鬼頭 凛(きとう りん)
【前回のお話】
王様と司祭長のティムは大人のドライな関係だったが、実は両片思い。(王様既婚者ですしね)
リンと共にティムは僻地に行っちゃうから最後は想いを添い遂げて...。
王様は聖女降臨の理由を知っていますよ~。もおまけ程度につけときます。
「ねえ、お母さん。お母さんはどうしてお父さんと結婚したの?」
先に体を洗った凛がお風呂につかりながら母親に質問した。
母もお風呂に入ると
「う~ん。そうね~。一目惚れからの猛烈なアタックをしたからかな?」
「ひとめぼれ?」
お風呂に浮かぶアヒルを目で追いながら理解できなかった言葉を復唱した。
「フフフ。そうよ。初めて大学で見かけた時に『この人素敵!』って思って。」
母親はもっと話したそうだったが、りんの顔が赤くなってきたのですぐにお風呂を出た。
お風呂上りに凛はジュースを、母親はお茶を飲んでいると
「ねぇねぇ、さっきの話の続きが聞きたいよ!」
と凛が母親におねだりしていると
次にお風呂に入っていた兄が冷蔵庫の牛乳を取り出しながら
「何の話してんの?」と興味深そうに会話に入ってきた。
「お母さんの結婚した時の話~」
凛は嬉しそうに兄に報告する。
「うげ~、よくそんな話を聞けるな~。俺は無理~。」
と言いながらコップに牛乳を入れると凛の隣に座りだした。
「え~、お兄ちゃん『うげ~』じゃないの?」
素直に質問した凛に兄はスマホを取り出しながら
「まあ、聞いてあげてもよいかなとは思う」
とごまかしながら母親の話を聞く準備をしていた。
「あらあら、ウフフ。そんな大した話じゃないわよ」
母親はお茶を一口飲むと
「大学でお父さんを見かけた時、素敵な人だな~って思ったの。すると不思議お母さんが興味本位で入ったサークルの先輩だったのよね。そのサークルをきっかけに仲良くなって、二人で遊びに行くようになって、お付き合いをするようになって、プロポーズをしたのよ」
「へぇ~お父さん積極的だったんだな」
いつの間にかスマホを見るのをやめた兄が母親の話に入ってきた。
「ん?違うわよ凪。告白もプロポーズも母さんがしたのよ?」
「「えっ?」」
凛と凪は思わず同じタイミングで声を出した。
「イヤ、母さんそうゆう事は男からするもんだろ~」
とヘラヘラしながら続けると母親は少し低い声で(この声の時は少し怒っているので要注意なのだ!)
「凪、何事も決めつけてはいけないと思うの。それに、その時はお父さんの事を独り占めしたくて必死だったのよ。ほらお父さん、かっこいいでしょ?」
母親はその当時の父親を思い出したのか頬に手を置いて思い出してニヤニヤしていた。
凜から見れば母親も十分美人さんだと思っていた。美男美女から生まれたのに凛はそんなに自分が美人だとは思わなかった。
ちなみに、不本意だが兄は綺麗系男子だ。(見た目だけだけどね!!)
凛は性格が男前だと友達によく言われていたが、あまり嬉しくない誉め言葉だよ!といつも心の中で思っていた。
「でも、今ではお父さんの方がお母さんの事が大好きって感じだと思うけどな~」
凛はストローでジュースを飲みながら今の状況を話すと
「えっ?そう?お父さんってお母さんの事好きそう?そう...。そっか~。」
「...。母さん、少し怖いから。子どもの前でして良い表情じゃないぞ」
「あら、ごめんなさいね」
確かに、凛と凪から見ると父親は母親を何よりも優先しているように見えた。
さすがに、自分達が怪我とか病気の時は例外だけど。
「俺も、そんな相手が現れるのかな~」
異性に興味を持ち始めている兄は少しだけ想像したが急に体を震わせて
「やっぱ無理、女子怖いもん。」
と言うと残りの牛乳を一気に飲んで自分の部屋に戻っていった。
「私も、『ひとめぼれ』とかするのかなぁ~」
凛も足をブラブラさせながら少し気になっているvtuberを思い出していた。
「そうね〜。凛も凪もお父さんとお母さんの子どもだから一目惚れして良い人を私達に紹介してくれるんじゃない~?」
嬉しそうに母親に言われる。
「あっでも、そのパターンだったら、お兄ちゃんは一目惚れされてグイグイされて、溺愛するのかな~」
自分の兄が恋人に甘々になっているのを想像した凛はうわぁ〜という表情をした。
兄妹間では想像してはいけないジャンルだったのかもしれない。
「凛ったら溺愛なんて言葉知っているのね...。」
母親は呆れた口調で聞いてくる
「うん!この前、友達がおすすめしてくれた無料漫画に描かれてたよ!よく考えれば今のお父さんとお母さんみたいな感じかも!」
それは、それでどうなのかしら?と少し不安そうに母親は呟いた。
「とにかく、凛も好きになったらグイグイいって『溺愛』しちゃいなさいよ~」
母親は冗談半分のつもりで凛に言ったが
「は〜い。がんばって『溺愛』しま~す。」
小学生の頃の母親の言葉はどこか至上命題のようなものであった為、異世界に行っても達成すべき事になっていた。
ちなみに、凛が高校二年生の時に大学四回生の凪が卒業・就職した後に結婚すると言って紹介された彼女は、何というか物凄く...。男前で...。『私が凪さんを幸せにします!』と鬼頭家で宣言していた。
その時の兄の表情は昔兄が言っていた「家族の前で見せる表情」ではなかった。
デロデロだよ!怖いよ!
