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豊穣都市デメーテル

 魔物と魔法の世界は 弱肉強食の世界。

生き抜くのは 普通に厳しい。


  それぞれのチカラ


 ザリガニの魔物ギロチンを 釣り上げるのは、 クロエの仕事だ。 丸々肥えた青い奴は 体長30cm程にもなり 食べると美味い。 美味いので 銅貨5枚で売れる。 黑パンなら 5個分!

 タニシを 麻紐にくくりつけ、 澄んだ小川の流れに放り投げれば 1日に、 3匹は釣れる。

但 デカい鋏は、 とても危険だ。 挟まれないよう 必ず大きなフタ付きバケツに、 一匹入れたら イチイチ孤児院まで 走って持ち帰る。

 この、 走って持ち帰る係は サンタである。


「クロエさぁ、 今日は オイラにも釣らせろよぉ。 オイラいつも 走って持ち帰るの 面白くないんだよぉ…。」ブツブツ言うサンタ。

「サンタは ぶきっちょ。 麻紐をムダにする。 サンタが 走ってる間に、 クロエならギロチンもう一匹釣れる。 協力シ合えば 5匹釣れる!」毎日 繰り返し説明するクロエ。

「でもさぁ、 オイラ走ってばかりで 腹が減るしさぁ…。」不公平だと サンタは言うのだ。


 大きなギロチン(ザリガニの魔物)は、 警戒心も強く 普通は、 タニシと麻紐では釣れない。 クロエは、 無意識で ギロチンに、 梗塞魔法をかけて釣り上げていた。 サンタは、 魔法等使えないから まず一匹だって、 釣りあげられない。 しかし、 クロエは いつも、 簡単そうに釣り上げてしまう。 サンタは、 とても 悔しく思うのだ。


「サンタは、 力持ちで 足が早い。 クロエは 蓋付きバケツを持って 走れない。 1日3回が やっと。 二人で組むと 5匹運べる! サンタは、 パン15個と パン25個どっちがいい?」毎日 クロエは説明する。

「そりゃぁ パン25個さ。 しょうがねぇ…、 また 走ってくる!」話すうちに 釣れた大きなギロチンを、 クロエがバケツに入れると 蓋を被せ、 サンタは走り出す。


「ちぇっ! 何でオイラには 釣れないんだ!」ソレは、 梗塞魔法が 使えないからだよサンタ。 というか、 普通に 大きなギロチンは、 釣れたりしないから 売れるのだ。



「園長先生! ギロチン釣れたよ!」サンタがバケツを差し出すと モモコ先生と園長先生が、 ニコニコと 泉の洗い場の囲い側に歩いて来る。

胡桃園(デメーテルの孤児院)には、 コンコンと湧く泉があり 洗い場の1つに、 ギロチンを入れる蓋付きの場所もあり(挟まれないようと 逃げ出さないよう)、 夕方には 近くの居酒屋の店主や、 安宿の主人等が それぞれ買いに来てくれる。 胡桃園の 結構な収入源だ。


 クロエは まだ、 7歳の女の子で サンタは8歳の男の子だ。 年下の 女の子に、 使われてる感のある サンタは、 いつも クロエに不満タラタラだった。

二人が ギロチン釣りを始めたのは、 二年前本当に偶然の成り行き。 プラプラ散歩している時に 酒の摘みに、 お爺さんが大きなギロチンを釣ったのを見たから やってみたらクロエが釣った。 

何とか 胡桃園に持ち帰ると、 スープになって美味しかった。 美味しかったので 毎日釣り、 そのうち蓋付きバケツが用意されて 何回も持ち帰るので評判になり、 売れる道筋も自然と出来てしまった。 毎日 ギロチン釣りが、 仕事になった。 パンが お腹いっぱい食べられるようになったけど、 遊ぶ時間は 減ってしまったのだ。

孤児院は 寄付が財源なので、 経営は厳しい。 幼くても 働けるなら、 働かないと 食べて行けない。 庭の雑草抜きや 子守に皿洗い。 一生懸命働けば、 周りの大人達は 飢えないようには、 援助してくれるのだ。

