アブダクション
謎 それは、 エビデンスでは 解決できない現象事象をいう。
ギルド長の葛藤と困惑
豊穣都市と言われる デメーテルは、 暮らし易く平和だった。 冒険者ギルド長スターシアナは 執務机の書類の山を眺め、 突然両手をひろげたまま 突っ伏した。
…ドサドサっ… ガッチャーン!
「ギルド長っ…!!」隣室の副ギルド長ロバートが 飛び込んで来る(何時呼ばれてもいいように、 隣室とのドアは 開かれている)。
「あ…ぁ、 ごめんなさいボブ。 何でもないの…。」力なく、 スターシアナは応える。
「夕べも、 徹夜でしょう? 少し休んでください。 このままでは 倒れてしまいます!」ボブは、 書類と 割れた紅茶茶碗を 片付け、 新しく、 上等な茶葉で ミルクティーを入れた。
「あ…ぁ、 おいしいわ ありがとう。」 アールグレイティーは 疲労感を、 やさしく溶かすようだ。
「失踪事件ですよね? 子どもばかりの 神隠しのような失踪事件。」ボブの表情も 困惑に染まっている。
3年前に 幼い子どもの二人組みが、 当然失踪した。 胡桃園(孤児院)に在籍する 働き者の、 将来有望な 初心者冒険者達だった。
二人は、 都市外壁近くで 角ウサギを狩っており、 実力から考えて 危険な狩りでは、 なかったハズだ。 現に、 最後の目撃者は 二人が仲良く、 弁当を食べている時 挨拶までしていた。 二人は笑顔で、 疲労感等見られなかったと 書類には、 書いてある。
遺留品もなく、 その頃 誘拐事件も 報告されていなかった。
そして、 その二人組みから 謎の失踪事件が、 9件も続いている。 3年で 9件、 冒険者なら 依頼の途中、 強力な魔物との遭遇等 事故で命を失う者達は、 少くない。 確かに一定数はいるのだが、 場所とその年齢が 問題なのだ。 10歳以下の 魔法使いと、 剣士の二人組…、 年齢でみると 優秀な腕前。 性格も問題なく 安定した暮らし振りで、 家出や出奔等 考えばれない子ども達。
誘拐の可能性もなく(冒険者ギルドのネットワークで確認済)、 煙のように失踪 嘆き悲しむ親族や友人達の姿が デメーテルに暗い影を落としているのだ。
「暫くは、 10歳未満の初心者冒険者は 外壁から出ての、 行動禁止にするわ。 草毟り等の雑用依頼報酬を ギルド資金の補填で、 かさ増します。」スターシアナは、 最後の決断をする。
「初心者冒険者がこなす 簡単な依頼は、 今は 老齢組の冒険者が、 小遣い稼ぎに 協力してくれています。」ボブは、 スターシアナを 慰める様に 報告する。
「重要な決済が不必要な書類は、 全てコチラに渡してください! そのための副ギルド長なのですから!」ボブは、 スターシアナの執務机の上から 殆どの書類を、 何回かに分けて 自分の執務机の上に載せた。 副ギルド長の執務机の上には、 書類の山脈が連なり エンシェントドラゴンが住める、 高峰になっていた。
ボブは、 書類仕事が得意で好きなので 全く問題ないと考えている。 スターシアナは、 最近特に ボブの存在を、 神に感謝するのだった。
スターシアナは、 2時間 眠る決断をし、 廊下側のドアに 鍵をかけた。
「豊穣都市デメーテル? もう少し 賑わってたよな?」スコットが 首をひねる。
「そうですね? 5年前に来た時は、 帝都に負けない位 活気がありましたからね?」ギュンターも 何か引っかかるみたいだ。
「まっ、 冒険者ギルドに行ってみりゃあ 何かわかるわな?」スコットは そんなもんだろと、 スルーするらしい。
「ハヤト、 掲示版に 10歳未満の、 行動制限が はられていますよ? 確認しましたか?」冒険者ギルドに 到着して、 まず 冷たい果実水(葡萄味)を飲んでると、 ギュンターが 注意してくれた。
「行動制限? どういうこと?」
「外壁から 出られないんだと!」スコットも 驚いている。
「私とスコットは、 古い知人に それぞれ会いに行きますが? ハヤトは 独りで大丈夫ですか? 提示連絡は 必ずしてくださいね?」
ボク達は、 3日程 別行動になる。 打合せを軽く済ませると スコットとギュンターは、 冒険者ギルドを出て行った。
ロボ馬車は、 冒険者ギルド横の 駐馬車場に停めてある。 勿論、 豊穣都市デメーテルの 中央繁華街近くでもあり、 利便性もいい。
ロボ馬車は、 高級宿以上の性能があり わざわざ、 面倒な宿は とらない。
✧今日から数日は、 スコットもギュンターも 大人の事情とかで いないし、 観光からしようかな?✧スピカに 話しかける。
✦豊穣都市デメーテルは、 帝国5大都市でも 上位に繁栄しています。 しかし、 3年前から 深刻な問題も抱えています。✦
✦10歳未満の 初心者冒険者が 何組も失踪しているのです。✦
✧えっ? 何組も?✧
✦情報収集は必須! ビーコンを 総動員しています。✦
✧それほどっ?!✧
✦それほど以上 レッドアラートです。✦
ボクは、 昼食は 外食にして、 デメーテルの雰囲気と 情報収集をすることにした。
「嬢ちゃん! ウチの串焼きは デメーテル一番だせ! 食っていきなよ!」中央噴水広場の 屋台のオッチャンが 景気よく、 ボクに声をかける。 肉の焼ける 芳ばしい薫りは、 暴力的な程 ボクの食欲を刺激する!
