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ある日村に聖女が舞い降りてきたのだが...。  作者: 鈴木 澪人
本編

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15/27

フアナとソラータ領と後始末

 翌日体調を取り戻したフアナと一緒に朝食を取っている時に、午後のお茶の時間に昨日の顛末を説明したいと言われた。


「もちろん大丈夫だよ!それにしてもフアナさんが元気になって本当に良かったよ。なんか、本当に大変だったよね」


食べ終わり、食後のお茶を飲んで軽い食休みをしながら凜は昨日の出来事を思い出した。

フアナもナプキンで口元を拭いた後


「本当にリン様に助けていただいて良かったです。仮にあの書簡を出したとしてもあの方達の思惑通りにはいきませんが、手間と時間が無駄にかかるなとは思いました」

襲われたことに対してよりもその後の事後処理を気にしていたフアナに驚きながら


「フアナさん!そこはもっと自分を大切にしないと駄目だと思うよ」


真剣に凜は注意した。


「確かに、聖女様のお言葉通りですが、パトリック嬢も王子妃として有事の際の対応を学ばれているのですよ」


凜のとなりでティムが軽くフアナのフォローを入れた。


「そうなんだ〜。私のイメージのお姫様って攫われては髭の生えた人に取り戻してもらうってイメージだったよ」


凜の言葉にフアナはえっという表情になり


「リン様の国の妃はものすごく価値のある方なんですね。私にはそこまでの存在意義はないですね…。」


「残念ながらパトリック嬢の感覚は正しいと思われます。価値がなくなりしだい邪魔な存在になってしまうのが我々ですからね」


フアナとティムはお互いの言葉に納得しながらウンウンと頷いていた。

凜は気まずくなってそっと立ち上がると


「じゃあ、私はこの辺で。午後からの報告待ってます!」


と言いながら食堂の間を出ていった。


フアナとティムはしばらく沈黙を続けた後


「この件も、王様に報告するのですよね?」


とフアナが話始めた


「さて、私は聖女様に仕える一介の司祭ですから。王様に報告などそのような大それたことは…。」


ティムが微笑みながら話をそらすと


「いいんですよ。フロスト司祭長様から直接説明して頂いた方が早く正確に伝わりますからね」


フアナも負けじと微笑みながら言葉を返した。


「お嬢様、担当の者たちが執務室に集まって待機しています。そろそろお時間が…。」


場を読んだフアナの専属騎士長がティムに聞こえるように報告する。

「私がお時間を取らせてしまったようですね。それでは、失礼させていただきます」


ティムも席を立ち上がりフアナにお辞儀をするとその場を離れた。

気まずそうにフアナを見ながら


「余計な気遣いを申し訳ございません」


と謝罪すると、フアナは立ちながら


「私が牽制するように悪い雰囲気にもってしってしまいましたから、助かりましたよ」

と言いつつ凜の部屋の専属侍女が待機していたので


「リン様がつつがなく時間を過ごせるように対応してくださいね」と伝えた後部屋をでた。


その後、騎士長が侍女に近づくと


「フロスト司祭長との接触に気をつけ、何かあれば直ぐに連絡を寄こすように」

とフアナの言葉に付け加えた。


「かりこまりました」

専属の侍女は深く頭を下げて退出した。


フアナが食堂の間を出ると、ドアの近くに副騎士長とソラータ領の侍従長が待機していた。

副騎士長は騎士の礼をした後、そのままフアナの後ろに付いた。侍従長はフアナの斜め後ろに付き、領主の館について軽く説明を始める。


「おはようございます。体調が芳しくないところ誠に申し訳ございませんが…。」


と言いながら一枚のリストをフアナに渡した。行儀が悪いなと思いながら執務室に着くと内向きの作業をいったん保留にしなくてはいけない為、侍従長が苦渋の判断で今報告にきたのだろうと思った。


フアナがリストを確認しながら歩いていると


「昨日のうちに、処分対象になった者のリストです。主に元領主代行のブース家から来たものとブース派閥の者たちとなっております」


領主館の三分の一の人数が対象になっていたので、フアナはこめかみを押さえながら小さく溜息を付いた


「館の規模が大きいからこの人数が一気に抜けると大変ですね」


と呟くと


「寛大な対応をいたしますと、いずれは綻びが大きくなると思われます。粛清するにはいい機会かと…」


物騒な発言をする侍従長に驚きフアナは一瞬足を止めた

「あまり聞こえの良くない言葉があったわよ。気を付けなさい」


と言いながらも、この侍従長にそこまで言わせる元領主代行も一体何をしていたんだと思った。


「申し訳ございません。元領主代行があまりも私利私欲に走っていたのでその被害が一部の使用人にも及んでいまして思わず」


侍従長が言葉を濁すと


「その件については追々聴取するわ。重複確認をしてからこのリストの者たちの処分を決定します。それまでは各自の部屋に謹慎。もちろん謹慎中の給金は支払いません。しかし、食事は提供するように」


