ジャンとアンヌの現実(完結編)
連投中です!中編から投稿しています。ご確認の上お読みください。
「実は、私たちソラータ領に移動しようと思っています」
「えっそうなの?急な話ね」
母上はさすがに驚いたようだった。
「王都はやはり住みづらいのか?」
父上は心配そうに私を見た。確かに間違ってはいない。これからどうしようか少し悩んでいたこともある。
しかし...。
コンコンコン
そこにノックが聞こえた。「ジャン様、お客様がお見えになっています。このままお通ししてもよろしいでしょうか?」家令からだった。
私は誰が来たのか分からず少し悩んでいると再び家令が
「申し訳ございませんが、お待たせしていただく方ではございませんのでこのまま扉を開けさせていただきます」
という言葉と同時にドアが開いた。
そこに現れたのは
「こっこんにちは~。」
聖女様がフラッと部屋の中に入ってきた。
「聖女様にご挨拶申し上げます!」
私はつい昔の癖で騎士の礼をしてしまった。
「「「「聖女様にご挨拶申し上げます」」」」
私の言葉に続くように両親と叔父そしてアンヌまでもが淑女の簡略化した礼をとる。
ん?アンヌは淑女教育を受けたことがあるのか?
「えっ、何?誰?」
ミネルヴァが一人で座ったまま呆然としていた。
「聖女様、娘が失礼な態度で申し訳ございません」
彼女だけが礼もとらずに座っている状況に父上は苦々しい表情で見つめた。
「あ~大丈夫だよ。皆さん座ってくださいね~」
聖女様は軽く礼を解くと立ったまま話し出そうとしたので父上が慌てて「こちらにお座りください」と言いながら自分の席を譲った。
同時に母上も席を立ったのでアンヌが自分の席に座る様に伝えると自分はそのソファーの後ろに立った。私も同じように父上に席を譲りその後ろに立った。
聖女様は驚きながら「えっじゃあお言葉に甘えて座っちゃいますね〜」と言いながら両親が座っていた場所に腰を落ち着けた。
「どうして貴方がその場所に座るの?」
ミネルヴァは何も知らない幼子のようにキョトンとしながら聖女様に尋ねた。
「えっ、ここに座っていいよ?って言われたからかな?」
駄目だった?と私に確認してきたので「いいえ大丈夫ですよ」と伝えた。
「さてと、ジョンさんのご両親ですか?」
聖女様は両親に声を掛けると
「はい、ジョンの父のブルーノ・レザイです。伯爵を賜っています」
「ジョンの母のバウラ・レザイでございます。」
「初めまして、リンと申します。ジョンさんからお聞きしましたか?この度ソラータ領に住むことになりまして、お手伝いをお願いしようと思っています。」
「えっ、家名がないの...。」
聖女様の自己紹介にミネルヴァが反応した。もう、黙っていて欲しい。
「ちょっとさっきから私の話を中断させている貴方、一体だれなの?」
聖女様が不快に思ったらしくミネルヴァに話しかける。
「私は、レザイ子爵の第一子ミネルヴァですわ。あなた、家名も無いし名前も聞いたことない響きだけど、本当に聖女様なの?」
ミネルヴァが不躾な質問を投げかける。
あっ、聖女様のこめかみが引きつっているように見える。
私は眩暈がしてきた。
「そうですね~。この世界の人には『聖女様』って呼ばれていますね。特技は女神様の力を使う事ですよ?」
聖女様の言葉にミネルヴァ以外が動揺した。
「そうなの?だったら見せてごらんなさいよ!」
ミネルヴァも負けじと聖女様に対抗する。
「はぁ~。なんか新鮮というか斬新というか...。分かったよ。まず始めは...。」
と言いながら聖女様がミネルヴァをしばらく見つめた。
「あ〜あ、あなたアンヌさんのカフェに行って毎日ネチネチと嫌味言ってたの?そういうの駄目だと思うよ。あ~、オーナーさんも苦笑いしてるよ」
なんと、聖女様はアンヌが職場で嫌がらせを受けていた事を言い当てる。
ミネルヴァは顔を青ざめながら
「そんなの人を雇えばどうにでもなるでしょ!!」
反抗的な態度に聖女様は面白がり始めたようだった。
「へぇ~。ふぅ~ん。そんな対応しちゃうんだ。いいよ。あなた、ジャンさんと結婚したら家の事は何もするつもりなかったんでしょ?楽して今までの様に散財できるし、ついでに初恋のジャンさんと結婚できるなんて一石二鳥だって考えてたんだ。ジャンさんの相手は獣人だからどうにでもなるって思っていたの?駄目だよ~そういう差別的な思想は」
「どうして!貴方は私の頭の中を読んだの?それじゃまるで聖女ではなく魔女ね!」
