リンとキリのその後に3
すっすごい...。
バルストさんに連れてこられた教会は、村と比べると規模が全然違った。
村の教会が木造だとすれば、こちらは石造りって感じだった。
どうやって作ったんだろうなぁ~と思いながら見上げていると
「こちらの教会は魔法によって建てられたものなんですよ。ソラータ領はこの国でも信仰が上位の方にあると自負しています!!」
フンスっと鼻息が聞こえてきそうなバルストさんの説明を私は「ほへぇ~」と感心しながら聞いていた。
人って上を向くとつい口が開いちゃうよね。いけない、いけない。
「さあさあ、さっそくフロスト司祭長にお顔を見せて頂けませんか?」
「そうだね!心配で訪れたんだからね」
私とバルストさんは二人で教会の奥の方の関係者以外立ち入り禁止エリアに入っていた。
中庭も綺麗に整えられていた。
そのエリアのさらに奥の方に重厚な扉が見えた。どうやらここがフロストさんの仕事部屋なのかな?
バルストさんは、扉をノックした後
「フロスト司祭長、バルストが戻ってきました」
すると扉の向こうから
「どうぞ、入っておいで」
という声が聞こえたので、バルストさんが私を見た後、真面目な表情になり
「聖女様、フロスト司祭長をよろしくお願いします」
と頭を下げた後、扉を開け私だけ部屋の中に入れた。
部屋の中に入ると、書類に書き込む音のみが聞こえてくる。
時折何かをめくる音も聞こえた。
「バルスト、何かもめごとでも発生しましたか?私に休養は必要ありませんよ」
フロストさん...。イヤ、休養が必要でしょ?
と思いながら机の前までささっと移動した。
私が何も声を掛けないので不信に思ったフロストさんがふいに書類から目を離し顔を上げた。
「バルスト、本当に...。」
目の前に私がいたので驚いたらしく一瞬固まっていた。
「聖女様?」
「はい。皆さんに心配されているフロストさんにお説教をするために当分こちらに移り住むことになった聖女様ですよ!!」
私は、ニヤリと笑ってフロストさんを見た。
「とりあえず、手に持っているペンを机に置いて休憩しましょうね?」
私はフロストさんにソファーを勧められたので座ると、その向かい側にフロストさんも座った。そのタイミングでバルストさんがお茶を持ってきてくれた。
出来る部下だな!
フロストさんはバルストさんをチラリと見て何か言いたそうだったけど、私がいる手前遠慮していたみたいだった。もちろんバルストさんはその視線を無視してせっせとフロストさんの為にお茶の準備をしていた。
私は、出してもらったお茶を飲んだ後バルストさんがお家に来たことやフアナさんも心配していたことを話した。そして、キリもこちらに仕事ができたので当分領都に住むことも伝えた。
フロストさんは私の話を聞きながら時折こめかみを押さえながら
「お前が珍しく休暇を取るといったから喜んだのに、そんな事を企んでいたなんて」
「フロスト司祭長は本当に、無理をしすぎなんですよ」
お茶の準備を終えたバルストさんが今度はフロストさんの机の上を整理し始めた。
二人ともワーカーホリックかもしれない。
「バルストも一緒に休憩しなさい。」
フロストさんも同じことを思ったみたいだった。
「ありがとうございます。でも、この提出する書類を持っていってからご一緒させていただきますね」
と言うといくつか書類を持って部屋を出ていってしまった。
「さてと、それでは聖女様お話しをしましょうか」
フロストさんはニコリと微笑んでくれたけど、ちょっと背中がゾゾっとした。
そういえばこの人かなり美人さんだった...。
この後、フロストさんに今の教会の状況を説明してもらった。
やはり、フアナさんとバルストさんが言っていたように私に一目会いたいと色々な権力を使って接触してきているみたいだった。
「ん~、どうします?王様に圧力とかかけてもらいます?」
私は権力には権力を的な発想でフロストさんに尋ねてみたが、いまいちフロストさんの反応が良くなかった。
「フロストさんって王様と親しいと思っていたんだけど...。」
色んな意味でね〜。とは言いませんが。
「...。そうですね...。ん〜。王様に頼らなくても大丈夫かな...。と」
あれ?フロストさんが珍しく動揺してる?
