法は存在しているけど使用できる人は少ないかな。だから、『魔法が使える』という発言は控えてね。王宮監禁コースだよ」


「あと、リュシアンに呪いがかかっているって言ってたね。うん、やっぱりリンちゃんは聖女様だから魔法が得意なのかな?リュシアンの兄としてはその呪いをといて欲しいです」


「最後に滅するのは本当に止めて、私が次の王様になっちゃうからね。ここだけの話、私の妃はまだお勉強中でちょっと公式な場所に出すのは厳しいんだ。はぁ〜、ほぼ初対面のリンちゃんに愚痴るのは良くないんだけど...。王太子って大変だね。もぅ、私も何かに呪われて現実透視したくなっちゃう」


グスンと自ら擬音語を発しているこの王太子でこの国は大丈夫なのだろうか、リンは少し不安になった。


「王太子ってかっこいいのになんだか残念ですね」


リンはジュリアンをマジマジと見つめながら感想を言った。


「でも、そっか、リンちゃんは降りてきた村に帰りたいんだね...。」


「はい、そこに気になる人がいまして...。でも、村長の息子の第二夫人にされそうなんですよ」


「へぇ〜。第二夫人ってそれはまた贅沢だね...。」


ジュリアンは感心しながらリンの言葉を復唱した。


「ん?第二夫人ってリンちゃんは同性愛者なの?」


「いえいえ、違いますよ。」


リンの言葉を聞いたジュリアンはなんか、余計な事聞いちゃったなと呟いた後


「その件は私が解消してあげるよ。リンちゃんはリュシアンをお願いしてもいいかな?」


「はい、大丈夫ですよ。ちゃちゃっと解除してとっとと村に戻りたいですし。」


「じゃあ、事態が動き出す前にこちらから先手を打とうか。」


と言うとジュリアンは立ち上がった。


「今日の夜、秘密裡にリュシアンをこの部屋に行くように伝えるよ。その時にその呪いを解除してもらえないだろうか」


「は〜い。了解しましたぁ~。」


「では、私は自分の仕事に戻るとしよう」


ジュリアンは部屋を出ていこうとした時に


「あっ、一つお願いがあるのですがいいですか?」


リンがジュリアンにその内容を伝えると、少し考えた後


「...。分かった、しかしその願いが叶うかどうかは今の状況では断言できない。」


と言った後、リンに向かってジュリアンが頭を下げる。


「すまない。そしてありがとう」


「そんなに簡単に頭を下げても大丈夫なんですか?」


「いいや、誰かが見てたらリンちゃんの首から上がなくなるだろうな。不敬として」


「ひぃ〜。本当にこの場所から早く出ていきたい」


リンは自分の首をさすりながら叫んだ。


「でも、住めば都だぞ?」


ジュリアンはニヤリと笑いながら言った。


 そんな都いらんわ!!とリンはこころの中でツッコんだ。

次で王宮編終了したいなぁ~。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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