胡桃園には、 今 冒険者見習い班と、 雑草抜き班(農家手伝い込み) 店員見習い班等がある。 子どもの個性を生かし 将来独り立ち出来るよう、 読み書きと計算(搾取されないため)は、 必ず叩き込まれる。 クロエとサンタは 必然的に、 冒険者見習い班に組み込まれていた。


「クロエー、 今日は 違うことしようぜぇー? ギロチンばっかりじゃつまんないしよぉー?」サンタは、 ギロチンが釣れるまでは 暇なのだ。

「サンタうるさい! っきゃあっ!」クロエが 小川に 引き込まれそうになった!

「クロエっ!」慌てて サンタが、 クロエに飛びつき クロエと一緒に麻紐を引っ張る。


・・びったぁーん…ビチびち!


「「 サケっ!! 」」 バケツには、 入りきらない程 大きなサケが釣れていた!


通りかかった冒険者のオジさん?が、 走り寄ってきて サケをシメてくれた。


「お前ら すげーの釣ったな? 魚は 釣ったあと、 こうやってシメないと味が落ちる。 おぼえたか? 胡桃園の子? 持って行ってやろうか?」親切な冒険者だった。


「ありがとうございます! 二人で運べるので大丈夫です!」クロエが 元気に答えた。


「うん! お前ら ガンバれよっ!」冒険者のオジさんは サムズアップして、 去って行った。



「あらあらまぁまぁ! 何てこと!」園長先生は 大物のサケをみて、 とても喜んでくれた。

 

で、 居酒屋の女将さんが 何故か、 釣り竿を一本クロエに持ってきてくれた。


「クロエちゃん こんな立派なサケなら、 いつでもウチ(居酒屋)で買うからね? うちの旦那が ほっぽらかしてた釣り竿は あげるから、 ガンバって釣ってきておくれ!」と めちゃくちゃ期待されてしまった。

 

「サンタ! ニョロニョロ付けて!」サンタの仕事は。 餌を釣り針に つけることになった。

クロエは、 ニョロニョロが 触れないのだ。


「ちぇっ! また オイラ雑用かよぉっ!」サンタは ブツブツが止まらない。


「サンタ居ないと サケ釣れないし、 運べナイ! サンタ重要! サンタエラい!」クロエは 本当にサンタを必要としている。 まんざらでもないサンタは、 照れ隠しに そっぽをむいた。


「っきゃあっ! サンタっ!」クロエが叫び サンタも 釣り竿に飛びつくと、 二人でサケを釣りあげる。


サケをシメるのも サンタの仕事だ。 サンタは 腰のベルトの鞘から、 居酒屋の店主から貰った ナイフを使う。

サンタは 麻袋に、 サケを入れると 一人で 居酒屋を目指して 歩き始めた。


「オイラが戻るまでは ギロチン釣りだぞ! 一人で サケは危ないからな?」サンタは 振り返ってクロエに念をおす。


「うん! わかってる!」クロエも笑った。


サケは 銀貨1枚で売れる。 パンなら 100個だ! 釣り竿と 鞘に入ったナイフは、 クロエとサンタの 漁?を、 ランクあげしてくれた。 毎日サケが二匹位と ギロチンが3匹は、 コンスタントに捕獲出来ている。


「クロエっ! 居酒屋の女将さんが まんじゅうくれたぞっ!」サンタが、 ビュンビュン走って来た。 大きなギロチンが入ったバケツの横に クロエとサンタは、 並んで座って、 大きなまんじゅうを齧る。


「「あまぁーい!(な!)」」仲良しな二人だ。



居酒屋の夫婦は、 殆ど毎日 大きなギロチンや サケを釣ってくれる、 クロエとサンタを可愛がっている。 肉まんや 揚げ饅頭等、 時々オヤツも 差し入れてやっている。


