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4話 後輩、お前誤解されているぞ

4話 後輩、お前誤解されているぞ



 教室に向け、歩みを進める。そんな夏斗を背後から襲うものが一人。


「夏斗ォォ!! てめぇまたやってやがたなァァァァァ!?!?」


「おわっ!?」


 首元にラリアットをかまされ、首を絞められる。夏斗を襲った犯人は同学年で同じクラス、そのうえバスケ部で共に切磋琢磨する仲間。彼の犯行理由は血涙混じりの嫉妬である。


「夢崎える! 我が校の一年生で彼女にしたいランキング一位を叩き出しているあの子とハグをしていたなァ!! しかも周りに人のいる正門で!! 見せ付けてんのかテメェ!!」


「待て、待てって! 俺も別に好きでやったわけじゃ────」


「あんな美少女とのハグが嫌々だったのかァァ!? キェェェェェ!!!!!」


 彼の名は天音悠里。二年生にしてバスケ部副キャプテンを務める優秀な男である。


 容姿も良く、性格も友達思い。それだと言うのに彼女が未だに出来ず、しれっとそこそこモテる夏斗にはいつも嫉妬の目線を向けていた。


 そして二年生になった春。夏斗はとうとうとびっきりの美少女と学校に登校してくるようになり、見せつけるようにイチャイチャ。非モテ高校生の不満は大爆発だ。


 だが夏斗とてえるとのハグは不本意。当然ハグ自体が嫌なわけではないし、むしろ一日を頑張るためのエナドリのような役目を果たしてくれているが。周りに人がいる別れ際にするというのはとても恥ずかしいのでやめてほしいところ。するなら家の前とかにしてほしい。


「ぐっぞ、ぐぞぉ。しれっと彼女作りやがってぇ……」


「か、彼女じゃないって。前にも言ったけどえるとは付き合ってないぞ?」


「あ゛ぁ!? なんで付き合わねえんだぶっ殺すぞ!」


「えぇ。じゃあ付き合ったら?」


「ぶっ殺す!!!」


「理不尽だ……」


 悠里と夏斗は中学からの親友である。中三の時には二人でバスケ部を引っ張り、全国大会一歩手前まで駒を進めさせた実力者。この学校へは推薦などではなく普通に受験をして来ているが、当然バスケの腕は衰えていない。今では高校バスケ部の充分な主力である。


 そんな二人のこのやり取りは、もはや日常茶飯事。所謂悪ふざけの延長だ。


「はぁ。大体なんで付き合ってねえんだよ本当に。お前あの子のこと好きじゃねえの?」


「好きだよ。でも……」


「ああ、そうかまだあの事引きずってんのか。全くこれだからヘタレは」


「……返す言葉もない」


 悠里は彼の玉砕を知っている数少ない人物。それ故に理解もあるが、同時に早く前に進めと背中も押している。


 結局のところ、根はいい奴なのである。


「えるちゃんはいい子だよ。この前すれ違った時お前の友達だから覚えてたのか会釈してくれたぞ? それも笑顔で。ありゃ一目惚れしそうになったね」


「なっ!?」


「それだけあの子は本当に可愛くて、人気があるってこった。手遅れになる前に早く手に入れろってこと」


 分かっている。彼女が美少女で、人気なことくらい。むしろ今の今まで彼氏がいないことの方が不思議なくらいだし、きっと告白だって何度もされたことがあるレベルだろう。


(俺なんかとずっと一緒にいてくれてること自体が、奇跡みたいなものだもんな……)


 いつまでもこのままではいられない。いつかは必ず、この想いを打ち明けなければならない。過去のトラウマを、乗り越えて。


「ああ、分かってるよ。えるとの事は……ちゃんと、考えてるから」


「あっそ。ならいいんだよ。オラ、教室行くぞ!」


「へい」


 

 廊下で話している二人の元に、授業五分前を知らせる呼び鈴が鳴る。それと共にまだ授業の課題が終わっていない事を思い出した夏斗は、急いで悠里の後を追った。

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