理不尽な好意
悪人とは?!
自分目線で 敵になる者。
自分に害を およぼす者。
ならば、 その自分が殺人者や 盗人だったら?
悪人は、 捕縛する騎士や 衛兵なのか?!
立ち位置でかわる 善と悪もある。
心のスキマ
爽やかな風が、 噴水を抜けて来る公園。
木もれ日のベンチに座る子どもは、 一人で昼食を食べている。 開かれたランチBOXには、 サンドイッチと マフィン、 熟れた果実も入っている。 子どもは、 何かの本を読みながら 時々もぐもぐと 食べ物を齧る。
昼食に集中できない程、 面白い本なのだろうか?
アオコアンは、 勇者を手に入れた。 当初の計画より 早い成果で、 気分が良かった。
折角隣国まで来たのだから、 宿で食事もつまらない。 政務は部下がやる。
アオコアンは、 噴水広場で 屋台をひやかしながら、 串焼きとたこ焼きを買い求め ベンチに座り、 何ともなしに 広場を眺めていた。
彼方此方にあるベンチや 芝生の小山でも、 子ども連れな一般人達が 思い思い楽しそうに過ごしていた。
お行儀悪く 食べながら本を読んだら、 やらかす事件が 子どもを襲う。
本に 食べ物が飛び散った。 子どもは 大慌てで、 本を拭いた。 それでも 汚れは落ちず、 噴水でハンカチを濡らし 本を拭いてしまう。 多分 汚れは、 水気でひろがったのだろう。 今にも 泣きそうな顔になった。
アオコアンは、 気まぐれを起す。 いつもなら、 歯牙にもかけない些事なのに。
「困っているのか? どれ 見せてみろ。」やさしい声掛けにも ビクっと怖じける子ども。
「ワレは、 アオコアンという。 怪しい者ではない。 安心するがよい。」おどおどと 本を差し出す子どもから、 ケチャップのシミが付いた 本を受け取る。
「オールクリーン!」簡単に過ぎる魔法。
「見よ、 キレイになったぞ!」アオコアンは 本を戻す。
泣きそうだった子どもは、 パアッと音がするように 笑顔がこぼれた。
「ありがとう! おねぇちゃん!」子どもは ぴょんぴょん小躍りしている。
「何 気まぐれだ。」アオコアンも破顔した。
子どもは、 そんなアオコアンに見惚れてしまう。 アオコアンの笑顔は、 美しかった。
パチパチパチパチ 何故か、 拍手も聞こえる。 子どもに親切にした アオコアンを称えているのだ。 パチパチパチパチ…。
アオコアンは、 人々にいつも讃えられる教皇をしている。 称賛等 当たり前なコトなのに、 大聖堂で受ける称賛と違い 今広場にある、 マバラな拍手の称賛は、 ほっこりあたたかく ここちよいのだ?
アオコアンは、 つい子どもの頭をなでた。
「次から 気を付けるのだ。」アオコアンは、 自分のベンチに戻り、 その後も 広場を眺めたり、 散歩をして過ごした。
高給宿に戻り、 贅沢な夕食を 部屋でたべながら、 アオコアンは 屋台の串焼きの方が美味しいと感じてしまった。 贅沢な料理も 一人でもそもそ食べても 美味しく感じられなかった。 いつもなら、 感じない虚無感。
アオコアンは、 食事はほどほどに 夜の噴水広場に出てみた。
昼間と違い、 夜の噴水広場は 安い酒のニオイと、 屋台の提灯に ワイワイ騒ぐ酔っぱらいの世界だった。
「こんなもんだな?」アオコアンは、 独り言で失笑する。 自分自身を笑ったのだ。
「おねえさん? 夜の一人歩きは 危ないわよ?! あなた とても綺麗だし、 きっと拐われちゃうわ! 」野太い声で 女言葉っ!
