ティムとイストと大人の話
番外編に入りました。
話の中で抜けてるな~と思っている個所を埋めていきます。
今回の後書きは手紙です。(ロミオメールみたいややつです)
読まなくても大丈夫です!
あっ、あと少しだけ背後注意です。
先ほどまで執り行われていた結婚式を帰りの馬車で一人思い出し笑いをしてしまったティムは村長にせめて一泊でも宿泊していってくださいと言われたが丁寧にお断りをした。
聖女様こと凛様とキリは幸せそうに誓いのキスをした後、凜様が色々なところで知り合った人たちに紹介と挨拶をしているのを遠目で確認した後、そっと帰宅しようと思い馬車が待機してある所に向かおうとしていた。
「フロストさ~ん!」
おやっ?凛様に直ぐに見つかってしまいましたね。
彼女も私に宿泊を進めるのでしょうか
「帰っちゃうのですか?それは残念ですが明日もお仕事なんですかね?」
どうやら村長に言われて私を引き留めに来たわけではなさそうでした。
「はい。行きの馬車の中で言われた事を私なりに整理したいなと思いまして」
「...。そうですか。フロストさんにとって良い結果になるといいですね」
と凛様はニコリと笑いながらおっしゃった。
そして、直ぐに隣にいる青年キリを紹介してくれた。
「フロストさん、改めてですが。キリです!」
凛様にそっと背中を押されたごく普通の青年キリが少し驚きながら凛様を見た後
「初めまして。フォミテ村のキリです。この度は結婚式の宣誓をしていただいてありがとうございます。」
ん?少し不貞腐れているのでしょうか?睨まれているような?
「キリさん、どうしてご機嫌斜めなんですか?もしかして私と急に結婚したのが...」
凛様が何かに気付いたように驚くと、キリさんは焦りながら凛様の肩を持って自分の方を見るように向かい合ってますね
「違うんだよ!もちろん僕も嬉しいよ。まぁ...色々段階を飛ばしているなと自分の不甲斐なさは感じてるけどね。その...司祭長様が思いの他素敵な人だったので...」
キリさんは最後の方の言葉に歯切れの悪さを感じますね...。
凛様は再びキリさんの言葉に何かを感じたようです。口元を押さえながら
「えっ、キリさんってまさか男性が?だからナガリさんとの結婚も了承したの?」
凛様は見事に誤解していますね...。楽しそうなのでもう少し二人の会話を見守る事にします。
キリさんの顔色が悪くなってきてますね。
「ちょっ!違うから。僕は女性が好きです!ナガリとはほらっほぼ命令みたいな感じで仕方なくだよ!ナガリなんて前日グダグダと愚痴を言いながらお酒飲んでたんだよ!」
「えっ、前日って昨日?二人で夜遅くまで...。初夜?こっちの世界って前倒しで初夜するの?」
「だぁ~!!!!だから、もう!」
キリくんは埒が空かないと思ったのでしょうか、突然凛様を抱きしめましたね。
えっ、別に私はかまいませんよ。教会ではもっと激しい行為と鉢合わせしたこともありますからね。二人の初々しい事。
まぁ~。人前でわざわざすることではないとは思いますがね。
神職とはいえ独り身には答えます。フフッ。
「お二人とも、もう大丈夫そうですか?私でよければ個別でお話しを聞きますが?」
私の声かけで二人の世界から抜け出した凛様は恥ずかしそうにこちらを見ます。
「すっすみません。とにかく、いつでもフォミテ村に遊びに来てくださいね!あっフロストさんって休日ってあるんですかね?」
「ええ、ありがとうございます。もちろん安息日はございますから。凛様に会いに行きますね」
私は無意識に微笑んでいたのか、キリさんの表情が再び曇りました。
ああ、そんなに凛様を強く抱きしめると苦しいと思いますよ。
「グエェ~」
ほら。すごい声を出してます。
「ごめん」 キリさんは小さく謝っていました。凛様はいいよって答えてますね。
「さて、それではお邪魔虫は退散させていただきますね」
「気を付けてね~!」
「今日はありがとうございました」
凛様とキリさんがそれぞれ声を掛けてくれたので私は軽くうなずくとそのまま帰宅しました。
馬車に揺られて到着したのは、ソラータ領主館です。
私は、凛様の傍使いとしてこちらに来ましたがどうやらお役御免になったようなのでこの先どうしようか少し悩んでしまいます。
「とりあえず、領主様に帰宅のご挨拶をしましょうか」
誰もいない客室で一人呟くと、部屋付きの侍女に領主様との面会を取り付けてもらうことにしました。
しばらくすると、執務室に案内されました。