「あと、こういうこともできちゃいます」
聖女様が指をパチンと鳴らすと、ミネルヴァが言葉を発することができなくなった。
突然の出来事にパニックになりながら喉元を触ってる。
最終的に怖くなり叔父に助けを求めていたが何を言っているのか分からず叔父も困っていた
「ん?ついでに聴力も奪っているからね。何も聞こえなくて焦っているんじゃない?」
と聖女様は平然と答えると
「今のうちに話の続きをっと。さすがにソラータ領主のメイドさん達を借りるのも良くないと思いまして、ジョンさんとアンヌさんを引き抜きたいって手紙を出したんですよ。もし、ジョンさんが何処かを引き継ぐ予定があるのならばそれまででもいいのでジョンさん、アンヌさん一緒に来てもらってもいいですか?」
「はい、アンヌともよく話し合いました。私は決まった職場も今はありませんし、アンヌも仕事を辞めることを了承してくれました。」
となりでアンヌも「はい、よろしくお願いします」と頭を下げながら伝えた。
その言葉に聖女様はとても喜んでくれたようだった。
「わ〜い!やった!ちょっとキリと二人で家の中を整理し始めているんだけど中々慣れなくて。アンヌさんはとりあえずメイド長?というやつをお願いしたいです。ジョンさんは警護の方をするのか家令の方をするのかまた教えてくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、後はご両親とゆっくり話してね。私の用事は終わったから帰ります!」
聖女様は席を立つと
「せっ聖女様、娘が大変失礼な態度をとってすみませんでした。しかし、どうか今の状態を解除してもらえないでしょうか!!」
叔父がミネルヴァを抱きしめながら懇願していた。
「う~ん。そうだね。ちょっと眠ってもらって起きた時元に戻る様にしときますね」
と言いながらミネルヴァの頭をそっとなでるとそのまま眠りについてしまった。
「うん、これで大丈夫。あんまり我儘に育てるのは良くないよ?お父さんは厳しく育てているつもりでも周囲はそうじゃないかもしれないからね」
「はい、聖女様のお言葉しかと胸に刻み娘を育てていきたいと思います」
「お父さんも無理しないでがんばってね」
「ありがとうございます」
叔父は座ったままなので正式な礼は取れなかったが深く頭を下げていた。
「それじゃあ、私は先にソラータ領に行ってるね!あっ、見送りは大丈夫だから!失礼しま~す」
聖女様は嵐の様に去って行った。
両親は再び聖女様が座っていた場所に戻り家族会議になった。
そして、父上は重い口を開いた。
「ジャン、お前は早急にアンヌさんとソラータ領に行くように。聖女様が困らないようにお手伝いをしなさい。アンヌさんもよろしく頼むよ」
「はい」
「はい。かしこまりました」
次に父上は叔父の方見て
「今回の聖女様の御心が広かった故に見逃していただいたが、王家にばれると大事になるところだった。許されたとはいえ、レザイ家当主としてはミネルヴァに対して制裁をしなければならない。いいな」
父上の口調は弟に伝えるものではなく、それは当主と部下の関係になっていた。
「はい、いかなる命令も受ける覚悟でございます。ただ、娘の命だけはお許しください。代わりに私と妻の身を捧げます」
叔父の言葉に私とアンヌが息をのんだ。まさかそこまで言うとは思わなかったからだ。
しかし、父上は首を横に振り
「せっかく、聖女様が見逃してくださった命を粗末にしてはいけない。お前はそのままジャンが継ぐまで子爵を守り、ミネルヴァは早急に頼子の男爵に嫁がせるように。」
「はい。確かに承りました。元々嫁ぐ予定だった例の男爵家でも大丈夫でしょうか?」
「そうだな、彼だとミネルヴァを慈しんでくれるだろう。少々お転婆でもな」
こうしてミネルヴァへの処分を終え、ソラータ領への移住の報告をすましアンヌと二人で家に帰っていった。
【補足】
後日、急遽ミネルヴァはお嫁に行く予定の男爵家にご挨拶にいきます。
お相手は、後妻を求めるご老人...。ではなく、後妻ですがまだまだ若い男爵の領主です。
結婚をしても前の奥さんの事が忘れられず、始めのうちはすれ違いばかりですが夜な夜な泣いているミネルヴァを見つけて話し合いゆっくりと愛を育んでいきます。
ちょっとざまぁを書きたかったのです。
次ぐらいでリンとキリのお話しも終わると思います。
だがまだ内容はまとまっていないのでした!!
最後までお読みいただきありがとうございました。




