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5-12 先生と再会し、私は先生の家で家事をする

誤字訂正・ブクマ・評価・感想をありがとうございます!

5-12 先生と再会し、私は先生の家で家事をする


 ド=レミ村まで、ゆっくり歩けば丸一日くらいでしょうが、そこは、身体強化して突っ走ります。襲歩ギャロップ並なので、小一時間で村に到着します。既に、先触れというか、ギルド経由で近々帰りますとは伝えてあるので、それほど驚かれないとは思います。


 足を向けるのは村を出て初めてだけど、手紙は二月に一度くらい、先生とアンヌ姐さんには出しているんだよ。師匠? 字が余り読めないのと、家にいない可能性が高いので、先生の手紙にメッセージを伝えてくれるように追伸にしているんだよ。




 気配を消し、人眼を避けるように移動し村の境界線にある先生の家に近づく。元々、人が近寄らない場所だけれど念のためだね。


「ヴィーはお尋ね者というわけではないんですよね」

「私自身は悪事を犯したわけじゃないからね。王女殿下にとって、兄妹同然に育ってきた許嫁が邪魔になるだろうから、身を案じて村を『追放』にしてくれたという感じだと思う」

「まあ、無難ですね。王国にいれば危険でしょうし、捕まれば何をされるか分りませんから」


 元権力者の愛剣であったビルはよくその辺理解しているのだろう。王族からすれば、庶民の命などというのはどうでもいいからだ。むしろ、私のような存在は姫様が何も思わなくても、後腐れ無いように周りが気を利かせて殺すという選択肢が妥当だろう。


――― 命は鴻毛より軽しだね


 私にとって、私の命は山よりも重いからね! 勝手に殺さないでよね!!というより、私が生き延びるために斬り殺すのは分けないけど、村のみんなに迷惑が掛かるからね。その方が追放されるより嫌だから。


 未練はないけど、愛着があるんだよ、ド=レミ村にはね。




 さて、少し離れた距離から、先生に声を掛ける。


(syl)(sonus)

「先生、オリヴィです。今戻りました」


『先生、オリヴィです。今戻りました』


 すると、入り口のドアが開き、中に手招きする手が見えた。




∬∬∬∬∬∬∬∬




「久しぶりね、大きくなったわねオリヴィ」

「はい……御部沙汰しておりますタニア先生」


 はい、只今先生と生徒の感動の再会……のはずなのですが……


「先生」

「……なに? は、ハグでもしようかしら……」

「先ずは、部屋の掃除から始めますね」

「……お願いします……」


 見事な汚屋敷、汚部屋、汚台所です。


「先生、魔術で綺麗にできるんじゃないですか?」

「そんなことより研究よ!!」


 いや、ほら、随分と汚れ物が……固着してますよ。何年も……正確には二年以上埃がそのままなので、湿気を吸って乾いて固まっています。そうなる前に拭き取れば簡単に綺麗になるのに……


 というわけで、私は埃をできる限り……土魔術で浮き上がらせ、風魔術でグルグルと集めていきます。簡単じゃないですか。


「見事に魔術が操れるようになったわねオリヴィ。あなたの成長を感じることが出来て嬉しいわ」


 私は先生が相変わらず家事が壊滅的であると分かって、とても残念です。


「食事とか……今どうされているんですか?」


 と聞くと、師匠が定期的に何か作ってくれるらしい。干し肉とか、干し肉とか……あと干し肉。それを風魔法で刻んだ野菜と一緒に鍋に入れて、煮込んだスープとワイン、それと、週に一度届けてもらう村で焼いた黒パンで生きているらしい。


「先生……洗濯とかは……」

「……着たまま水浴びをして……魔術で乾燥?」


 おい!! 全然変わってないじゃない!!!


 どうも、部屋から異臭が漂うと思っていたら、埃のにおいだけではないようです。体臭か……風呂はあるんだけどね……この家。


「だ、だって、お風呂に入ると眠くなるじゃない? 勿体ないよね、寝る時間」


 勿体なくありません。むしろ、寝ている間に記憶が整理されるので、寝ないと記憶が整理されずに忘れちゃうんだよ。先生に教わったんだけど、本人が守ってないじゃない。


「う、う、そんな、久しぶりに会ったのに、怒りんぼねオリヴィ」


 ああ、どこかで感じていたんだけど、ちょっとビータに似ている気がする。いや、人間としてはビータの方がまともだよ全然。研究に全振りしているから、こうなっちゃうんだろうな。