旅の醍醐味は、 知らない土地特有の 料理!だよねぇ! 同じ種類の串焼きでも、 その土地特有の 味付けがあるし、 マズは串焼き!
「美味しそうですね! 二本ください!」
「おっ! 嬢ちゃん、 二本も食えるかい? ウチの串焼きは、 デカいぞ?」オッチャンは、 強面なのに 結構親切だ。
「お腹ペコペコなので、 食べられます。」
「いいねぇ! 食欲は 元気のバロメーターだ!
はい 二本! 毎度ありっ!」オッチャンは、 焼きたてアツアツを 木皿に入れて渡してくれた。 香辛料と塩味らしい! ボクは、 さっそく噛じってみる。
「おいしーっ!」ハフハフしながら 思わず叫んだ! ボクは、 ネットでお取り寄せが出来る。 現代日本の 食文化は、 地球上で一番だと言われている。 フランスや中国にも 勝るとも劣らない、 和洋折衷の日本食! その日本の 首都育ちのボクの声た舌を、 オッチャンの串焼きは 大満足させる味なのだ!
「くぅ~っ! うれしいねっ!! 嬢ちゃんの食べっぷりも 気にいった! 今日は、 オッチャンのおごりだっ! そのかわり、 また食いに来てくれや?!」オッチャンは 破顔している。
ボクは、 男の子だけど 勘違いしているオッチャンに、 わざわざ訂正はしないでおこう。
「ありがとうございます! 暫くは デメーテルに滞在するので、 多分毎日寄らせて頂きます。」その言葉に、 オッチャンは満足して頷いている。
嘘をついて騙してはいないから、 セーフだよね?! 一方的勘違いだしー? 多分セーフなハズ…。 知らんけど…。
✦ほぼ黑に近い グレー。 イエローカードデス✦スピカは 報告する。
✧まぁ、 そういうカンジデ…✧テキトーに 応えるボクは、 オッチャンに 空の皿を返し、 お礼を言って 隣の、 シチュー?の屋台を目指した。
「おっ?! 串焼き二本の後に シチューも食えんのかい? 嬢ちゃん イケルねぇ?」屋台のおばちゃんが 驚きつつ、 木のお椀にシチューをよそって 渡してくれた。 屋台横の ベンチに座り、 マイスプーンを出して 一口!
「おいしっ! サイコーお!」ボクは 嬉しくなった! 屋台のおばちゃんのシチューは、 懐かしい味がした! ボクの母さんのシチュー!!
日本が世界中に誇る、 ハ○ス食品の ミルクシチューの味だ! 母さんは、 シチューは 必ずハ○スの、 ミルクシチューと決めていた。
お肉や 野菜のゴロゴロ感も似ている。
「嬢ちゃん! ウマそうに食べるねっ! アタシも デメっ娘(カナリ昔の娘さん…言うまい)だ! 隣の屋台がオゴリだったんだ! 負けるもんかねっ! アタシもオゴリだっ!」いやいやいや、 ソコで張り合ったら 商売大丈夫なんだろか? でも、 やっぱりボクは 有り難くご馳走になった。 美味しそうに ゆっくり食べて、 しあわせそうなボクは ちゃんと目立つ。 ボクにツラレて 立ち止まる人達で、 オッチャンとおばちゃんの屋台は、 大忙しになった。
「「嬢ちゃん! 明日も来なよっ!」」オッチャンとおばちゃんが、 ハモって手を振ってくれた。
ボクは、 その後 屋台を何軒かまわり、 大通りの店を 色々見て回った。
そして、 ドワーフの鍛冶屋に 行きあたる。
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