2 あいしー
前回のあらすじ
廃墟にいた。
夢を見ていた。
あの状況で夢を見るとは、自分でもおかしいと思う。
その夢は俺が人を殺しかける夢だった。
あの死体を見たからなのか場所はその付近だった。
夢だからなのか体力も筋力も脚力も全てが化け物じみた力になっていた。
「はっ」
俺は椅子に座った状態でいる。
縄に縛られている。
「おはよう」
元気と余裕を足して二で割ったような、声色だ。
夢で見た、殺しかけた女性に似ている。
茶色がかった、肩にかかるくらいの髪の長さ、前髪はぱっつんになっていて、少し幼げに見える。
しかし背丈は俺と同じに思え、年が近いと思われる。
そして、その手にはサブマシンガンが握られている。下手なことは考えないほうがいいか。
「おはよう」
その声に緊張や恐怖を写さないよう、気をつける。
「一応、応答はできるのね。怯える人が多かったから、、二人しかしてないけど。」
俺は二人も同じ境遇にあったのかと心のなかで哀れながら、女に聞く。
「おう、何でも聞いてくれ」
自分でその発言はおかしいだろと思いながら、恐怖と怯えに耐えている。
「じゃあ、なんでここにいるか分かってる?」
俺は言葉の意味がわからなかったが、とりあえず頭に出てきた言葉を言う。
「いや、分からない」
「呆れた」
態度を見るに本当に呆れているようだ。
ほぼ初対面なのにここまで言うとは、デリカシーが足りないんじゃないか?と出そうになったが、自分の状態を思い出すと慌てて飲み込んだ。
「眼神に覚えは?」
何だそれ?と思ったし、覚えはない。
「知らない」
女は大きいため息をつく。
「眼神」
女は誰かを呼び出すように虚空に話しかけた。
『軽々しく呼び出すんじゃない』
その一言とともに虚空から白く糸のように細長いなにかが現れた。
「うわっ」
思わず口から出てしまう。
今の状況的にこの白いのが眼神なのだろう。
『で、要件はなんじゃ』
さっきは驚いて気づかなかったが、直接頭に話しかけていたようだ。
「この子知らないけど?さっきの二人も」
『わしも忙しんじゃ』
「それが仕事じゃない」
『うむー』
俺をよそに眼神と女は話を続ける。
『そいで、お前は誰じゃ』
完全に蚊帳の外だった俺に話しかけてくる。
「それ、私も知りたかった」
女の緊張がとけたのかさっきとは違う口調で話しかけてくる。
『なんじゃ、ぬしら互いの名すら知らんのか』
『フレンドじゃないんかの?』
びっくりした様子だ。
俺の状況を見ていっているのか、甚だ疑問に思う。
俺も緊張が少しとけたのか、先程より頭が回るようになった。
「目黒、亜衣」
ん、?女の目が少し輝いたような。
『あい、わかった』
そう言ってプツンと通話が途切れたように、あの白いのが虚空に吸い込まれていった。
俺が今考えるべきことは、、、。
なぜ俺が殺されていないのか?あの蜂の巣はどこにいったのか?あの白いのは何なのか?それを知っているこの女は何者なのか?話を聞くに俺がここにいる理由にも関わってくるか?
あああぁぁぁぁぁぁ考えることが多すぎる。
まずは殺されていない理由は、二人に同じことしたって言ってたし、まぁ、その二人と同じ理由だろう。
あの蜂の巣は、、、。処理されたんだろう。う、ちょっと気持ち悪くなってきた。
あの白いのは、、、。神の名を冠してるってことは多分関わってくるのはホルス神、とかか?
う〜んあの女は何者だ?神(?)にタメ口だし、、、なにか知っているのは間違いないな。
生き残ったら絶対関わらない。
とりあえず、状況を整理できた。そろそろ眼神(?)も戻るだろ。
俺はそう思い、自分の思考から現実へ意識を戻す。
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