表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/11

8話 盗賊相手も酒があれば

 旅に出てから3日経ったが、やばい、腹が減った。飯も無いし、村や街も見えない。これは困った事になった。


 とにかく、先へ進むしか無い。


「誰か――!」


 誰かが叫ぶ声が聞こえる。何があったかは知らないが行くしかない。腹が減ってるから何が出来るか分からないけど。


「どうしたんだ!?」


 駆けつけてみると、女性と男性、そして子供、が盗賊に襲われていた。


「金目のものをだせば命だけは助けてやるぞ!」


「やめてくれ!」


 どうしよう。助けに行った方がいいよな。でも勝てる気がしない……。


「おい! お前、何をしている!」


 ばれた。やばい。逃げられるかなこれ。


「そこのあなた! 助けてくれ!」


 嘘だろおい……。


「あ、あのー。嫌がってますし、これくらいで止めるってのは……」


「ああ!? 何言ってやがんだ殺すぞ!」


「ですよねすみません」


「助けてください! お願いします!」


 どうしよう、板挟みだ。逃げるに逃げられなくなったし、戦っても勝てる気がしない。酔拳はあるけど、相手は10人は超える。酒を入れないと自信がないなぁ。


「あ、あのー。すみませんが酒持ってません?」


「あ、あるが。そんなものどう使う気だ?」


 あるんだ。


「それを俺にくれませんか。そうしたら助けてあげられるかもしれないです」


「よく分からんが、それで助けてくれるんだな!」


 そう言うと、男性はワインの瓶をくれた。


「何をしている! 酒を飲むな! 有り金全部だしてればそれでいいんだよ! 早くしやがれ、ぶっ殺されたいのか!」


 気にせずワインをラッパ飲みする。すると盗賊が襲いかかってきた。


「よっと。当たらないぞ」


 酔いが来たし、盗賊にも勝てる気がしてきた。……このワイン旨いな。それになんだか酒場の酒とは力の出方が違う気がする。


 とにかく、やるしか無いな。


「酒も入った! よし、かかってこい!」




 なんだあの野郎。俺達盗賊相手に怖じ気づくどころか酒を飲み始めた。クソ、舐めやがって。


「おい! お前らやっちまえ!」


 先に部下を戦わせよう。こんな奴、俺の出るものでもない。


「アイ――――!!」


 野郎、奇声を上げてふらふらし始めた。でも何でだ? 部下が次々とやられていく。


「何してる! さっさとやらんか!」


 クソ。何やってんだ。あんな野郎に負けるなんて許さねぇぞ。


「おっとと。ふぅ。で、お前はやるのか?」


 ついに立ってるのは俺だけになっちまった。どうなってんだ。クソが。


「やってやらぁ!」


 渾身の一撃を食らわせてやる! へっ、顔面のガードが無い、がら空きだぜ!


「ハイぃ!」


「ぐおぁっ!」


 は? いきなり野郎の頭が消えた? そして腹に痛み。殴られた? 何が起きているんだ?


「クソ!」


 あたらねぇ。なのに野郎の攻撃は的確に痛いところを突いてくる。クソ、動きが読みづれぇ。


「ハイサ!」


 ここでハイキック!? やばいこれはまずっ……


 ああ。視界が揺らぐ。意識が遠のいて…………




「ふぅ。何とかなったなぁ。ヒック」


「あ、ありがとうございます!」


 ワインをくれた男性が頭を下げて感謝してきた。ワインもらったし、別にいいんだけど。


「いいんですよ。あ、このあたりに街とかありませんか? もう3かくらい何も食べて無くて」


「え? ……ああ。私たちはこれから村へ戻る予定だったんだ。ついて来るか?」


 男性がそう言ってきた。めちゃくちゃありがたい。


「じゃあ、お言葉に甘えて。あ、俺はジンて言います」


「私はアラン。こっちは妻のアンス。これは息子のルイ」


「よろしくお願いします」


 何はともあれ、村に行けそうだ。よかった、助かった……。




 着いた村は小さいが結構繁栄した村だった。


「やっと着いた。は、腹が減った……」


「ここに料理屋は一つしか無いんだが……。そうだ、君が良ければ家でご飯を食べて行かないか? お礼がしたいんだ」


「良いんですか?」


「せっかくだ。村の皆も呼んで宴会をしようか。人数が多い方が楽しいだろ」


「それは良いわ。私、早速皆に伝えてくるわね!」


 アンスさんは走っていってしまった。


「では準備が出来るまで私の家でゆっくりすると良い」


 俺はお言葉に甘えて休ませてもらうことにした。




 宴会は盛り上がった。ここのワインは凄く旨いし、最高だ!


「それで、ジン君が私たちを救ってくれたのだ!」


「へぇ。ジンさんは凄く強いんだねぇ」


「そうとも。しかも酒を飲んで強くなる技を使っているんだ」


「それは見てみたいわ」


 おばあさんが俺を見て言った。


「じゃあやって見せますよ」


 広いところへ出て、酔拳の型を披露した。今日は酒が良いのか、良い感じに型が上手くできる。


「おおーーーー」


 拍手された。なんだろう。いつも飲んだくれと言われて怒られてばっかりだったから、気持ちが良いな。


「凄い技だ! なあ。思ったんだが、ジンさんと、今度返ってくるカムラのとこの息子のエンリ、どっちが強いんだろうな!」


「それは気になるな。是非見てみたい。ジン君。明日エンリが返ってくるんだが、一試合、手合わせしてくれないか」


「え?」


 よく分からないが、そのエンリと明日試合をすることになった。


 



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