表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/86

77話 先輩、遊園地デートです!4

77話 先輩、遊園地デートです!4



「ふぅ、楽しかったぁ! えるは怖くなかったか?」


「はいっ! 先輩が、その……守ってくれたので。えへへ」


 アトラクションが終わり、プロジェクションマッピングが途切れると部屋は元に戻っていく。


 ちなみに結果はというと、ほとんどの海賊を夏斗が撃退したことによって全制覇を完了していた。


 えるも戦うには戦っていたが、せいぜい夏斗の撃ち漏らしを処理する程度。逆にここまでパートナーが強いと、もう片方は退屈に思ってしまいそうなものだが。彼女の心のうちにあった感情は、一つだけ。


(先輩、カッコよかった……)


 暗いところや大きな音が苦手な自分のことを庇い、必死になって守ってくれた。そんな夏斗の頼れる姿に、えるの心はトクントクンと激しく躍動。今もなお、続く余韻で身体が熱くなっている。


 端的に言えば、惚れ直していた。


「お客様、ハイスコア獲得おめでとうございます! こちら、景品のシャチ叉君マスコットです!」


「へっ?」


「わぁ! シャチ叉君だぁ!!」


 そんな二人に寄ってきた係員が持ってきたのは、この施設のマスコットキャラ、シャチ叉君の小さなマスコット。


 大きさにして、およそ手のひらよりも小さいくらいのそれは、パイレーツ•クエストにてハイスコアを残したものにのみ手渡される限定品であった。


「……かわいいな」


 シャチ叉君のベース色は黒であるが、ここで渡されるのは男の場合は水色、女の場合はピンク色。ストラップ紐が頭から伸びているそれを大事そうに抱えたえるは、夏斗の腕に抱きつきながら。言った。


「先輩との大切な思い出が、また一つ増えちゃいました。シャチ叉君……大切にしますっ」


「……そう、だな」


 えるはそれをそっと鞄にしまい、夏斗も収納するのがなかったため水色シャチ叉君を同じ鞄の中に入れて。どこか感慨深い気持ちになりながらも、テンションをリセット。次の施設へと急ぐ。


「よし、次行くか! 次は確か……」


「ホエールボールです! ほら、水の上でおっきなボールに入ってコロコロするやつですよ!」


「そうだそうだ。じゃあ行こう!」


「はい!」


 ぎゅっ、と指を絡ませて、離れないように繋いでから。早歩きでその場を離れた。


 次に向かう先は、ホエールボール。


 透明な水に浮く球体、いわゆるバブルボールの中に入り、水上を動き回る。案外体力を使うらしいそれに、夏斗はえると二人で入る気であった。


 本来なら一人で入るそれは、一応二人までの同時搭乗が認められている。入り口を閉ざせば密閉された空間となるそこに、二人きり。それも足元は平面ではなく、必ずと言っていいほど中で転げ回ることとなる。


 密着必至のアトラクションだ。


(先輩と、ホエールボール。どさくさに紛れて抱きしめたりとか……できないかな)


 そしてここにも、好きな人との相乗りに過度な期待を求める者が一人。


 普段は恥ずかしくてでできないことも、アクシデントとしてなら。こちらから狙ってやったという状況を作らずに、夏斗と激しく密着できるかもしれない。


 かあぁ、と妄想に顔を赤く染めるムッツリは、より強く。夏斗の太い指を握った。


(告白する前に、もっと。えると距離を縮めたい……)


(先輩にいっぱい抱きついて、甘えたいなぁ。あわよくば先輩からも、ぎゅっ、て。してほしい……)


 チラチラとお互いに、気づかれないよう横目で期待の眼差しを向け合う二人。



 まさかお互いがお互いにこれ以上更に距離を縮め、激しい密着を求めているとは。知る由もない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