3-20 色々なことを考え、私はメインツに留まろうかと思う
3-20 色々なことを考え、私はメインツに留まろうかと思う
翌日、アム・メインでビータ家へのお土産などを物色し、ついでにビルの衣装に関しても試着だけでもとドンドン行い、昼過ぎまで過ごした私たちは、いま私の川舟でメイン川を下りメインツに向かっている所であったりする。
「貴方様は舟も操れるのですね」
「まあね。二人ならこれでも大丈夫っぽいね」
川の流れに竿を指しながら、私は替わろうとするビルを「座っていてくれる方がバランスがいいから」と説得し、やや前の方に座らせた。どう考えても、ビルが舟の後ろに立って船頭をすれば、舳先が上がるような気がするからね。
川を下るだけなら、そう難しくもありません。合流点の先で左岸に寄せるのがちょっと気を遣うかもしれないけどね。
「風の魔術を用いれば、川を帆をはって遡る事も難しくないのではありませんか」
ビル、私が気が付かないとでも思っているのでしょうか。勿論、やろうと思えば、もう少し大きな帆の張れる舟を用いて川の流れを遡ることも難しくありませんが……凄く目立つでしょうね。私、目立ちたくないのよ!!
「……失礼しました」
「ううん、気にしないでちょうだい。それに、運送ギルドに所属して色々手続きも煩雑になるからね。当然、所属する業者にもやっかまれるだろうし、自分一人で運べる物の量なんてたかが知れているし、それに囚われるメリットが無いからやらないだけよ」
魔術は便利だから、例えば治水工事で私が溝を掘ったり、土壁を築いたりする需要はある。でも、その分、誰かの仕事を奪う事になるし、それで目立って逆恨みされるのは割に合わない。儲かるの依頼主だけだもんね。
「必要があれば力を使うのも吝かじゃないけれど、それを常に求められるのはちょっと違うんだよね」
「……少しわかります。貴方様と短い間ですが共に冒険者をすることで、今までの主とは全く違う環境を与えて頂いていることに感謝しております」
ビルは、魔剣としての役割をひたすら求められる立場にいたのだという。精霊の力、魔力を用いた剣としての力、そりゃ支配者としては有効に使いたいよね。敵を滅ぼし味方を畏怖させる。そんな魔剣な人生に……魔神生に少々嫌気がさしていたのだという。
「ですので、二百年間静かに過去を思い返す時間は悪くないものでした」
二百年……ちょっと長すぎじゃない? まあいいけど。
「旅の仲間に加えて頂き、また、闇雲に人を殺さぬ姿勢、正義を押し付けぬ貴方様の振舞いにとても心地の良い思いをしているのです」
「それはそうだよ。私は、自分の生まれを調べる旅をしたいから、名前を売る為になにかしたりするつもりもないからね。そういう意味で、冒険者としてのランクを上げるくらいしか行動範囲を確保する方法がみつからないから、そうすることになりそうだけどね」
だけど、野盗騎士は……皆殺しだ!! だって、悪い奴だもん。埋めてもOK☆
川を下りながら、ビルと私はこの後の事を取りとめもなく話すのであった。
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メインツに夕方前に到着した私たちは、蛙亭に十日ほど泊る予約をした。プルと少し一緒にいたいのと、依頼した剣が仕上がるまではゆっくりしても良いかと思ったからだ。
メインツであれば帝国内だけでなく王国の事も情報を集めやすいし、ビルの二百年前の情報をアップデートする時間も取りたかったからでもある。
アム・メイン土産を持って、十日ほどメインツに留まることを伝えにビータの家に立ち寄った。
「……明日は一緒にいられる?」
プルは嬉しそうに笑顔で迎えてくれる。
「ええ、明後日もその次の日もね。一緒に宿に泊まろうか」
「うん、そうしたい……けど……」
「良いわよ、プルちゃんのしたいようにしなさい。私たちはその方が嬉しいわ」
おば様も喜んで送り出してくれそうで何よりです。ビータ? 実家にいてください。
元々一緒に泊まらないじゃない。
「えええ、私も黄金の蛙亭で食事してみたいんだけど……」
「メイヤー家の皆さん招待すればいいかな。お礼を兼ねて」
「あらー 悪いわねー あそこのシェフの川魚のポワレはー」
おば様、狙ってらっしゃいましたわね。ええ、この程度でお礼になるならよろしくてよオホホホホ。だって、白金貨でたんまり謝礼を貰っている私からすれば、城でも買おうかってくらいの感覚ですから。ドンと来なさい。
あー もしかして先生ってそういう感じであの場所に居を構えているのかもしれないね。村と交流があればある程度自活できるし、そもそも不便な場所にあるから、何か異変があっても対応できるし……周りは私の魔術で城塞化されているしね。
か、金持ってるんですね先生!! 師匠? 師匠は『晴猟雨飲』の生活だよ。雨降れば酒が飲めるとばかりに喜んでたよ。え、狩りの後は晴れてても飲みます。
「その後はまたビルさんと旅に出るのかな?」