 冒険者時代の話をアンヌ姐さんや師匠に聞いても……本当に生活力の皆無な人であることは全然変わっていないらしく、むしろ加速しているという。なまじ、美人なので……残念美人ということなんだろうね。




 折角、汚台所も整理整頓したので、魚の塩漬け(死ぬほど樽にある)を出して、供することにする。


「お、エールがすすむ魚の塩漬けだね。オリヴィの魔法の袋だと、時間が止まるわけじゃないから、ちょっと痛みかけ?」

 

 そうでもないでしょう。まだ一月と経ってませんから、世の中の時間であれば4日目くらいですよね。


「それ、お土産?」

「ええ。先生ならもっと長持ちさせられると思うので。よろしければ沢山、持ってますのでどうぞ」

「ああ、これが商会の扱い商品なのね。面白いわね、漁師たちで商会を立ち上げるなんてね」


 樵が自分で家具を作って、直接売り歩くみたいなものだと考えればそうだろうね。それでも、商人に価格の主導権を握らせないための方便でもあるから、漁師たちにとっても必要なことだろうと思う。


 先生の研究の切りの良いところで私たちは昼食をとることにした。まともな台所で久しぶりに料理を作るのは楽しい。旅暮らしを長く続けていると、家を持ちたいというベテラン冒険者の気持ちが少しわかる気がする。


「それで、オリヴィ、あなたのお供の精霊さんを紹介してもらえるかしら」


 先生はお見通しである。手紙には詳しく書けなかったので、ビルはカナンの辺りからやってきた御年三千歳の精霊『イーフリート』の化身であり、炎の剣に変化することも出来ると伝える。そして……


「見事ね」

「でしょ? あと、サラセン人風もお願い」


 浅黒い肌に鷲鼻、そして見事なひげを蓄えた将軍のような姿に変化する。


「ふふ、三千歳か……精霊としては中堅一歩手前……というところかしらね」

「恐れ入ります。少なくとも、私の知っている範囲では二万歳という高位の精霊もおります。それは既に、神に近い存在ですね」

「そうね。神と既に崇められる場合すらあるわね」


 御神子教の神ではなく、古帝国の古代神や、北の国の神々は元は精霊であったものが格を高めて神となった者たちであるという。


「勿論、小さな村の護り神……みたいなものは精霊が頑張って神様の振りをしているなんて言うのも少なくないわ。でも、今の時代はほとんど辺境にしかいないのよね。御神子教の布教の影響でね」


 カエルや猪、熊の精霊化した存在を神と祀るような集落や村は、聖征の名の下に討伐され、根絶やしにされるか棄教させられ御神子教の信者と奴隷として連れ去られているとも言う。


「守護聖人とか悪魔というのも、その精霊の加護や精霊自体が教理の中に取り込まれた結果なのよね」

「では、魔女というのも……」

「精霊の加護を顕示してしまった故に、御神子教から排除された魔術師の成れの果てよ。私たちも、その一員ね」


 魔女……ね。確かに、『魔』術を使う『女』であるから、魔女でも間違いではない。とは言え、魔女は御神子教を信じず自らの力の源泉である精霊を『神』として信じた。その方が、加護の効果が高まるからだそうです。そりゃそうだよね。


「ビルはそういう経験ある?」

「あります。魔神としての姿は、とても神々しくはないので、どちらかというと悪魔に思われるようですがね」


 剣化して『御神体』として祀られていることもあったという。なにより、そうすることで精霊としての力を大きくすることが出来るからだという。


「祈られ、力を顕現させることのループで、随分と力を高めることが出来、精霊としての格もあげることが出来ました」

「その信仰していた人々はどうなったのかしら」

「……サラセンの大軍に包囲されて、殲滅されました」

「「あー」」


 神に祈れば何んとかなるという発想は、客観的な思考を麻痺させるからね。


「それで、剣の姿で王に献上されたとかなんだ」

「そうですね。それからは、『宝剣』ということで勝利を祈願されたり、勝利の感謝を捧げられたりしていたので、精霊としてはそれなりに美味しい思いもしてきたと思います」


 ですよねー ビルが生きてきた三千年(のうち半分は寝てたんだろうけれど)人間は絶えず戦い続け、弱者が強者に虐げられてきたわけで、それは今も変わらないじゃない? そういえば、何で私は孤児なのか。この村に訪れた私の連れの女性は一体誰だったんだろうか、先生に聞かねばならないわよね。



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