強烈な兄の彼女を紹介してもらった凛はそろそろ自分も『一目惚れ』とかやらを経験してみたいのだが、男女とも友達はできるが溺愛対象は現れなかった。
「チッこのままでは凪に負けてしまう」
幸せそうな兄に少しうらやまけしかんな感情を抱きながら学校から帰っていると
遠くから誰かが叫んでいた。
「危ない!」
突風で静かに建物の壁の一部が剥がれ落ちてきていた、凛が上を確認した時は既に遅く
「あっやっべ」と思った瞬間意識が無くなった。
※※※
死ぬときって場合によるかもだけど一瞬だったんだな〜。
と凛は感心しながら目を覚ました。
最後の瞬間と同じ体勢だったらしく地面に倒れていた。
とりあえず起き上がるとそこは何もない白い空間だった。
平衡感覚がやられそうだなと思いつつ凜は立ち上がり周りを見渡していると
「鬼頭 凛さんですね」
と突然頭の上から声が聞こえてきた。
「えっ。あっはい。」
凜は声が聞こえたような気がした方向を見るがそこには誰もいない。
ちょっと怖くなってきて思わず自分の腕をさすっていると。
「ちょっと、私は心霊現象とかじゃないですからね!」
目に見えなければお化けと同じじゃんと思った。
「も〜。そんなこと言わないで~」
と言った瞬間白い部屋は見渡す限り色とりどりの花が咲く草原へと変化した。
「じゃ〜ん。凛さんの脳内イメージを表現してみました。お花畑ですね!」
と嬉しそうにコスプレか漫画でしか見たことのない恰好した女性が目の前に現れた。
「私の脳内お花畑って、初対面に対してすげぇ煽ってくんな」
と呟くと
「コワイよ。これから聖女様になるんだから、もっと穏やかな感じになって!」
と言いながら、自分と凛の分の椅子を出現させると座る様に言われた。
とりあえず、この正体不明の女性(凪兄の彼女よりヤバそうな人)のいう事を聞く。
「鬼頭凛さんは、1週間前に残念な事故に遭いまして、今までいた世界とは縁が切れてしまいました。そして、私が統べる世界に審判を仰ぐ国が出現してしまいました。残念ながら私自身が良い国へと導ければよいのですが、立場上無理なのです。そこで、凛さんに私の代わりにその国を見て今後どうすべきか判断して欲しいのです。」
「そんな、私が判断していい内容じゃないですよ!色々な人の人生に関わるんですよね?」
「はい。凛さんがこの国は必要ないと判断すればその時の王が処刑されるでしょう。逆にこのままもう少しがんばれば持ちこたえるのではと判断すればそのまま次の子孫に受け継がれます」
正体不明の女性は背もたれに体を預けると
「貴方は、多少の濁りがあっても判断できる倫理と知識を持っていると私は考えています。貴方の命が脅かされた場合は即時にその国は無くなるでしょう。」
「なんか、私の存在が重いんですけど?」
「もちろん、色々な向こうの世界の人を巻き込んでください。王だけは貴方の真の価値を理解しています。理解していても扱いを誤ってしまう時は...。ね?」
「まあ、元居た世界には戻れないし、その世界に行きますけど、そんなにきちんとできませんよ?」
その言葉に女性はニコリと微笑み
「ありがとう。どうか私の愛しい子達を幸せに導いてあげてね。なんか向こうに行ったときに便利そうなものは全部詰め込んどくから」
「最後は、旅行の時のおかんの発想になってますから」
「うふふ。これからは貴方も私のかわいい子どもになるのですもの。張り切っちゃったわよ」
凛は女性の方を改めて見ると
「出来るとこまでがんばってみます。審判するって事は完全にアウトじゃないんですよね。このまま続けられる様にお手伝いしてきますね。
「やっぱり凛さんにお願いしてよかったわ。それじゃあ、向こうの世界に送るわね。眩しいから目を瞑ることをお勧めするわ!」
女性が手を上げると、元の白い空間に戻り凛の足元が光っていく
「痛くないからね~。そぉ~とそぉ~と送るから」
目をつぶった凜は思わず
「もぉ〜、一思いにやっちゃってください!神様!」
「あらそう?じゃあ、いってらっしゃ~い」
凜は強い光と共に瞬く間に消えた。
「あっ、向こうで素敵な彼氏を見つけられるといいわね~ってもう行っちゃったか」
神様は凛のいた場所を見つめながらそう呟いた。
※※※
目を瞑っていただけだと思っていた凛は、どうやらそのまま気を失っていたらしい。
目が覚めてその家の主を初めて見た時
凜はこう思った。
『これが一目ぼれや~!』
最後までお読みいただきありがとうございました。




