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55話 先輩、胃袋掴ませてもらいます2

55話 先輩、胃袋掴ませてもらいます2



「ささ、先輩! どうぞ!」


「うん。お邪魔します……」


 ガチャガチャ、と玄関の扉の鍵穴を回し、えるが笑顔で振り向く。少し開いたその先にはいくつもの写真立てとそれを彩る可愛いデコレーションが見えた。


「これ、えるの子供の頃の写真? へぇ……昔は髪の毛長かったのか」


「み、見ないでくださいよ恥ずかしい!? ちっちゃい時の話ですから!!」


「ふふふっ。そうよぉ。える、中学生までは一番長い時背中くらいまで髪の毛伸ばしてたんだからっ」


「そうだったのか……って、え!?」


「始めまして〜。ちゃんと話すのは初めてよねぇ」


 それは、えるの少し高めな声とは違い落ち着いていて、どこから優しい声質。


 思わず驚きながら顔を上げると、そこには奥からいつの間にか出てきたらしい超絶美人さんが立っていた。


 背は低めだが、紫色の髪を結び、右側にまとめて肩からかけている。その毛先の先には二つのとてつもない巨山が聳え立っており、白い露出の少ないセーターが豊満なそれを掻き立てて色気を醸し出している。


「夢崎愛葉。えるのママですっ。君は隣に住んでる夏斗君よね? えるからいつも話は聞いてます」


「マ────お母さん!? なんで、今日いないって!!」


「えるが夏斗君連れてくるって聞いて、どうしても気になっちゃって。というか何よ、お母さんって。いつもはママ〜って可愛く呼んで────」


「にゃぁぁぁぁぁ!!!! もう余計なこと言わないで! お願い!!!!」


 えるの奴、いつも母親のことをママと呼んでいるのか。


 いや、それよりもいつも話は聞いてるって。自分の知らない間に自分のことを知られているって、なんだか変な感じだ。


 えるが引っ越してきて、この人が家に挨拶に来ていたということは知っているのだが。その日はたまたま部活で家にいなくて、それからも会う機会はなくとくに気に留めていなかった。


 それにしても美人だ。この人からなら、えるみたいな可愛い子が産まれてくるのも頷ける。たわわも遺伝みたいで、なんだか妙な安心感があるな。


「ふふふふっ。じゃあママはこの辺でお暇しようかしら。夏斗君、えるのことお願いね」


「えっ? は、はい……?」


「える、私はちょっと出掛けてくるわぁ。あ、流石に夜には帰ってくるからお泊まりはやめてね? その……二階からギシギシが聞こえてくるのは流石にお父さんも怒っちゃうと思うから……」


「本当に何言ってるの!? お願い、もうやめて! ナツ先輩の前で変なこと言わないで!! 早く出てってぇぇぇ!!!」


 バタンっ。最後に「ごゆっくり〜」と言い残した愛葉さんは、えるに追い出され扉の向こうに消えて行った。


 優しそうなだけじゃなく、中々ユーモアのあるお母さんだ。える、多分普段から色々と掻き乱されてるんだろうな……。


 身体や可愛さは遺伝しているけれど、そういうところはあまり似ていないように思えた。えるは何かを企むとすぐ顔に出るし、死ぬほど分かりやすいけれど。あの人はなんというか、裏から支配したりするのが凄く得意そうなラスボスタイプだ。草むらのスライムレベルの攻撃しかできないえるとは似ても似つかない。


「うぅ……先輩の前で恥ずかしいところ見せちゃいました……」


「いやいや、全然恥ずかしくなんかないぞ。ただ、高校生の女の子がママ呼びはなんというかこう……キュンときた」


「っ!? か、揶揄わないでください! ほら、早く上がってくださいよ! 昼ごはん作りますから!!」


「ははは、耳真っ赤だぞ」


「うるさいですッッッ!!!」


 キィッ、と威嚇して見せるも、耳まで真っ赤になっているその顔では逆効果。小動物の叫びでしかないそれに思わず吹き出してしまった。


「……ママ」


「引っぱたきますよ!!!!」



 怒ってるえるも、最高に可愛い。だからこそ、こうしていじめたくなってしまうのである。

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