知っちゃいました
こんにちわ。龍子です。
今、私の前には拳を振り下ろした警官服の大男と、その拳の下でぺちゃんこになったヒョロい男の二人がいます。
なんとこのぺチャ男、噂の死の彫り師『デス』なんだそうです。
数秒ほどほうけてしまいましたが、警官服の大男がその沈黙に口を開きました。
「お嬢さん!大丈夫かい!?コイツ危険なやつなんだ!タトゥー入れよう、とか唆されて無いかい!?」
警官さんは心配でたまらない、というようにまくし立てて来ました。
「大丈夫ですよ。警官さん。私がここで立ち止まってたから、声かけられただけです。大丈夫ですから、ねじりを加えて潰さないであげてください」
「ぐじゅぱー・・・何も・・してないよ・・ヤスキチ・・いたいよ」
「おお!そうか!それはすまなかった!」
ねじっていた腕を離してヒョロ男の後ろに仁王立ちを決め直した、この警官さんはヤスキチというらしい。
「お前はあまたの事件の重要参考人の扱いなのだから、立ち振る舞いには気をつけろ!こんないたいけな少女に声をかけてたら怪しむじゃないか!!」
「警官さん。貴方の怪しむって速攻で拳を振るう事なんですか」
「ホント・・だよ・・・」
ヒョロ男さんが頭を押さえながら、恨みがましく警官さんを睨む。睨めてないけど、睨んでるつもりなんだろう。
「いやぁ!すまんすまん!お前がまたあの罪深いタトゥーを入れる気じゃないかと思ってしまってな!」
罪深いタトゥー?
「僕は・・頼まれなきゃ・・タトゥーは入・・入れたり・・しない」
「わかっている!お前のタトゥーは相当危険なものなんだ!街の人々を守る義務のある警官として、俺にはお前の仕事を監視する義務がある!というか出来れば今後一切彫るな!」
「無茶・・・言うな・・僕には」
「わかっている!だから俺も事情を知る者として、こうして協力をしているのではないか!」
「うん・・・」
とても仲が良さそうだ。この二人。警官さんも怖い人っていう印象が薄れてきたし、ちょっといろいろ聞いてみようかな。友美のお土産ネタになりそうだし。
「警官さん警官さん」
「お!なんだいお嬢さん!?無視してすまなかった!」
「もしかして、この人があのデスって本当なの?」
さっき突然話し掛けられたときは冗談かと思ったが、この警官さんの言動・・・そうとしか思えない。思いきって聞いてみよう。
「そうだ!コイツが今噂になっている彫り師デス本人だ!お嬢さんその噂を知ってるなんて、相当マニアなのかい!?見た目似合わないな!!」
「友達と丁度その話をさっきしてたので。私はそんなに詳しくないんですけど」
「僕が・・女子高生の・・・話題に・・モテキ来た・・」
「すいません。タイプじゃないんで」
「ひどい・・・」
でも、何故その噂の彫り師デスに警官が?
「 でも、何故その噂の彫り師デスに警官が!?って思ってるな!?
俺とコイツは腐れ縁でな!この噂が出来てから、俺は監視役として夜のコイツの店を監視するよう本部から言われているんだ!知り合いだったから、俺が派遣されたってとこだ!
なんせコイツは今現代の法では逮捕することができんからな!せめて彫られた人らの把握と、彫る前のカウンセリングを行って対処しているのだ!」
心を読んだように説明された。警官さんカウンセリングも出来るんだ。すごいな。
っていうか、なんか機密っぽい事も話された気がするが大丈夫だろうか。なんか勘違いしてないか。
「で!君もデスに彫られに来たんだろ!?さあー!カウンセリングから始めようか!」
やっぱり勘違いしてる。
「私は違います!」
「え!?違うのかい!?」
「どうすんの・・・ヤスキチ・・・」
「ああー」
「思考・・・停止・・・してるなー」
デスさんが私の方を見て、申し訳なさそうに口を開いた。
「もし・・・よかったら・・・僕の・・仕事・・・見てみるかい・・
丁度・・・今日・・一件・・彫る予定が・・あるんだ・・・」
「おい!何いってるのか分かってるのか!?シンゴ!!」
慌てて、警官さんがデスさんを窘めようとする。
「この子・・・僕の感覚が・・・言ってる・・・大丈夫」
感覚?何かそれで読み取れるのかな。
「本当か!?じゃあこの子も死を・・・」
「あのすいません・・・ちょっとそこの道、通っていいでしょうか。すいません」
私たちが細道をふさいでしまっているから通りたい男性に声をかけられてしまった。やつれた顔の50歳くらい、ブラウンのスーツの男性だ。
男性が右手に持っている黒いカードを見て、デスさんが口を開いた。
「あ・・・今日の・・お客様だね・・」