ジャンとアンヌの現実(中編)
ここから連投します!
私は、アンヌの今日の仕事のシフトが終わる頃合いに合わせてギルドでの仕事を終えた。そして、裏口へ向かい今日は外食にでも行こうと声をかけるつもりだった。
すると、店の裏口がいつもより騒がしかった。
私はそっとその場に向かうと、カフェの裏口に不似合いな高価な服を来た女性が数名立っていた。
何やら店員に言いがかりを付けているようだった。
「・・・でしょ?」
「・・・がおっしゃってるじゃない!」
私はドキッとした。女性の一人の声に聞き覚えがあるからだ。
「今度は水じゃなくて熱湯でもかければその醜い姿も少しはマシになるのかしらねぇ~」
クスクス、フフフ。とても嫌な雰囲気が路地に流れ出る。
「もう、やめてくれないか!ミネルヴァ!」
私の声に反応し女性達は一斉にこちらを見た。
その家の一人がキラキラした表情をしながらこちらに向かってきた。
「ジャンお兄様!」
昔からの習性でミネルヴァが私の懐に飛び込もうとしたが、私はそれを許さず手前で彼女の両腕を掴んだ。
「ジャンお兄様...。」
少し甘えた声で拒否された事を咎めるように上目遣いでこちらを見てくる。
奥の方で私たちを見ていたアンヌがその状況を見たくないからか目をそらした。
ミネルヴァのお供たちは、レザイ家の系列の下部貴族だった。
「ミネルヴァ様、お似合いですね」
「本当に、まるで夫婦のようですわ」
私たちのこの状況をみてどうしてそのように思う事ができるのか理解ができなかった。
「ミネルヴァ、君は一体何をやっているんだ」
まだ抱き着こうとする彼女に少しきつい口調で確認すると気にする様子もなく
「お兄様、ミネはお兄様の事が心配なんです!」
そう言うとアンヌの方を見ながら
「本当にあの方とこのまま一緒に過ごすのですか?お兄様にはもっとふさわしい女性がいると思うのです」
ミネルヴァの言葉にお供の二人はキャーと言いながらミネルヴァの近くによってきた。
「ついに告白するのですか?」
「これが真実の愛というものではないでしょうか?」
お供たちはまるで劇を見ているような雰囲気で話している。
すぐに否定したいが気を抜くとミネルヴァが抱き着いてくる。
正直鬱陶しい。ただ、昔から女性は丁寧に扱うように躾けられているので無為にはできない。
「とにかく、ここはアンヌの職場だ。迷惑をかけないでほしい。」
「では、ではミネに会いに一度ご実家にお戻りください。そこできちんと話し合いをしましょう」
私はアンヌの方を見て確認すると、彼女はひとつ頷いてくれた。
「ああ、分かったよ。ただしアンヌも連れていくから。」
ミネルヴァはアンヌをちらりと見た後フッと鼻で笑った後
「辛い思いをされるのはあれかもしれませんが、大丈夫ですか?」
「アンヌの事は父上も母上も理解してくれている。君のような態度は決してしないよ」
少しだけ押し出すようにミネルヴァを話すと、キャッと少しよろけた。
すぐに、お供の二人が彼女の背中をそっと支えた。
「ミネルヴァ様、用事は済んだのですから早くここから出ていきましょう!」
「そうですよ。こんな...。あっ、失礼しました。ミネルヴァ様のいらっしゃる場所ではございませんわ」
ミネルヴァ達は私に会釈した後、そのまま立ち去った。
残っているのは、私とアンヌだけだった。
私は直ぐにアンヌに駆け寄りすぐに抱きしめた。
「すまない。本当にすまない」
アンヌをギュッと抱きしめた。
アンヌも抱きしめ返してくれたが何も言葉をかえしてくれなかった。
しばらく抱き合っていると裏口のドアがガタッと開き、アンヌの先輩らしい女性が出てきた。
「ちょっと前からアンヌにいちゃもんつけたよ。相手はお貴族様だからね。私たちは何もしてあげられないよ。変な権力でこの店を潰されちゃ困るからね!アンヌももっと良い人いるんじゃないの?そんなお貴族様じゃなくてさ!」
さすがに先輩の言葉に驚いたアンヌは
「ちょっと!何言ってるんですか!私は大丈夫です。その...。お店に迷惑を掛けているのは申し訳ないですが」
顔だけ先輩の方に向けて言い返していた。
その言葉を聞いた先輩は安心した表情になり
「そっか、アンヌが覚悟をもっているんだったそれでいーんじゃない。まぁお貴族様って言っても相手の態度が全般的に悪いからいざとなったらギルドに依頼してもいいってオーナーも言ってたしね!じゃあ、早く帰りな。それと、アンヌちゃんとその旦那に今の状況を説明するんだよ!一人で全部背負わない!そのための番なんだからねっ」
と言い終えるとバタンとドアを閉めた。彼女はまだ仕事があったみたいだ。
「アンヌ、私に話してくれるかい?」
抱きしめていたアンヌをそっと話すと私は目を見ながら聞いた。
アンヌのかわいいミミが少しペタンと折れながら
「うん。今まで黙っててごめん」
こうして、予定していた外食でアンヌから話を聞くことにした。
いつもだとアンヌが好きな大衆食堂で食べるが今日は話もしたかったので半個室のあるお店に入った。
二人でワインを選んでから乾杯をした後、アンヌは小さく息をついてから話し始めてくれた。
私が騎士を退団してしばらくすると、私の婚約者候補だったという従妹のミネルヴァがアンヌに接触してきたそうだ。
アンヌが原因で私が騎士団を追い出された。自分の罪を認めて私から離れろ、別れろと言いに来ていたらしい。
アンヌからしてみれば私はいわゆる番と呼ばれるものらしく何があっても離れる気はなかったらしい。見ず知らずの他人だったら実力で分からせる事もできたが私の親戚で貴族ということもあり、さっきの先輩や店のオーナーと話し合った結果聞き流すということにしたそうだ。
「私にも一言欲しかったよ」
不甲斐ない自分に少し落ち込んでいるとアンヌがそっと私の頭をなでる。
「そだね。相手が肉食系の獣人だったら一緒に共闘して欲しいってお願いしたかもしれないけど、どこまでいっても人間、一応淑女ってヤツだよね」
アンヌも自分で言っておきながら納得できなかったのか眉間にしわがよっていた。
その表情がおもしろくて思わず笑ってしまった。
「ああ、彼女は一応淑女としての教育は受けているはずなんだけどね。どうやら身に付いてはいないようだよ」
「だよね?良かった!!私の常識がおかしいのかと思った」
「ん?アンヌも淑女教育受けたことあるの?」
私はワインを口に含みながら質問すると
「えっ?ん?あんまりないかな。それよりも、ご実家に行くの?」
「ああ、きちんと母上に伝えるよ。婚約者候補なんて私たちはもう結婚しているんだよ?」
「それは、平民としての結婚でしょ?」
「私は、貴族籍を破棄するよ」
私の言葉に驚いたアンヌは、しばらくすると目を潤ませながら
「そこまで私の事を?」
私はアンヌの手をギュッと握ると
「もちろんだよ。アンヌもずっと私の傍にいてくれるんだろ?」
「もちろんだよ!」
「なるべく早く実家に行こう!」
「そうだね」
二人で答えを見つけることができて本当に良かった。
最後までお読みいただきありがとうございました。




