リンとキリとその後に2
「さてと、お二人のお話しを聞きましょうか」
キリは私と見知らぬ青年とナガリにお茶を入れた後私の隣に座ってから話始めた
「ナガリの話は僕の仕事の内容だと思うので、先にあなたのお名前とご用件を聞いてもいいですか?」
青年は小さくいただきますと言いながら出されたお茶を一口飲んだ後、ホッと息を付き私の方を向くと
「初めまして、私はフロスト司祭長様の元で助手をしているバルストと申します。今日は、聖女リン様にお願いがございまして」
そういうと席を立ち頭を下げながら
「どうか私と一緒に領都に来ていただきませんか!」
「えっ、え~」
バルストさんが私の方を見てから再び頭を下げる。
そんな事急に言われてもな...。
「まあまあ、とりあえずお座りください」
隣に座っていたキリもさすがに驚いたようだったけど、すぐに気持ちを切り替えたみたい。
さすがだね!
「ありがとうございます...。聖女様、今領都の教会はどのような状況か御存じですか?」
バルストさんの質問に私は首を横にふった。新聞みたいな物は一応あるみたいだけど村長の家とか雑貨屋にしかおいてなかった。特に世上を知りたいとも思わなかったし。
「ソラータの領都には聖女様がいらっしゃるというのはこの国では有名な話になりました。そうすると、一目聖女様に会いたいと多額の寄付を持った貴族や、時には領民までも押し寄せてきます」
「そうなんだ~」
私は他人事の様にバルストさんの話を聞いていると、彼が少し表情をゆがませた後
「その方々の対応をしているのが、新しく司祭長になったフロスト司祭長様なのです。始めは私も補佐でお手伝いしていたのですが、貴族の対応ばかりしているわけにはいきません。どうしても普段の仕事を時間の空いている夜にまわしてしまうのです。」
バルストさんは冷めたお茶で喉を潤すと
「ここ一週間は特に酷くて、私がお休みくださいと真夜中にお声をかけても『この書類が終わってから休みますよ』といって一向に体を休めてくれないのです!!」
「それは...。大変な状況ですね」
リンもバルストさんの話を聞いて心配をし始めた。
「王家の方から控えるように伝えてもらっても良いのではと思うのですが、伝わっているのか私の立場では確認できません。そんな折、フアナ領主様が私に声をかけていただき今回聖女様にこちらに移住してもらえないか確認するように言われました」
とバルストさんはフアナさんからのお手紙を私に渡した。
その手紙の内容は、バルストさんが説明してくれた内容とほぼ同じで一時的でもいいからこちらに来てくれないかとの事だった。
私は、少し困ったなと思いながらその手紙をキリにも読んでもらった。
最悪私はどこに住んでも大丈夫だけど、キリは生活圏とか仕事とかすぐに移動できる訳ではないと思うんだよな~。
でも、フロストさんの体調面は心配だよね...。
「急に言われてもね...。バルストさんの状況は理解できたけど...。」
思わず言葉を濁してしまう。
「おぉ~そういうことか!ここで俺の話が繋がってくるんだな」
うんうんと頷きながらナガリが一人で納得していた。
「そういえば、ナガリの用事ってなんだったんだ?」
キリも私と同じ事を思ったみたいで声をかけた
「ああ、キリ、お前領都へ少しの間俺と仕事に行くことになったぞ!」
「えっ」
これこれっと言いながらナガリがキリに辞令書を渡した。
「やっぱり聖女様が住んでいる地域ということで村からもう少し大規模な街にしようと領主様から命が出たんだよ。んで、俺たちは領主館で研修みたいな領主様の元で働く事になったぞ。もちろん行くよな?」
「ん?キリってナガリの元婚約者から部下になったの?」
私は思わずキリに聞くと
「あ~、まあそんな感じかな」
二人の会話の背後でバルストさんの「えっ元婚約者?」と言いながらキリを見て驚いていたけどそっとしとこ。
要件を伝えたバルストさんとナガリはそのまま帰った。
なんだか濃い一日だったな。
夜、夕食をすました私とキリはこれからの事を話し合った。
「話し合うって言っても二人とも領都に行く理由があるからちょうど良かったのかな?」
「そうだね。僕は、明日妹に引っ越しの話を伝えるよ。あの子も賑やかなところが好きだから遊びに行くわ~と言って気持ちよく送ってくれるとは思う」
キリは妹さんを思い出したのか苦笑いをしていた。
「そっか、だったら早めにフロストさんに会いに行きたいな。きちんと自分の目で状況を確認したいしね」
話し合いもそこそこに切り上げて二人で寝るにはちょうどよい大きさのベッドでキリに包まれるようにして眠った。
一週間後私たちは領都に移住した。
もちろんキリの妹さんはキリの予想通り「そっちが落ち着いたら遊びにいくからね〜」とのことだった。
そして、住む場所はフアナさんが用意したから必要なものだけ持って来てくださいと言われたのでほぼ生活用品のみを持っていったのだけど...。
「・・・」
「・・・」
「「ちょっと大きすぎるでしょ!」」
フアナさんが用意してくれたのは教会と領主館の中間地点にある元貴族が住んでいたお屋敷だった。
「聖女様がお住まいになるのですからこれくらいの規模でも問題ないと思いますよ?」
住所だけ伝えて現地集合していたバルストさんは当たり前のように言った。
「イヤイヤイヤ、私たち元はしがない平民だよっ。こんなお屋敷管理できない...。」
私は、掃除や食事の事を考えながら頭を抱えていると
「えっ?それはもちろん人を雇えば住むことでしょ?」
何言ってんの?みたいな顔しないでください。バルストさん。
えっともしかしてバルストさんも実家は貴族だったりするの?
「私は高位貴族ではないですよ?でも親は子爵を頂いています」
「キリさんや、子爵さんってふつうにメイドさんとかお家にいるの?」
「僕もあまり詳しくは分かりませんが、大きい所だと雇っていると思いますよ?」
「マジかよ!」
「聖女様、ご主人様、宜しいでしょうか」
キリと二人でアワアワしているとロビーでいかにも家令してますって方に声を掛けられた。
「私、臨時でこのお屋敷の管理をさせていただいております。ドラモンドと申します。よろしくお願いいたします」
というと頭を下げられた。
「今はフアナ領主様の命で数名の使用人とこのお屋敷を整えております。」
「あっ。ハイ。よろしくお願いしますね」
私も思わず敬語になっちゃうよ。
「聖女様、お話し中すみませんが、とりあえずフロスト司祭長様にお会いになって欲しいです」
バルストさんが急かすように私に声をかけてきた。
私は一つ頷くと
「キリは、明日から領主館に行くんだよね?ドラモンドさんからお家の説明を受けてもらっても大丈夫?」
「うん、任せて!先に教会に行きなよ」
キリの言質をとったバルストさんはそのまま私の背中を押しながら馬車に乗せようとした。
私は振り向きながら
「じゃあ、また夜ね!」
「うん、分かった!気を付けてね」
キリに手を振るとキリも手を振り返してくれた。そして、そのままドラモンドさんとお家の奥へ進んでいった。
私は、馬車に乗り込んだ。
気分を切り替えなくちゃね。フロストさん...。大丈夫かな。
最後までお読みいただきありがとうございました。




