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16話 先輩、誰ですかその女!

16話 先輩、誰ですかその女!



「先輩っ。おはようございます」


「おはよー、える。相変わらず朝から元気いいなぁ……」


「ふふ、寝癖ついてますよ? ナツ先輩は朝弱いですよね。私が起こしに来る前の一年生の時は遅刻魔さんだったと聞きました」


「ははは……えるには感謝しなきゃだな」


 今日も一日が始まる。一緒に学校までの道のりを歩いて、正門から入って少ししたところで先輩パワーをチャージし、名残惜しさを感じながら別れた。


「ったく、また抱きつきやがって。……いい匂い、させやがって!!!」


 夏斗はその場に置き去りにされ、走って行くえるの背中を見届けてから歩き出す。周りにヒソヒソと内緒話をされるのを感じながら。


 そりゃまあ、この学校一と言える美少女と抱きついているところを見られたのだ。嫉妬やらニヤけ顔やら向けられるのは仕方がない。幸いなのはその中に殺意が混じっていないことだ。


 安堵しながら一人、そろそろ教室に向かわんとする夏斗。しかしそんな彼の背中に、突如激痛が走る。


「おっはよ! いやぁ、今日も相変わらずのイチャイチャっぷりですなぁ!!」


「いってぇ!! 柚木、お前加減しろや!!」


 柚木紗奈。夏斗のクラスメイトにして学級委員長である。


 二人の付き合いは高校一年生の頃からで、二年連続同じクラスになったこともあってそれなりに仲の良い関係を築いていた。


 基本的に女子と話すのが苦手なチェリーボーイの夏斗だが、彼女に限っては別。茶色の短髪をふわりと揺らす彼女のボーイッシュな性格のおかげか、異性という感覚よりも悠里と同じような男友達という気持ちが強い。


「へっ、見せつける早乙女が悪いんだよーだ。私は正義の鉄拳を喰らわせたにすぎない!」


「くっそ、鉄拳より痛い平手だったぞ……。まだ背中がヒリヒリしてる」


「つまんないことでウジウジしないの。男の子でしょ?」


「……お前の方がよっぽど男らしいよ」


「だ、れ、の胸が男らしいだァァァ!?」


「いって、いでででででで!!! 言ってない! 俺胸のことなんて一言も言ってないッッ!!!」


 高校二年生。成長期真っ只中のはずの彼女だが、身長は百六十を超えようとも一向に胸元は貧相なままだった。本人はそのことをかなり気にしているようで、こうして八つ当たりすることもしばしば。夏斗が安心して口を聞けるのは、そこに魅惑の果実が無いことも大きい。


「もう、早乙女なんて知らない! とっとと教室行くよ!!」


「し、知らないって言ったら普通一人で早歩きしていくものじゃないのか!? なんで俺ごと連行なんだ!? なぁっ!!」


 耳を引っ張られ、ずるずると連行されていく夏斗。周りが「良い気味だ」、「もっと罰を与えてやれ」と言う中で、校舎の中から一人。息を潜め、驚愕の顔を見せている者がいた。


「せ、せせせ先輩に女の子の……友達が?」


 誰を隠そう、我らがえるその人だ。二階に続く階段の途中にある窓からひょっこりと頭を出し、外で親しげに接する二人をじっと観察している。


「先輩、誰なんですかその女は……! 突き止めなきゃ。あの人の、正体を!!」


 

 えるのメンヘラレーダーに囚われては、もう逃げられない。この時から彼女の、紗奈に対する調査が始まった。

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