引き継いだばかりの領主様は忙しそうに書類に目をやっていましたが、私が部屋に入るとソファーにかけるように言った後、お茶の準備をさせました。
「フロスト司祭長様、今日は凛様の結婚式の宣誓をありがとうございました」
若い領主は自分の事の様に喜びながら私にお礼をいってきます
「いえいえ、私も素敵な結婚式に立ち会えて本当に良かったと思っています。凛様のお相手のキリさんの驚いたお顔はそれはもう嬉しそうでしたよ」
「それは本当に良かったです。これで、私も心置きなく領の仕事を行うことができます。ところで、フロスト司祭長様はこれからどうされるのですか?」
領主は私の顔色を伺いながら質問してきました。
実は、私も考えあぐねているのですが
「そうですね...。どうしましょうかね...。」
思わず本音がこぼれてしまいます。
「もしよろしければ、こちらで引き続きソラータ領の司祭長になっていただけませんか?ちょうど我が領は司祭長をまだ任命していません。そこまで大きな領でもありませんでした。しかし、聖女様がお住まいになられる領になりますと、聖女様専属に対応していただける高位の司祭も必要になるのではと考えていたのです」
「...。もちろん王都に戻られて復職されるという事も可能だとおもいますが」
この領主は私と同じぐらい王家と親密な関係だった事もあり、慎重に言葉を選びながら私に選択肢を用意してくれているようでした。
「そうですね。少し考えてからお答えします...。と言いたいところですが、ソラータ領で私は神と聖女様にお仕えしたいと思います」
「そうですか!では、早速王様にその旨をお伝えいたします。聖女様関連だと、王様も受けざるを得ないと思いますしね!」
領主の欲しい言葉だったらしく、すぐに書簡を送りますと言った後、私たちは解散となりました。
私も、王宛てに個人的に手紙を送ることにしました。
もちろん、王宮で王にお願いされた件をお断りする事と私はこのままこのソラータで生涯を神と聖女様の為に祈り尽くしていくという内容です。
すなわち、それは私たちの関係が終わるという意味でもあります。
凛様のご指摘通り、彼への思いは敬愛なのか、ただの俗で言う愛なのか結局私には分かりませんでした。
ただ、公式の場で彼女と幸せそうに微笑んでいる姿を見ると胸の内になんとも言えない感情が溢れてくることが若い頃はあったので...きっとそういうことなんでしょう。
その日の夜に許しを乞われるように愛されても私の心は満たされなかったのはそういうことなんでしょう。
私は、領主の書簡ではなく魔法で手紙を飛ばしました。
公式な内容でもないですし、夜も更けているので王が一人の時に手に取ることができるでしょう。
さようなら、私の愛した男
翌日、領主様に別れの挨拶をし領主館を後にしました。
そのうち新しい聖堂を建築するとおっしゃっていましたが、今はこの領で一番大きい教会に私は身を置くことになりました。
久しぶりに我が家に戻ったような、心が洗われる教会内に身を置き深呼吸をした後そっと祈りを捧げました。
それからは、教会内でのあいさつ回りや私の仕事の引継ぎをバタバタとこなしていきました。ここの司祭達は珍しく自分の家を持っており仕事が終わると帰宅していました。以前は当番制で教会に泊っていましたが、その役目は教会内に住み込む私が担うことになります。
この領の教会に着任し数週間が経ちました。私も随分この環境になれ他の司祭たちともコミュニケーションも潤滑になり始めた頃でした。
夜、いつものように日誌や書類をまとめていると珍しくドアをノックする音が聞こえます。
もちろん夜の教会に入るには教会を守っている聖騎士達が許可しなければいけません。
「どうぞ」
私は入室の許可をすると、その日の聖騎士の班長が緊張した面持ちで失礼しますとい言いながら入室してきました。
「フロイト司祭長様、お客様をお連れ致しました。」
と言うとその客を部屋に入れるとすぐに出ていったのでした。
お客の名前を告げないなんて珍しいミスもあるものですねと思いながら、私は書類を片づけながらお席にお座りくださいと伝えました。
しかし、ソファーに座る様子はなく足音は私の執務机に向かってきます。
もしや、客を装った賊なのか?と緊張が走ります。
見えないようにゆったりした袖にペーパーナイフを仕込むとゆっくりと足音がする方を見上げると
「ティム!」
座っている私を抱きしめながら名前を呼ぶ人
「どう...して...」
私は動揺を隠せませんでした。
