予想
「ねえ、先輩!歓迎会しないとですね」
朝いつも何時に起きてるのか
髪をクルクルに巻き
マツエクをばっちりつけ
いかにも女子というフリフリの服を着た
2年目の牧野菜々がコロコロの椅子を私の席につけ話しかけてきた
「歓迎会?誰の?」
「誰のって…近藤さんのですよ!」
「ああ、近藤君のね」
「最近忙しいからすっかり忘れてましたね」
「菜々ちゃん、探しといてよ」
「えー私がですか?」
「一杯お洒落なお店知っているのは菜々ちゃんしか居ないじゃない」
「まあ、そーですけど。分かりました〜」
後輩に店の予約を頼める所が先輩の特権だ
「因みに近藤さん結婚してるんですよ!それも2歳の子供がいるんですよ!見えないですよね〜私独身だと思ってたのに」
情報通の菜々ちゃんの顔を立てる為?知ってる事をわざわざ説明するのも面倒な為?
「そーなんだ、意外ね」
私は初めて聞いた様な返答をした
「先輩、眼中に無いって感じですね」
牧野は座ったまま椅子を転がしながら
自分の席に戻る
(眼中に無いってか結婚してるし、子供いるし)
独身だったら私は恋愛対象として近藤君を見ていたのだろうか
いや、あんな若くてチャラチャラした人…
美穂はふとコピーを取っている近藤を見て無意味な妄想と頭を横に振った
ミスは何故よりによって同じ日に重なるのか
クライアントから実際できた広告が聞いていた内容と違うというクレームを2件受けた
「ごめん、私今日の歓迎会行けそうにないわ」
美穂が牧野に謝る
「え~もう人数分予約しちゃいましたよ」
「ごめん、今クライアントからクレーム入って修正しなくちゃ
お金は払うから」
「二時間制で22時まではいますから間に合いそうなら来てくださいね」
クレームが2件同じ日に続いただけでも最悪な日なのにましてや歓迎会の日‥
20時には仕事を終われると思っていたのに・・
見事に予想を裏切る日だわ
美穂はついていない日をどう乗り切ろうかとコーヒーをつぎに行った
そこに近藤の姿があった
近藤が美穂に気付く
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「なんか忙しいそうですね」
「うん、ちょっとクレーム入って、あ、ごめん今日の歓迎会行けないや」
「え?青木さん来ないんですか?」
「うん、この調子だと行けそうにない」
「俺の教育担当っすよ、一番来て欲しい相手ですよ」
(一番来て欲しい相手って‥)
「まぁ。そうなんだけど‥」
「待ってますよ」
近藤がそう言いながら自分の席に戻る
今日は予想を裏切る日だわ
美穂はうっすら笑みを浮かべる