第十話 影
ス・タンはル・ベラーとベキ・スはシア・ロと組になって見回りに行く事となった。
見回りは、決められたコースを周り時々に応じて休憩を取り、『網』内部に所々置いてある篝火が消えないように薪や油を補給する。
『魔物』らしきモノを見たら、各自が持っている笛を鳴らし周りの警戒を促す。
もし、『魔物』と戦闘になったら、笛を前もって決めてある特殊な鳴らし方をし、周りにいる人間を集める。
今回、ス・タンとベキ・スが入ったため夜の見回り組みが一組増えた。
出発前にそれぞれの予定を少しずつ変更し、それぞれ見回りに出たのは既に日は暮れ、星が瞬きだしていた。
ス・タンもベキ・スも知ってはいたが、初めて体験する実体験に始めの内は興奮していた。
しかし、ル・ベラーとシア・ロがそれぞれ落ちつかせ、見回りをしていった。
それぞれが、それぞれにバラバラに休憩、見回りを行っていった。
そして、イツ・キもまた一人で『結界』内を歩き回っていた。
(やはりここは…)
イツ・キは『結界』ギリギリを歩いたり、木が密集している所を歩いたり、時には村のすぐ近くまで行ったりしていた。
誰にも会うことなく、感づかれること無くイツ・キは自分自身の配分を守って歩いていた。
(…おかしい…)
イツ・キは静かな見晴らしのいい場所に立ち止まった。
イツ・キは目を閉じ、静かに感じていた。
風を。
空気を。
気配を。
命を。
そして、感じた。
(居る…これは…無事であればいいけど)
イツ・キは遠くに視線を向けていた。
ピッピピー
小さくしかし、聞くものには決して聞き逃せない笛の音が響いた。
それは『魔物』と交戦中を表している。
助けを呼ぶ笛の音。
近くに居る者達は走り始めた。
イツ・キもまた向っていた。
笛の音は反響し素人には大体の方角すらわからない。
しかし、訓練を積んだ大人、笛の音に微かに混じっている『魔力』を感じ取れる子どもは迷い無くその場所がわかる。
「吹けた?!」
黒い影を避けながらル・ベラーはス・タンに叫んだ。
黒い影は見上げるほど大きく、何本もの手足を持っている。
「これは『魔物』じゃない!!」
「じゃあ何!!」
二人は叫び合いながら、襲い掛かってくる黒い影を避け続けた。
口調には遠慮と言う物がなくなっていた。
切羽詰ったこの状況下では仕方がないが。
二人は間合いを取りながら、黒い影に攻撃を仕掛けていた。
ガチャガチャガチャ
いくつかの人影が近づいてきた。
笛の音を聞いて駆けつけてきたのだ。
「とりあえず、引かせるぞ」
その中にリーダー格の大人が居て、そう指示を出した。
「はい」
「わかりました」
駆けつけてきた数人もその声にしたがって、自分のやるべきことを始めた。