「あんた、 クロエとサンタは ソロソロ狩りも出来んるじゃないかね? 私等の剣あげたらどうかね? 角ウサギのドロップ肉は、 ウチ(居酒屋)で 重宝するけど? どうだい?」


「そうさなぁ、 園長先生に相談してみるか?」


そんな風に、 クロエとサンタの成長の援助も 愉しみにしているのだ。



「サンタさんと クロエさんに、 いいお話しがあります。 居酒屋のご夫婦がね? 二人に武器をくださいました。 明日、 冒険者ギルドに行って 冒険者登録するといいですね。 冒険者のカードタグを貰ったら、 都市の近場なら 角ウサギを狩ることが出来ます。」笑顔の園長先生は、 本当にやさしい。


「うわぁっ! 片手剣だ!」サンタは、 飛び上がって喜んだ。


「クロエのは、 細い剣!(レイピア)」クロエも満面の笑みをこぼす。

 

「居酒屋のご夫婦には、 必ずお礼を言いなさい。 二人は、 本当に幸運ですよ? いつも 援助してくださる方がいて。」クロエもサンタも、 それはそうだと ウンウンと頷いた。



 翌日、 早速冒険者ギルドで 二人は登録してもらう。 冒険者ランクはF級! それでも りっぱな?見習い冒険者になれた。 初心者講習を受けて、 剣の使い方を 一生懸命訓練した。


 二人一緒なら、 角ウサギだって コワくないハズ! 二人は、 おっかなびっくり、 デメーテルの 外壁近くの草原に行くことにした。


「「こんにちは! お疲れ様デス!」」門番の 警備隊員に 挨拶する。


「おっ? こんにちは! お前達 狩に行くのか? 気をつけるんだぞ!」警備隊員は 一応心配してくれた。




 弁当と水筒は、 リュックサックに入っている。 藪や林には 近付かないことと、 勿論森には行かないこと! 角ウサギ以外には、 絶対ちょっかいを出さなこと。 早めに帰るコト!

 サンタは、 何てウルサイ コト事コトなんだ!と 考えていた。


 二人は、 草原を 歩いて行く。


「サンタ! あっちに角ウサギがいる!」右前方を右手で指して クロエは、 利き手の左手で しっかりレイピアを抜いた。


「了!(解)」サンタも 片手剣を、 両手でしっかり構える。



…ザっ… ザザザッ…顔を出す角ウサギ!


「思ったより デカい!」サンタは、 武者震いした。


「コッチよっ! ウサギっ!」クロエが叫んだ!


角ウサギは、 クロエめがけて 飛びかかる! レイピアで 応戦するクロエ! クロエの初撃の レイピアの突きは、 角ウサギの鼻面を掠った。 角ウサギは、 再度 クロエに飛びかかろうとした。


「ココだあっ! セイッ!」サンタは 角ウサギの、 横っ腹を思いっ切り袈裟斬りにした!


「キュッ!」かわいい断末魔をあげると、 角ウサギは ドロップ肉と、 小さな魔石を残して消えた。


周りを警戒しながら、 クロエとサンタは ドロップ品を回収、 アイテムBOXになっている ポーチに入れた。


腰に下げたアイテムBOXのポーチは、 居酒屋夫婦から 借りている。 容量は、 100kg程度入る 時間停止機能付きの優れ物だ。 ドロップアイテム 特に肉や山菜等を、 新鮮なまま居酒屋に、 卸して欲しいからだ。 一年間 優先して、 ドロップ肉を 持って行けば、 そのまま譲ってくれると言う居酒屋夫婦!

クロエとサンタは、 本当に感謝しかない。


 危なげなく、 角ウサギを狩り 途中見つけた薬草を沢山摘むことも出来た。 上出来である。

 二人は、 満足 遅めの弁当を、 背中合わせになり マワリの警戒はおこたらず、 仲良く食べていた。



 夕暮れになり、 冒険者ギルドに 大慌てで駆け込んだ、 胡桃園の 園長先生は、 クロエとサンタが 帰らないと報告して、 泣き崩れた。

 

 



 

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