王様と遠距離恋愛だからかな?
私はついフロストさんをじぃ~と見つめていると
コホンと小さく咳ばらいをして
「実は、こちらに来るとき色々と身辺整理をしました。」
「身辺整理ですか?」
「そうです。」
「・・・」
「・・・」
「大人には色々事情がありましてね。長年の腐れ縁も一緒に処分してきたのです。」
あっ、王様と別れたのか...。
「まあ、この話は聖女様には関係の無い事ですね。すみません。誰かに話したかったのかもしれません。それとは別に、あまり王家に頼るのもどうかと思いまして。」
まあ、元彼に助けてもらうのも違うか...。
「明日、フアナさんにも話を聞きに行ってきますね。フロストさん、少し高級な紙ってありますか?公式に使いそうなやつです」
私は、フロストさんに紙を用意してもらった。
ちょうどバルストさんが部屋に戻ってきていたから作業がスムーズだった。
フロストさんとバルストさんが興味深げに私と紙を見ると
「少し待ってくださいね」
私はその高級な紙に手を翳すと魔法陣のような円が浮かび上がった。
「はい、これどうぞ」
「えっ、これは?」
「少し魔力を流してもらってもいいですか?」
私の指示に従ってフロストさんがその紙に魔力を流すと、あら不思議
「こっこれは...。」
「はい、女神様の姿ですね。立体で浮かび上がる様にしました。聖女には会えないけれど聖女が代わりにこれに祈る様にと言っていましたとお伝えください。もちろん持ち出し禁止ですよ。個人で所有しようなんて考えたら何が起こるか分かりませんからね」
「さすが聖女様デスネ」
バルストさんの言葉の語尾が棒読みになっていたのが少しおもしろかった。
「まあ、聖女の力なんて本当に絶大ですからあてにしない方がいいです。」
二人に伝えたつもりだったが、実は自分にも言い聞かせていた。
女神様はどうして私にこんな力をくれたのか、好きな人と幸せに生きていくシンプルな人生を送るのかなって思っていたんだけどね。
「そうですね。リン様の言う通りですね。」
「でも、聖女様のお気持ちを貴族の方々が理解しているのか、理解しようとしてくれているのかは別問題になってしまいます。」
「う~ん。話がなかなか進まないですね。今日の目的はフロストさんの体調の確認とご挨拶だったので、これで帰りますね」
私は、立ち上がるとススッとフロストさんの背後に付きそっと肩に手を乗せた。
「失礼しますね。」
そして目をつぶり体が楽になりますようにとお祈りすると、一瞬フロストさんの体が光った。驚いたフロストさんは振り向き
「こっこれは体が軽くなりました!リン様ありがとうございます!」
私は首を横に振ると
「これは、私とキリの結婚式の立ち会いをしてくれたお礼です。いつでも治しますので何かあったら教えてくださいね。」
最後のお願いはフロストさんではなく隣に座っていたバルストさんに伝えた。
私の力を見たバルストさんは興奮気味に頷き
「はい!必ず連絡させていただきます。ありがとうございました!」
と立ち上がりながら深く頭を下げてくれた。
「いいえいいえ、気にしないでください。で、私帰りたいんですけど...。」
「そうですね。馬車までお送りします!」
バルストさんの言葉に頷き私は扉の方に向かっていった。
「リン様、ありがとうございます」
フロストさんも立ち上がり頭を下げようとしたので
「もう、本当に大丈夫ですから!じゃあ、ここで失礼しますね」
とバルストさんの背中を押しながら部屋を出ていった。
二人で廊下を歩きながらただひたすらバルストさんにお礼の言葉を貰ってそのまま馬車に乗りあの大きな家に帰った。
最後までお読みいただきありがとうございました。