その人を振り返ったアオコアンは、 一瞬言葉を失った。
「あら? ワタシは悪人じゃないわよ? 女裝が趣味なの。 うふふっ、 結婚して子どももいるわ、 勿論奥さんは 女よ! ドロシーよ、 こんばんは 美しいおねえさん!」
「こんばんは、 ドロシーさん。 アオコアンと言います。」一応返事をするアオコアン。
「あらあらまぁまぁ、 声も素敵ねっ! ますます危ないから、 宿まで送るわ! ワタシ下心ゼロだし、 この街では結構有名人だから 心配しなくていいわ!」アオコアンは つい頷く。
宿までは、 歩いて20分程の短い距離でも ドロシーの雑談は、 心地よく楽しかった。
宿の前で ドロシーは、 片手をあげて去って行った。 見た目と真逆な 爽やかな漢だった。
アオコアンは、 その夜 ほっこりと眠りについた。 本当に、 心地よい眠りだった。
翌朝、 アオコアンは決心していた。 朝食を食べると 急いで外出する。
あの子どもと ドロシーを探そう!
アオコアンは、 心の案ねが欲しかった。 たとえ 世界征服を目論んでいても、 大戦争を起こし 勇者に何万人殺戮させようとも、 ほっこりした安らぎが欲しい!
あの二人なら、 アオコアンは 大丈夫だと、 勝手に思い込んでしまった。
欲しいものは、 ユニークスキルでいつでも奪えるのだから・・・
アオコアンは、 昨日と同じ青空の下 用意してもらった、 高給なサンドイッチと甘いお菓子の詰まった 大きなバスケットをさげ、 噴水広場にでかけた。
今日は、 本も持って来た。 美味しいクッキーをツマミながら、 アオコアンは時々広場を見渡す。 あの二人を何気に待ち伏せしている、 自分が とても楽しく感じた。
昼前になり、 あの子どもが、 小さなバスケットを持ち 木漏れ日のベンチにやって来た。
アオコアンに気づき ちょこんとおじぎをして、 笑った。 可愛すぎる! アオコアンは、 あの柔らかなサラサラ髪を ワシワシとなでたくてたまらなくなった。
アオコアンは、 軽くて手をふり ソレでも、 暫く我慢した。 子どもは、 今日も本を読むらしい。 読書好きとは 好ましいに過ぎる。 アオコアンの中で、 子どもの記憶を消しさり 聖国に連れて行くのは、 決定事項になった。
正午の鐘が鳴り響くと 子どもは、 本をたたみ バスケットを広げ始める。
アオコアンは、 大振りなバスケットをもち 子どもに近づく。
「こんにちは! 今日も来たのだな? どうだ ワレと一般に食べないか? 甘いお菓子も沢山持って着ている。 芝生にシートを広げよう!」
子どもは、 嬉しそうに頷くと 自分のバスケットを小脇に抱えた。
アオコアンが 何気に手を差し出すと、 躊躇なく 手を繫ぐ子ども!
思わずアオコアンは、 また子どもの頭を ワシワシ撫でた。 サラサラで本当に触り心地最高な頭だった!
アオコアンと子どもは、 広めのシートを広げ バスケットを覗く。
「うわぁーっ! おいしそー!」弾ける笑顔。
「ゆっくり 沢山食べてよいのだ。 甘いお菓子の前に、 サンドイッチも食べるのたぞ? ふふっ…、 冷たい果実水もあるからな!」アオコアンは、 食後 昼寝をさせ 記憶を消し、 子どもを転移で連れ去るつもりだ。 これから、 この子どもと 毎日楽しく過ごせる。 アオコアンの笑顔も弾けていた。
昼間の広場は、 穏やかな空間であり 理不尽な誘拐が起るなど 誰も考えないだろう。
読んで下さりありがとうございますm(_ _)m
いいね! コメント等もお願いしますm(_ _)m
ブックマーク喜びます(≧∇≦)b




