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14話 後輩、犬みたいだな1

14話 後輩、犬みたいだな1



 いつもとは少し違う帰り道。ただの住宅街を通るだけではなく、ぐるっと大回りした先にはあまり知らない街並みが広がっていた。


 通ったことがない訳ではないのだが、改めて見ると行ったことのないお店なんかが多い。ホームセンターにコンビニ、小さなカフェ。意外と栄えているようだ。


「先輩、どこに寄って帰りますか?」


「目的地は決めてなかったのか?」


「うっ。はい……実は先輩とどこかに行きたいなぁ、くらいしか……」


 なるほど、と夏斗は頷いた。


 行きたい場所が決まっていないのは構わないのだが、いかんせん知らない場所だから通る店全てが選択肢に入ってしまう。何もないよりはいいのだが、どこに入るのか迷って立ち止まってしまいそうだ。


 しかしいつまでもそうしてのらりくらりしているわけにもいかないだろう。気づけば夕日が見え始めているし、そろそろ行き先を決めないとな。


 と、そんな事を考えながらぶらついていると。目の前に現れたのはそこそこ規模の大きな公園。


 噴水に遊具、ベンチなど普通の公園の二倍くらいの大きさがあるのではというそこに、五人ほどの並び列ができていた。


「える、あそこはどうだ?」


「え? どれですか?」


 そこにあったのは、移動販売車のクレープ屋。いちごやバナナ、メロンなど数多くの種類のメニュー表がでかでかと張り出されており、並んでいるのは全員女子高生のようだ。


「わぁ、クレープ! 食べたいです!!」


「よし決まりだな」


 ぴょんっ、と小さく喜びの跳ねを見せたえると手を繋ぎながら公園に入り、列に並ぶ。前の女子高生達がワイワイと楽しそうに喋りながらどれにするかを決めて注文し終えると、美味しそうな匂いと共に女性店員さんがクレープの生地を早速薄く広げていた。


「むむむ……種類が多すぎて悩みます……」


「どれも美味そうだなぁ。うわ、俺も悩むなこれ」


 パッと見ただけで、種類は二十種ほど。長い列ができていたなら考える時間も多かったのだが、もうどうやらクレープが二つ完成してしまったらしい。あと三人分作り終えるまでに選ばないといけない。


「いちごさんか、桃さんか……なんとか二択までは絞れるんですけどね。むぅ! どっちも美味しそうです!!」


「あ、なら片方俺が頼もうか? どうせ決めれそうにないし、俺のから摘んでくれたらいいよ」


「ほ、本当ですか!? 先輩、ありがとうございます!!」


 えるの笑顔が見れるならこれくらいお安い御用だ。心の中で呟きつつ、順番が来ていちごクレープと桃クレープを注文する。


 そして俺が桃を、えるがいちごを受け取ってから近くのベンチに座った。


「ん〜!! おいひぃれふっ!!」


 ぱくっ。五個以上は乗っているイチゴのうち一つを咥えながら、小さく一口。えるはぱぁっと笑顔になって、ほっぺたが落ちるとばかりに身震いしている。


 さて、それはさておき。夏斗は自分の手に握られた桃クレープを見つめていた。


(しれっと俺のも摘むか? なんて言ったけど……え? どうしよう)


 摘むと言っても色々ある。ちぎって渡すのか、スプーンでも貰ってきて自分の食べたい分を食べてもらうのか。はたまた……直接口でいってもらうのか。


「先輩……桃さんも美味しそうれす。摘んでいいって、言ってくれましたよね?」


 よく考えればいつもお弁当を食べる時している間接キスは一方的なもの。えるが夏斗の口にしたものを間接キスで使ったことはあっても、その逆は無い。


 要するにこの男、ビビっていた。


 しかし横の彼女はと言うと、早く食べる許可を貰いたいと犬が餌を前にギリギリ「待て」を耐えているような状態。早く決断しなければならない。


「先輩? 早く、欲しいです……」


「うっ!」



 少し色っぽい甘声に当てられて。夏斗は────

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