いつもは最高級の生地に身を包み、人の好い笑顔で懐柔し、王としてはイマイチででも私にはいつも優しく愛をくれる人
「王様?」
私の言葉はどうやら間違っていたらしく抱きしめた私の肩口で違うと首を横に振る
「イスト様?」
昔は、誰よりも読んでいた彼の名前を久しぶりに言いました。
「ああ、そうだ。あなたの愚かなイストだ」
私は驚きながら力をいれてイストを引き剥がしました。
「どうしてこのような場所にこられたのですか?公務はどうされているのですか?今頃王宮は混乱しているのではありませんか?」
私は矢継ぎ早に話しかけると、イストは私の頬をそっとなでる
「あなたに、ティムに手紙をもらったのだ」
イストは、その言葉の続きをこの状態で話すつもりはなかったようで私を抱き上げるとそのままソファーに向かい自分の膝に乗せたまま話を続けようとするので私はそれを拒否するために暴れるが、イストの力には及ばず再び抱きしめられそのまま話を聞いてほしいと言われた。
「形の残らない魔法の手紙だったので私が依頼した業務内容だと思ったら、ティムは私から離れようとする内容の手紙だった。」
「私は、聖女殿の動向が落ち着いたらあなたを再び王都に戻そうと思っていたのにだ!」
「イスト様...。」
「私は、私は許さないぞ!お前が私から離れるなんて!」
イストはそのままソファーに私を押し倒すと、私の両手を押さえ乗り上げ首元を顔を埋めながら
「思い出させてやる、お前と私の本来の関係を!!」
私は思わず嫌だ!嫌だ!と藻掻きましたが彼の方がやはり力が強く...。
「イスト、やめて...。」
私の怯える声にイストは気が付き顔を上げると
「泣かないでくれ、ティム」
それまで力任せに押さえつけられていた私の片手を外すとそっと流れている涙を拭い、それをイストは自分の口元によせる。
そして、イストは立ち上がると私を座らせ自分は跪いて私の両手をとった。
「あんな、魔法の手紙一つで私たちの関係が無くなってしまうのは許せなかったんだ」
すまないと言いながら両手を自分の額に押し当て謝罪をする。
王様なのに、何をしてるんですか!
「おやめください。ちょうど、良いタイミングだったんです。」
今度は私が跪いているイストの頬をそっと触れながら
「イスト様がおっしゃる本来の姿に戻るだけです。王様とソラータ領の司祭長という立場に...。イスト様は国を見守り、私は微力ながらこの領の信者と聖女様を見守っていきたいと思います。」
絶望的な表情のイストは騎士としてこの領にやってきたのでしょう。その姿もとても素敵でした。少々寂れていましたが。
私の決心が揺るがないものと思ったのかイストは立ち上がると机の上に手紙をそっと置き何も言わずに部屋を出ていきました。
ドアを閉める瞬間のイストの表情は迷子の子どものようでした。
大丈夫ですよ。イスト。
私も同じぐらい苦しいです。
でも、やはり...。
「本来の姿に戻りましょう」
私は席を立ち、イストが置いていった手紙を魔法でそっと燃やしました。
さようなら私の愛したイスト
ティム へ
この手紙を読んでいるということは、私達の意見が違いそのまま別れてしまったのだろう。
ティムにこうして私信の手紙を書く機会なんてあっただろうか。始めはティムが魔法騎士になることが許せず神職への道を導いたつもりが、ティムの私への敬愛がそれ以上の存在になるのに時間はかからなかった。しかし、この思いを理解した時、お互い後戻りできない立場になってしまった。私は王妃を娶り王にティムは王宮の司祭長に...。でも、私の想いをティムは受け取ってくれた時は本当に幸せだった。このままティムを今の仕事から外し私の宮の一つに閉じ込めてしまいたいぐらいに。
しかし、先王が無くなる時に聖女様が降臨されると教えられティムを囲う事を諦めたよ。
きっと、私以上に神と聖女に恋焦がれているティムに聖女の傍にいる役目を奪うことはできなかった。だから、聖女の近くにいながら私と離れることができないように色々考えたのだが、私の判断は間違っていたのだろうか?
いっそのこと、聖女がいなくなれば良いのだろうか...。
また、私は愚かな考えを思い浮かべてしまう。
それを、止めることができるのは、王妃でもなく王太子でもなく、ティム、あなただけなんだ。
どうか、どうか、私に誤った判断をさせないでくれ。
愛してる。いつまでも私の傍にいて欲しい。
イスト・リムザス
最後までお読みいただきありがとうございました。




