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3-14 何者かに襲撃され、私は護衛として殺さないように努める

3-14 何者かに襲撃され、私は護衛として殺さないように努める


 翌朝、馬車が出発準備を整えている中、私はベンにさりげなく近寄る。既に夫人と共犯者は馬車の中に乗り込んでおり、出発準備をジョンが整えている。アルノーはビルが弁えて話しかけてくれているので、問題ない。


「ベン、今日の目的地のヴィゲンの手前の谷間がちょっと危険だと思うんだけど、どう思う」


 ベンは深く頷く。どうやら、山賊の類が出やすい場所であることは馭者の間では有名なのだそうだ。


「だが、騎士が二人、あんたたちもギルドお勧めだけあって腕が立つようだし、まあ、問題ないと考えるのが妥当だろう。気になるのか?」


 この数日で、私とビルはベンに信用されたようで何よりだ。


「夫人が、少々訳ありで誘拐される危険性を考えている」

「なるほど。貴族の夫人であれば、身代金もはずむってもんだ……そりゃ、危ないかもしれんな」

「ベンは、素性を知っているのか?」


 ベテラン馭者は首を横に振る。当然情報としては知らされていないが、恐らく伯爵以上の夫人だろうと身に着けている者から推測できるという。


「質素だが質の高いものだな。要は「君主」と呼ばれる家の女性が身に着ける物だという事だ。見る目はあるつもりだ。それなりに貴族の夫人も御客で乗せているからな」


 騎士に毛が生えた程度の男爵や、城を護る城伯(王国では子爵相当)の下位貴族と伯爵・公爵では生活水準が全く違うらしい。知らんよそんな世界。ベンは、やはりベテラン馭者としてそれなりに経験があるのだろう。


「おまえさんの提案は承知した。こちらも命は惜しい。谷の入口で一旦停車して休息を入れるようにする」

「なるほど、それなら否定できないね」


 快く提案を受けてもらえ、一先ずは安心だろう。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 馬車はゴブレットを発ち、ヴィゲンに向けて出立する。


 私はこれまで通り、先行し薬草を採取しつつ、安全確認を行う。まあほら、お約束だからね。前日まで見え隠れしていた斥候も今日はほぼ姿を現さず、恐らくは、待ち合わせ場所近辺で集結しているのだろう。


 後方に騎馬の主力、前方に槍兵中心に足止めの荷馬車組、左右の森には弓を持つ斥候組が待ち構えているのだろう。足止め6、弓6 騎馬4といったところだろうか。


 ベンたちには攻撃が始まったら馬車の下に隠れてもらい、後衛はビルに抑えてもらって、その間に私が弓持ちを始末していくことにしよう。ま、騎士の腕にもよるけれど、私の弓ならプレートも貫通可能だ。椎の実型の鎧通しを使えばだけどね。


「先行します」

「ああ、気を付けてな。谷の手前で必ず止める」

「お願いします」

「えっ!」

「ジョン、てめぇは黙ってろ。後ろの客にもだ」

「へ、へい。承知しやした」


 ベンも自分の命がかかっていると分かって、助手のジョンを黙らせる。もしかして、初めての経験ではないのかもしれない。





 昼の休憩までは問題なく進み、午後の早い時間に谷に差し掛かることになりそうだ。


「どうです、気配は」

「全然いなくなった。待伏せに加わっているのだとしたら、それほど多い数ではないのかもね」

「なるほど……割ける人数に限りがあるというわけですね」


 多分、手練れの分、人数に余裕がないという事と、この道は一本道なので、馬車の移動速度と距離で到達時間が特定できる。視界ギリギリからこの場で休憩しているのも観察されていると思われる。


「ベン達には話をしてあるので、ビルは後方の警戒をお願い。恐らく、騎馬で四人くらい襲ってくると思うんだけど、かなりの腕前だと思う」

「問題ありません。ヴォージェで叩き伏せるまでです」


 ヴォージェってそういう使い方じゃないと思うよ。三国志じゃないんだから。今の外見のビルなら、趙雲とか錦馬超みたいなイメージだよね。イケメンは正義。髭禿げモード? 華雄とかじゃないかな。


「どうした? 心配事かい」


 アルノーが話しかけてくる。勿論、貴方の命が心配ですよ。


「はい。この先の谷の部分が襲われるとすればポイントになると思うので、その簡単な確認です」

「……そうだね。まあ、騎士と傭兵が騎乗で付き従う馬車だから、普通の山賊なら避けると思うよ。用心に越した事はないけどね。よろしく!」


 爽やかな笑顔で声を掛け去っていく。もし、万が一、仮にアルノーが共犯だったなら、私は人間不信になる自信がある。まあ、バーン兄さんの件で、今でも十分人間不信だけどね。