フアナの言葉に侍従長は頭を下げて了承した。


「それと、貴方に一時的に家令の権限を与えます。もし、徒党で逆らうものがいたらその場で解雇するように。」


「はっ。かりこまりました。」


「もちろん、貴方が越権行為をした場合はあなた自身が解雇対象になることも忘れないように」


と侍従長に伝えると、既に追いついてきた騎士長と共に執務室に入り副騎士長はドアの前で警備を始めた。


侍従長は閉まったドアに向かい深いお辞儀をした後、自分の職場に向かっていった。



 執務室に入ったフアナは、机に山の様に置かれている書簡を確認すると「んっ」と首を傾げながら不思議に思った。


「昨日、私が連れてこられた時には無かった書類がどうしてたった一晩でこんなに増えているの?どうして?」


と不思議に思いながら席に着くと文官長が慌ててフアナの執務机の隣に立ち、自己紹介をし終えた後説明に入った。


「はい、元領主代行が今まで放置していた案件です。私の権限で決済できていたものは対処していたのですが、どうしても領主決済の判断まではできなくて」


と申し訳なさそうに言った。


「そうですか。分かりました。とりあえず昨日の事件を決着させてからになりますが少しずつ消化していきましょう」

さすがに昔から妃として教育されていたフアナもこの仕事量を見ると思わず溜息がでそうになった。


 少しでも早くリュシアン様にこちらに来ていただけないか相談した方が良いかもしれませんね。


と思いながら、それを理由に大好きな人に早く会えるかもしれないと思うと心が少し浮足立ってしまいそうなフアナだった。


「早速ですが領主様、昨日の件についての判断とご指示をお願いします」


軽い現実逃避をしていたフアナに、ソラータ警備隊長が現実に連れ戻してくる。


「そうですね。早めに対応した方がよさそうですね。」


フアナは昨夜目が覚めた時に頭のなかで整理していた内容について話し始めた。


「まず、元領主代行のカリッド・ブースには当主を退きソラータ領にある静養所にて一時的に静養していただきます。その後の処罰は次の当主である長男の人に決めてもらいましょう。次にブース家の家令マーロン・コーは聖女様に施された魔法封印を施したまま一家で孤児院の運営管理をしてもらいます。これらの処分に対しては聖女・リン様の許可を得てから発動させます。」


フアナの処分内容にソラータ警備隊長は表情を曇らせる


「少し処罰が甘くないですか?」


「そうですね。コーに関してはそう言わざる得ないかもしれませんが、多分聖女様が肉体に対しての処罰を嫌悪する傾向がございます。そして、監視をするという意味でも有効でしょう」


「そして、ブースに関してはわざわざ私が手を下す必要は無いと判断しました。身内の恥はご自分で対処なさってと思っています」


「はっ、かしこまりました」

フアナの考えに納得した警備長が敬礼をする。


「それと、侍従長がブースの息の掛かったものを洗い出してくれました。警備隊の方でも同じ作業をするように。」


「それに関しては大丈夫だと思われます」


「どうゆうことかしら?」


警備隊長の意外な言葉にフアナは驚いていると少し言葉を選びながら


「実は、元領主代行はかなりの人間不信でして、特に警備に関することはコー殿一人でほぼ対応していました。近くに警備隊を配置しておりましたがある一定の距離までは近づかせませんでした」


「…。そうでしたのね。ですが、一応領主が交代することによって忠義の対象者が変わります。面談し不本意だと思っている者は直ぐに警備隊を抜けるように促しなさい。それと同時に不審人物も念のため洗い出すように。ここにいる私の専属を連れていくといいわ」


フアナが騎士長に目配せをすると頷いた後


「この領についてはまだ初心だが人を見る目が少しは役に立つと思う。よろしく願う」


といいながら自ら手を差し伸べてきたので


「こちらこそ、貴殿に比べると経験不足は否めない。ご協力感謝する」


お互い堅い握手をした。


「これからこの領地の警備は貴方たちに掛かってきます。今の領主は私ですがいずれは第二王子のリュシアン様が治める地域となります。気を引き締めて精進してください」


「「はっ、かしこまりました」」


二人は声を揃え返事をした。


「これで、この件は落ち着くかしら。必要な書類を作成し落ち着いたら各自昼食を取る様に。その後、私はリン様にこの件の説明をします。おそらく説明を終えると次の日にでもフォミテ村に向かうとおっしゃるのでリン様の専属護衛の魔法騎士との連携を忘れないように」


警備隊長が魔法騎士という言葉を聞いて顔を顰める。


「領主様、その…魔法騎士に任せても大丈夫なのでしょうか?」


凛の魔法騎士に対する寵愛はまだ地方までは広がっていない。

フアナは姿勢を正すと


「警備隊長、そのような発言はリン様の前では決してしないように。リン様は王宮での魔法騎士の処遇に心を痛めて全員引き取りました。そして、この後彼らの力を引き上げると思われます。侮っていては痛い目をみますよ」


その言葉に警備隊長は驚き


「聖女様自ら指揮されるのであれば…。そうですか」


「家令の魔法を封印するお力があるのです。きっと何かお考えがあるとは思いませんか?」


フアナの問いに警備隊長はその件を思い出した。


「これは、私の稚拙な考えを申し訳ございません」


「しかし、警備隊長ですらそのように考えてしまうのであればもう一度魔法騎士についてきちんと警備隊に説明することをおすすめする」


騎士長が警備隊長に進言すると、頷きながら


「そうだな。午後から隊ごとに集めて聖女様のお考えを説明することにしよう」


それでは、失礼すると警備隊長は礼をした後、執務室を退出した。


「これで、リン様にご報告ができそうね」


フアナは珍しく椅子に座ったまま背を伸ばすと


「お嬢様」と騎士長が軽く注意した。


「だって、さすがに疲れたもの。これぐらい許してよ」

と珍しく砕けた言葉で話した。


騎士長は、そんなフアナを見てフッと笑うと


「そうですね。さすがにこの量の書簡を見ると息抜きも必要になりそうですね」


「あっ、もう。見ないように目をそらしていたのに!」


とフアナが騎士長に文句を言うと


「…。本当に申し訳ございません」


今まで一緒にいた文官長が蚊の鳴くような声で謝罪した。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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