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移動とリン

ジャンとリン

少し、センシティブな表現があります。ご了承ください。

「はぁ~」


馬車に入ったリンは聞こえるように溜息をついた。


「リン様、そんなに露骨に態度にださないでください」


向かい側に座って苦笑いをしているのは、書簡を持ってきた騎士だった。


「だってこれは遠距離恋愛ってものじゃないでしょ!せっかくイケメンを見つけてこのまま付き合えそうだったのに、何あれ?何?第二夫人って」


さっきまでキリの前で悲しそうに別れを述べていた少女が自分に心を開いてくれているのは嬉しいが、少し開きすぎなのでは?と思いながらジャン(騎士)は聖女と呼ばれているリンを眺めた。


ちょうど一カ月前に騎士団長から地方の村に出現した聖女を王都へ連れてくるという指令を受けた。団長は最後のはなむけにこのような名誉ある仕事を振ってくれたのだった。




※※※


 「本当に騎士を辞めるのかい?」


団長室に呼び出されたジャンは、上司の言葉に頷いた。


「そうか...。君はこれから伸びていく騎士だったんだがな」


団長は書類を整理しながらジャンに話しかける。


「...。どうしても彼女と分かれるという選択肢はないのかい?」


ジャンはその言葉に驚き団長の方を見ると、書類整理を辞めジャンの方を見ていた。


「はい...。彼女と別れるという選択肢はありません。」


「そうか...。今街中では王太子と低位貴族とのラブロマンスが流行っているが、ジャンもそんな感じかい?」


「王太子殿下のお相手は低位でも貴族籍に入っていますが、私の相手は平民で獣人の女性なんです。」


ふぅ~。と団長の溜息が漏れる。


「静かに愛を育む予定でした。私の両親も認め始めていたのですが...。」


「他派閥の騎士に漏れてしまったというわけか」


ジャンは肩を落としながら


「まだまだ身分差に厳しい上に多種族となると、両親が認めても派閥の足元を掬われかねないと思いまして、私から廃嫡を申し込みました。」


「ご両親はさぞ悩まれただろうな」


ジャンは団長の言葉に小さくうなずき


「はい、それは申し訳ないぐらいに色々な手だてを考えてくれましたが、後を継ぐ兄の負担を考えるとやはりこれが一番正しい選択かと思いまして」


団長は席を立つとジャンに近づいた。それに合わせてジャンが立ち上がると。


「次の指令を持って、ジャン・レザイの騎士としての資格を剥奪する」


「はっ、かしこまりました!」


団長はジャンの肩を叩くと


「困ったことがあればいつでも相談に来なさい。上司としてではなくとも何か手助けはできるだろう」

ジャンはその言葉を聞いた後、頭を下げ


「いままでありがとうございました」


と礼を言った後、団長室を出た。


そのまま廊下を歩いていると、数人の騎士がニヤニヤしながらジャンの横を通り過ぎる。


「なあ、あの話聞いたか?」


「ああ、騎士を辞めて女を選ぶ奴だろ」


「相手は獣人だってさ」


「へぇ~出世を捨ててまでって、よっぽど良かったんじゃねーの」


と言いながら一人の騎士が腰を縦に振っていた。

それを見ていた他の騎士達は大声で笑っていた。


ジャンはその騎士たちを無視して通り過ぎた。

実力ではジャンの方が遥かに上をいくがこのような状況下で暴力に訴えるのは賢くないというのは理解しているので聞き流すしかなかった。



 ジャンはその足で騎士団の寮や実家の邸には戻らず、愛しい女性がいる下町の家に戻った。扉を開けると美味しそうな夕飯の匂いが玄関まで届いていた。



「ジャン、お帰り!今日はあなたの好きな香草焼きよ!」

ウサギ獣人のアンヌは水仕事をしていたのか付けてるエプロンで手を拭きながらジャンがいる玄関へ小走りに向かってきた。