「そろそろ、出発しねぇと明るいうちにヴィゲンに付けなくなるからな。出るぞヴィ、ビル!!」


 ベンから声を掛けられ、私は先触れよろしく、馬車に先行し走り始めた。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 谷の手前で左右の森を様子を見ながら中に分け入る。木が生い茂り、見通しがかなり悪い。街道を真新しいしっかりしたブーツと思わしきかなりの数の足跡が残っていた。このまま街道を進むと良くないと考え脇に逸れたんだよ。


 恐らく、待伏せ地点で荷馬車か荷車を街道を塞ぐように据え付け、左右に兵を伏せて待伏せにするつもりなのだから、あえて森の中を進むことはないと考え、分け入ったんだよ。


 木立の合間を進むと、いらっしゃいました弓持ちの皆さん。多分、こっちに三人、街道を挟んで反対側に三人ってところだろうな。さて、こいつらどうするか。


 背後から足音と気配を消し近寄る。そして、三人の周囲に防音結界を展開する。


静寂(silentium)


 そして、それぞれの弓兵にスタッフで脛を全力で殴りつける。


「ギャー」

「いっでぇぇぇ!!」

「だ、誰……がぁぁぁあぁ!!!」


 鉱山奴隷にするにも、足が不自由なのは足枷つけるんだから問題ないと判断し、脚の骨を痛めつける・折ることにしました。ほら、商品価値が下がらない良い方法でしょ!


 ギャアギャア煩いので、喉元に杖の先を叩きつけ、声が出せないように……あ、悶絶してるかぁ……まあいいや。


 手足を縛り、猿轡をかまし、逃げられないように落し穴の中に叩き落す。まあ、死ななきゃいいよね☆


 武器を魔法袋に収納。確か、盗賊を捕えた場合、盗賊の財産も盗まれた対象が自分の財産だと証明できない限り捕えた冒険者のものになるんだよね。私知ってる。


「気が向いたら、拾いに来るから、それまで大人しくしてなよね。騒ぐと殺すよ」


 必死に穴の底で頷く三人の盗賊。


 再び、自分に静寂の魔術を掛け、更に『疾風(sturm)』をかけて道の反対側に移動しているんだが……あれ、護衛していた馬車が猛スピードで進んで来るんだが、ベンはどうしちゃったんだろう。


 目をジッと凝らすと、ベンの横に座っているのはジョンではなく……おっさんの騎士だ。剣を突きつけ、馬車をかなりの速度で進ませているようだ。


「はぁ、ばれたか、元々そのつもりだったのか知らないけど、隠す気ないんだね。もしかすると……」


 夫人の実家と嫁ぎ先が最初から話を通していたのかもしれない。アルノーと夫人以外は全員知っているってことか誘拐。面倒なことになった。まあ、盗賊は皆殺しだけどね☆





 既に目の前には荷馬車が横向けに据えられ、ハルバードを構えた帝国傭兵らしい男が数人、構えている。馬車の背後には馬の嘶き、恐らくはビルとアルノーが街道手前で騎乗の賊と相対しているんだろう。


「面倒だけど、あれやるか……」


 私は、魔法の袋から何時もの弓を取り出し、矢を構えるのだが、矢の先には鏃の他に短い筒が装着されている。


「爆導索でいきましょうか」


 所謂、火薬を詰めた筒を矢で飛ばすという簡単なものです。


 小火球の魔術を唱え点火すると、次々と爆導索を荷馬車に向けて放つ。荷台に、馭者台に次々と矢が突き刺さり、間髪入れずに爆発、煙で周辺の視界が白くなる。


 馬車の馬が棹立ちになり、速度が低下するどころか……ドリフトしてるんですけど……あ、騎士落ちた。ざまあ!!


 私は視界が晴れる前に、街道を挟んだ向かいの森に潜む野盗の弓持ちの元に走り寄り、時間もないので簡単に、首の後ろにちょこんと切り傷を作ってあげる事にした。


 まあ、こいつら金になりそうにもないからいいか。あとで、身包み回収すればOKだと思う事にしよう。






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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


― 新着の感想 ―
[良い点] 首の後ろにちょこんと切り傷(致命傷)
[良い点] 盗賊たちの処理の手早さ、下調べという下ごしらえ(?)の的確さ、痺れます!! 合理的だな~と毎回感心しています。流石。 この襲撃の経緯も終わればわかるかな…続き楽しみです!
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