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3-13 何かに追跡され、私は護衛としてどうしようか迷う

3-13 何かに追跡され、私は護衛としてどうしようか迷う


 護衛する馬車は、振動を軽減できるように、『貫革』と呼ばれるハンモックのような構造で馬車の上に客室を載せているので、直接振動を感じるよりは幾分楽になっている。馬車は四頭引きだし、ブレーキも付いているので、いざという時は飛ばせるようになっているのだろう。いざって、どんな時よ。


 翌朝、宿に馬車をつけ乗客を載せる。もう定期便じゃないよねこの馬車。


「ある程度融通は利かせる。それなりに配慮もあるんでな」


 アルノーは指で輪っかを作っている。世の中お金次第で何とでもなるんだよ。女性は三十手前くらいの奥様って感じにみられた。つまり、貴族の夫人か未亡人だ。あまり派手なドレスではないので、後者かもしれないが偽装かもしれない。


「今日は長い時間乗る事になるから、気を引き締めてな」


 ビルから声を掛けられ馬車が進み始める。最初の街を出てしばらくは、馬車の後部のステップに乗るんだよ私。


 バンは、怖い奥さんがいるので自分の家に帰れずホテル暮らしを余儀なくされている旦那が住むような街……箱庭みたいで可愛いけれど人間味が感じられないので住むのはパス。滞在するにはコロニアより治安とか住環境がいいので次からこっちに泊まろう。


 え、だって、走ったら十五分くらいだよ私。どうせ入場税無料の冒険者だから上手に使わないとね。




 どうやら、昨日より今日は馬車のペースが速いようだ。昨日は貴婦人の体調を見ていたんだろうね。ビルの判断でペースを上げたみたいだ。私もちょっと先行する速度を上げる。


 路上に賊らしき多数の新しい足跡は無く、街道と並行して森の中から様子を見ている奴らがいるのは相変わらず。気配は二人か三人で入れ替わりながら追いかけているようで、今日の襲撃じゃないと思われる。じゃないと、そんなに追跡に人数を掛けるわけがない。





 ビルと昨晩話したのは、この先にある街道の狭隘地の前後を塞ぐ形で挟撃されるのではという想定だ。人数は恐らく十数人くらいだろうか。でも、その人数を掛けるなら、もっと大きな商人の集団を襲う方がお金になる。その人数で襲うと、金貨五十枚程度の財貨が得られる。商人の身代金を含めれば更に大きな額になるだろう。


 そう考えると、日当銀貨五枚、銀貨二十五枚の報酬は少ない気もする。襲われない前提なら問題ないが、襲われるなら十倍くらいほしい……気持ち的には。因みに、捕まって死刑になった傭兵崩れの下っ端盗賊の取り分は、金貨五十枚のうち銀貨五枚だったんだそうだ。


 銀貨五枚くらいで女の人を強盗殺人したり、家に火を付けたり滅茶苦茶やっていたらしい……まあ、死刑で当然です。盗賊は……皆殺しだ☆


 私、盗賊(Robber)殺し(Slayer)になろうかな……ほら、世界が滅びる前に、盗賊は村を滅ぼすじゃない? ゴブリン殺しても大した金にならないけれど、賞金首ならそれなりのお金になると思うの。鉱山奴隷もあるから、一粒で二度おいしいかもしれない。


――― これから、ロブスレさんて呼んでもいいよ☆


 そういえば、トラスブルからこっちに来る時に、偽コボルド団討伐しているから、実績がないわけじゃないんだから、あと二回くらい実績を上げたら堂々と名乗ろう。ロブスレ王に俺はなる。


 今回の偵察に出ている奴らが、本格的なのが気になるところ。師匠ほどじゃないけれど、かなり巧妙に追いかけてくる。いやー こんなところで師匠と山の中で追いかけっこした経験が役に立つとはー


 いや、たぶん冒険者としてこういう事があることを見越して仕込んでくれたんだと思う。稜線越しに見え隠れだから弓で狙っている間に逃げられるし、かといって、追跡するのも億劫だから、仕掛けてくる場所を特定して、そこでこっちの護衛で迎え撃てるように事前に打ち合わせした方がいい気がするんだよね。


 あれじゃないかな、盗賊騎士とかいう傭兵と黒騎士が組み合わさった奴らなんじゃないのかね。あいつら、誘拐が主な仕事だから、狙われている可能性がある。とすれば、馭者か護衛がグルの可能性が高いから、その辺り、情報を別々に伝えて反応を見るのが良いかもしれない。


