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靴はここまでの道のりの半分でもう保たないだろうと思ったので、私は頭を働かせる事にした。
生木の粘る樹皮をナイフで長く剥いで靴底と甲を1枚で覆い、何かに使おうと買った強度のあるガット紐で縛ったのだ。
靴を二重にするこの工夫は少しくうまく行き、まだ私は靴を履いている。
そうして広大な森をどこまでも貫いてゆく不思議な細い途切れぬ道を歩いていた。
霧雨が降るとき、被っているつば広帽と外套は膠に固められた表面で湿り気を防いだ、旅の支度と言えばこのくらいで、他は薬や火種や水を少し持つぐらいしか余裕はない。
行きずりの旅人に声を掛ければ、自分が書き溜めた道中の秘訣を手帳に書き写すよう、知恵の神への信仰のために自ら勧めてくる。
「与えれば与えるほど得られる」
これは正しい教えとして信じられていたし、実質的なモノのやり取りではないだけに行いやすかった、また、この世界は元から危ういものがどこにも潜んでいて、教え合うのは人間が生き延びる有効な方法だったのだ。
木の実や草花についての知識が充分になると、この世界の自然がとても豊穣であり、原野に生きるために欠けたものが無い事が分かった。
地の果てまでも、そこに何が隠れているかを知っていれば、行き倒れる心配は無い。
この世界は加護に溢れている、運命がある。
「生きよ」と言われている。
神話を語り始めた頃の人間が、信じていたように。
そんな訳で、今は軽装のまま長いこと道を歩いている。
雨止みの霧が苔むした岩から立ち登り、白い微粒子が羊歯の芽吹きのように渦巻いて日差しに舞い上がるころ、その淡く濁った空気の奥に、石を抱えた小鬼たちの姿が陰影に仄めかされた。
私は目を凝らしたがそういう存在の姿は肉体の目ではよく捉えられないもので、歩いて次第に近付くに連れて奇妙に心を揺さぶる気配ともども消えて行く。
長い長い、然し途切れることのない旅のための道を歩いているとそれは何度も目にするのだ。
大陸を横断する、どこまでも深い人里離れた森の中でも、そこを走る小道はいつも健在だった、私達は道の神のためによく供え物をした。
視界の端で、虚無に近い静寂の縁で、精霊や神やその他のものが絶えず世界を護っているらしい。
どこまで追っても現実とその外の間で、彼等は息づいている、探求のために何かをする人は何を追うにせよみなそこを夢見ているのだ。
他界との淵の彼方へゆかんと。
天上で視線をくれた方よ、その呼び声を信じて。