「そのつもり。今、エッセのドワーフに剣を誂えてもらっているから、それが完成してから、低地地方に行くつもり。でも、アム・メインの見本市の予定に合わせて戻るつもりだから、そんなに長い間はいないつもり」
「あー 私もそれ行きたいんだよねー」
メイヤー商会はあまり関係が無いので行ったことが無いのだそうだ。まあ、そうだよね、ご近所が見本市に集まるってのはおかしな話だ。南の国と北の国の商人が商談するような催しだもんね。
翌日、ビルは自分探し……情報収集に向かわせることにして、私は二人と修道会に向かう事にした。今日もシスター・エリカは外出中である。避けられているわけではないと信じたい。
「薬草畑、良くなったでしょ?」
「そうね、まあ、あのときは酷かったから」
「えー」
薬草根こそぎ刈り取った馬鹿がいたじゃない? なにも生えていないのは薬草畑と言って良いのかと私は思う。
「プルも頑張ったよ」
「そうだね、頑張ったね」
「えへへ……ねえ、プルも一緒に冒険したい」
ですよねー 冒険者登録は見習含めて数えで十二歳以上なんだよ。どう見ても君は無理だ。
「年齢制限があるんだよプル。あと……六年くらいは無理なの。その間は、この周りで定期的に戻ってくるから、心配しないで良いよ」
「……うん、早く大きくなって……一緒に冒険できるように頑張る……」
プルの場合、日焼け対策とかそういうの含めて考えないといけないからね。今だって、大きな麦わら帽子に、筒形の手甲脚絆を付けて肌をあまり露出しないようにしている。
「あとは、日に焼けないようにする方法を考えないと、いけないね」
「何かないの?」
ビータ……自分が日焼け予防に使おうって思ってない? 舞台の化粧の道具を応用して肌の色を変えることはできるけど、長い時間つけたままだと、肌が荒れてボロボロになるんだよ。ま、ポーションで治るけど体にはよくない。
「……なるほどね」
「ある程度成長すれば、耐久力も増えるしね。体が小さいと、大人より体温を奪われやすいし、そもそも同じ歩幅で歩けないから冒険は難しいよ」
「……わかった……大きくなるね!」
これで、好き嫌いもなくなるんじゃないかな。大きくなれないって殺し文句だよね。あー 胸を大きくする食材ってやっぱり乳製品かな?
翌日、蛙亭にメイヤー御一家を招待し、私たちはささやかに再会を祝った。
「ビルさんって、とーっても素敵な男性ね」
「おいおい、夫の前でそれは無いんじゃないかな」
「あら、あなたも若い頃はビルさんみたいだったわよー」
奥様、娘と息子が横で「ないない」してますわよ。あら、ご馳走様です。
「それにしても、見事な体だね」
ええ、精霊様ですからね。髪の毛だってふっさふっさです。まあ、髭禿モードもあるんだけどね。
「傭兵や雇われ騎士として働いておりましたので。この年で冒険者を続ける程度の腕前です」
「つまり、ヴィーを越えるほどの魅力のある主が見当たらないって事ね☆」
ビータさん、掠ってます。そうだよ、まあ、この人は二百年ぶりに世の中に出てきて今リハビリ中だから。まあ、私が死ぬ頃には新しい就職先も見つかる事でしょう。
「確かに、ヴィーとの冒険は中々楽しいですね。彼女は……人にやさしい」
「そうだね。そこを見てくれている人なら、とても安心かな」
「……プルも安心……」
そうかな、そうかもね。まあほら、悪党どもは地面の下に封じ込めるからね。それでも、ちゃんと条件付けはしているんだよ。話をして改心の余地や余罪からして生かすのが不味そうな……あと、身代金払えないやつね。お金で大体の事は解決するんだよね。
「いつでもメインツに居を定めると良いよ。その気があるなら、住まい探しはメイヤー商会が協力させてもらう」
「ありがとうございます。プルが冒険に出られるようになるまでには……そうできるようにしたいと思います」
確か、ここの市民になるにはある程度財産がないとなれないんだよね。
白金貨十枚くらいでも大丈夫なのかな?
そういう感じで、ビータとプルとのささやかな再会と皆さんとの食事会は楽しく進んで行ったんだ。
まだまだ、私の旅は始まったばかりだ!!
à suivre
これにて第三幕終了、最初のお話は完結となります。
続きは、メイン川を下りとりあえず海を見に行くことになりそうです。
四幕の投稿前にスピンオフも投稿します。ヴィーの友人ビータとプルのお話です。「不埒な婚約者に失踪され、実家を出される私は仕事探しに街へ出る~ 『就活乙女の冒険譚』」もよろしくお願いします。下のバナーから移動できるようになるので、よろしければそちらもご一読ください。
【作者からのお願い】
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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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