凛と移動
あ~、この静けさ、出発してそんなに時間が経ってないのに私無理かも~。
凛はチラリと対面に座っている男性を見ながら心の中でぼやいた。
絶対この人私を見張れって言われてるよな〜。
そしてどうして、王様とこんなに拗れた恋愛関係になってんのぉ!
凛は審判者として神から色々な能力を与えられていた。
そのうちの一つが相手の情報の可視化だった。
知りたいことを知りたいだけ知る。
便利な能力だったが凛は必要以上に使用しなかった。
えっ、だってしんどいもん。脳に情報がダイレクトアタックするんだよ。
ーーーティム フロストーーー
【補足】
現王の幼馴染。魔法の才があったが、王により神殿に匿われる。それ以降神殿と王様に忠誠を誓っている。聖女降臨の為神殿に取り込もうとするが、王に聖女の傍で見守って欲しいと懇願され了承した。王とは愛人関係(ただし、愛は無く体のみだと思い込んでいる)実際は愛されているんだよ。
そう、こうゆう内容がダイレクトアタックするんだよ。
知りたくなかったよ。特に最後の部分は女子高校生には刺激が強すぎて無理だよ。
JK(元がついちゃったけど)がイメージしている恋愛って、ドキドキ・キュンキュンするもんだよ。
そして、友達とかの恋愛話を聞いて「きゃぁ〜、それっていい感じじゃないの」とか「もう、告白しちゃいなよ〜」とか言い合うんだよ。
もちろん、フロストさんの友人ではない私は決して、決して彼の恋愛の話を聞く事はないんだけどね。
フロストさんは、まだ仕事を引き継ぎきれていないのか束になった紙を一枚ずつ読み込んでいた。進行方向と逆に座っているのに文字を読んで酔わないのかな?
凛は暇なのでひたすら車窓を眺めていた。
時々目が合う魔法騎士にペコペコお辞儀をすると、相手も同じ回数お辞儀をするのでやめ時を伺っていると
「聖女様は、本当に彼らの事を気に入っているのですね」
ティムがいつの間にか凛の方を見ていた
「あっ、気に入るとかそういう感じではないんですけどね。ただ王宮や騎士達の対応があまりにも理解できないし、見ていると気分が悪くなりますよね」
どこの世界にもどうしても馴染めないタイプの人がいるのは理解できるけど、意図的に一方的に差別するのはどうかとおもうんだよね。
とは言えずに
「感覚の違い?なんですかね?」
とだけ答えた。
「そうですか、彼らは聖女様に見つけられて良かったですね...。」
ティムも凛と同じ様に車窓を見ると、挨拶していた魔法騎士達の表情が堅くなり前方を向き始めた。
「...。どうやら私は嫌われているみたいです」
ティムは凛に苦笑いをした後、再び手に持っていた紙を読み始めた。
確かに、自分もあの中に入る予定だったもんね~。それがこっち側になってしまったら複雑な心境になってしまうって事か...。ま、私にはそこまで介入する必要はないからいっか。
それからの二人は会話もなくフアナと合流する街まで馬車に揺られた。
フアナと合流する予定の街は思いのほか大きい街だった。
王宮に行くときには通らなかったのかもしれないと凛は思った。
もちろんフアナの乗っている馬車も目立ちすぎないように黒塗りのシンプルな馬車だった。
この街の代表の館で合流したフアナは初めて会った時よりも元気そうだった。
「リン様お久しぶりです。」
綺麗なカーティーをしてもらったが、次からは大丈夫と凛が伝えると
「ありがとうございます」と微笑みながら応えてくれた。
フアナとティムを凛が間に入って紹介したが「御無沙汰しております」と言っていたのでお互い知り合いだったようだ。
「では、ここからはフアナさんの馬車に乗って移動しますね。」
凛はティムにそう告げると「分かりました」と言いながら元々乗っていた馬車に乗り込んだ。
魔法騎士達が集まっていた場所に凛が向かうと取り囲むように集まってきた。
「私は、今からフアナさんの馬車に乗りますが、皆さんは引き続きフロストさんの馬車の護衛をお願いします」
「はい、分かりました」
ベンが皆の代表になって答えた。
凛は少し考えた後
「もし、フアナさんの護衛の騎士に何か嫌なことをされたら教えてね。っていうか分かる様に魔法をかけさせてもらうね」
凛は軽く指を振るとその場にいた魔法騎士達がビクッと震えた
「あっ突然魔法をかけたから不快になったらごめんね」
凛が謝るとベンは驚きながら
「いえ、一応私達は魔法に対する防御を各自薄くかけていたのですが見事に魔法にかかったので驚いただけです」
と腕をさすりながら説明してくれた。
「まぁ〜腐っても聖女サマってやつみたいだからね!このまま一気に目的地まで行くからみんな気を付けてね!」
凛の掛け声に魔法騎士達は一斉に
「はいっ!」と返事をした。
凛は、ウンウンと満足げに頷きながらフアナの馬車に乗り込んだ。
「俺たち、本当に大切にされているんだな...。」
魔法騎士の一人がそう呟くと
「ああ、だから俺たちは聖女様に付いていくって決めたんだろ」
ニヤリと笑うと各自の持ち場に付くようにベンは指示を出した。
※※※
「おまたせ〜。フアナさんごめんね。むちゃなお願いをそちらの騎士さん達にしちゃって」
凛はフアナの馬車に乗り込みながら謝る。
フアナは首を横に振りながら
「いいえ、本来ならばそれが正しい行いのはずなのです。なのに、このような風習を私達が作ってしまったことがいけないのです」
凜は街の代表の館でフアナの騎士たちに魔法騎士達の対応を同じ騎士として接して欲しいとお願いしていた。王宮の騎士団の事を思い出すと念の為と思ったからだった。
しかし、フアナ個人の騎士達だったため予め徹底した再教育をしてくれていたようだった。
凛に対しても、凛の魔法騎士達に対しても同僚の様に対応してくれていたのだった。
凛は、絶対フアナさんの方が王妃様に向いているのにと思ったが心の中にそっと止めておくことにした。
しかし、凛の表情には出ていたのかフアナはフフフと笑った後
「私は、幼い頃からそのような教育をずっと受けていました。人の上に立つべき者を支える教育です。今は、リン様のお力になれれば幸いだと思っています」
「もう、いっそのことフアナさんが王様になっちゃいます?」
凛が軽い気持ちで声を掛けると
「いいえ、できればあの方の近くで穏やかに暮らしていきたいのです」
フアナはそういうと頬に手を置きその人を思い出していた。
凛はそんなフアナをウンウンと頷きながら
「やっぱり恋愛はこうじゃなくちゃいけないと思うの!」
と嬉しそうに言った。
でも、けっしてフアナさんとフロストさんを比べているわけじゃないからね。
フロストさんも幸せになって欲しいんだけどね。
楽しそうにしていた凛が急にシュンとなったのでフアナはこれからの事が不安になったと勘違いした。
「大丈夫ですよ。ソラータ領主代行を私名義に変更した書簡を持ってきております。これを見せれば相手は、本来の一貴族に戻りますからね」
フアナさんが少し胸を上げて「任せてください」と照れながら言ってくれた。
生粋のお嬢様がする態度ではないのに自分を励ます為にがんばってくれているフアナさんに凛は少しキュンとなった。
これは、もう嫁にするしかないな...。
凛は動き出した馬車の車窓を遠目に見た。
凛は何でもありな子です。
最後までお読みいただきありがとうございました。