ジャンはそんなアンヌの姿をみるだけで職場でのモヤモヤが一気に吹き飛んだ。

アンヌはジャンに抱きつくとそのまま首筋に顔を埋めた。

クンクンと匂いを嗅いでいるのが分かった。少しくすぐったいのでそのままアンヌを抱き上げた。


 アンヌは始めは驚いて喜んでいたがすぐに沈んだ表情になった。


「じゃん、仕事で何か嫌な事があったの?」


アンヌの言葉にジャンは一瞬表情が固まるがすぐに笑みを取り戻し


「何もないさ。さて、アンヌの美味しい夕食を頂きたいな」


アンヌもそれ以上何も聞かずにジャンの手をひいてダイニングに向かった。


 やはり私はこの愛おしい人を捨ててまで貴族でいる理由がない。

ジャンは、アンヌに手を引かれながら強く心に思ったのだった。



※※※


「はぁ~」


ジャンがリンを迎えに行くまでの事を思い出していると再びリンの溜息が聞こえた。


「どうかしましたか?」


とジャンがリンに尋ねると


「今回の『はぁ~』は貴方に向けてのヤツですからね。」


リンは車窓の景色を見るのを止めてジャンの方に目を向けた。


「何があったんですか?さすがの私でもあの雰囲気は異常だというのはで理解できますよ」



リンがキリとお別れをする前に、ジャンと王都から来た聖騎士達の間で軽い諍いがあった。


「聖女様は我々聖騎士達がエスコートさせていただく」


「いいえ、私が騎士団長より命を受けておりますゆえ」


通りかかったリンが聞いたのは誰がリンと一緒に馬車に乗るかの話だった。

お互いが譲り合わないうちに聖騎士団の一人がおもむろに


「レザイ殿は聖女様とお近づきにならなくとも既にお相手がいるではないですか」


その言葉を皮きりに聖騎士達とジャンの雰囲気がおかしくなっていくのがリンにも分かった。


「そうそう、確か猫でしたかな?」


「いやいや、鳥でしょう」


鼻で笑う騎士もいたようだった。


「とにかく獣と混ざりあうなど...。」


リンは最後まで聞いていられなくなり、話し合い中のドアをガチャっと開けた。


「初めまして、聖女のリン様ですよ! 今日はそちらのレザイ騎士様に馬車に乗ってもらうのでこれ以上の話し合いは不必要ですよ!」


とリンは必要事項のみを伝えてドアをパタリと閉めた。


「...。すみません」


ジャンもその話し合いを思い出したのか顔色を悪くしながら謝罪した。

そして、今自分が置かれている立場とそうなった経緯をリンに打ち明けた。


「そっか...。」


リンはジャンにそう言うとそのまま景色を眺めはじめた。

ジャンは余計な事を言ったかなと思いつつその言葉の続きを待った。


馬車の外では少しでもリンに顔を覚えてもらおうと色々な聖騎士達がこちらを覗いては笑顔を振りまいてきた。


確かに、顔面偏差値高いよなと思っていたが思想が残念だったのでリンの好感度は上がらなかった。


「外ずらばっかだな。聖騎士団は、まるでくs」


と言いながら聖騎士団に微笑みながら手を振っていた。


「あの、リン様。言動と行動が伴っていませんよ?」


ジャンが再び苦笑いをしながらリンに声をかけると


「だって、第三者(他人)が求めているものってこうゆうことなんでしょ?」


と言いながら愛想笑いをしつつ聖騎士達の悪口を言い放っていた。


「なんか、想像していた方と違いますね...。」


「そりゃそうよ、これから王都にいるタヌキやキツネと話し合い(やり合い)するんだからね~」


と言った後、


「あっ、うさぎちゃんは可愛いから大丈夫だよ」

と言ってリンはサムズアップをした。


これから一週間、この子(聖女)と一緒の馬車か...。少しだけ聖騎士に場所を譲りたいな...。

と思ったジャンだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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