 なんか、楽しくなってきたよ。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 昼休憩時に、気になることがあると一先ずビルに状況を伝える。


「皆殺しですね」

「いいえ、下っ端以外はお金になるので、生かして……半殺しで捉える。腕の一本くらい斬り飛ばしても構わないよ」

「承知しました。首の一本なら余裕です」


 腕だよ腕。首飛ばしたら、デュラハンじゃないと死んじゃうよ。


「他の者たちには伝えるのでしょうか」

「明日ね。時間をずらして馭者と護衛に別々に異なる情報を与える。その反応を見て内通者を予測したい」


 ビルは頷き同意を示す。


「……なるほど。相手の腕前はどうでしょう」

「かなり立つと思う。人数は二十人は越えないと思うけれど、半分くらいは傭兵でも金になる奴らだと思う。だから、戦争に行かずに指名依頼を受けているのだから、相手の背後には夫人を誘拐してメリットのある貴族がいるんじゃないかと思うんだよね」


 確実を期すために、実力のある黒騎士に依頼したんだろう。もしかしたら、戦地から呼び寄せられたのかもしれないね。


「内部に協力者がいる場合、どう対応しますか」

「考えながら護衛するよ。夜にもう一度話をしよう。出来る限り、ビルもアルノーから護衛対象について聞き出しておいて」

「承知しました」


 ビルは見た目も貴族っぽいし、言葉遣いも丁寧だから、そろそろ相手の騎士も気を許し始めるはずだ。護衛対象と二人の騎士の関係性が分かれば、どっちが内通者か予想ができる。


 馭者の場合、もっと野盗野盗しているのなら黒だと思ったが、多分関係ないと思われる。どう考えても、馬車の中身以外皆殺しにするつもりの戦力だもん。私とビル含めてね。





 昼食も終わり、私はご機嫌で素材採取をしつつ先行し偵察する。弓でも射かければ面白いんだけど、気が付いているかいないかを伝える必要性も感じないので黙って見過ごす。


 監視の人数が減少しているのは、恐らくシナリオ通りに事が進んでいると判断したからだろう。良き事かな。


 私が想定している襲撃場所は、ヴィゲンの街の手前10㎞程の場所にある狭隘な山地を通過する切通のような地点だ。『フンスリュック』と称される山並みの東端に位置する。それ以前の場所も似た場所があるのだが、谷が長く屈曲していることで視界が妨げられる故に、待伏せにはもってこいの場所になるだろう。

 

 どうせ、前方を荷車かなんかで塞いで、後方から馬で襲撃、頭上に伏せた弓で威嚇し護衛を排除するという手立てだろう。芸がない。


 いや、基本って大事だよね。襲撃の基本、誘拐の基本だね。逃げ道を塞ぎ、数的優位を最大限に生かすプロの仕事。相手が並の冒険者なら死んで終わりだけれど、そうはいかないんだな。




∬∬∬∬∬∬∬∬




「へー 主人の子供の頃からの側近で親友ね。それがアルノーと夫人の夫の貴族様の関係か」

「馬車の中の騎士は、夫人の幼少期からの護衛兼侍従だそうです。実家から連れてきたそうです」

「夫人も高位の貴族の娘か……」


 パルドゥルね、思い出してあげてください。


 馬車組と別れ宿に入った後、私は、明日が正念場である理由を説明する。


「そうですね、山間を通過する街道になるという事であれば、そこが最も襲撃者にとって有利でしょう」

「数が気になるわね」


 恐らくは十五人くらい、多ければその倍ほどだろうが、星二つの冒険者に、内応騎士一人を除いた騎士一人であれば十五人も出せばお釣りがくる。伏せる数も多ければ気が付かれるし、腕の立つ人間だって限りがある。頭数にしかならない雑魚三十より、腕の立つの十五の方が仕事がしやすい。


「でも、馬車の終点が目的地ではないんでしょ?」

「はい。迎えが来るようです」

「なるほど、メインツからアム・メインまでは距離もないし治安もいい。兵を伏せる場所もないもんね。やっぱり、明日の待伏せで間違いないわ」


 さて、どう処分するか……ほら、殺す方が良いのと、誘拐……じゃなくって決闘フェーデ扱いで身代金がもらえる方が得だよね。戦場で捕まった騎士の身代金って騎士の年収相当なんだってさ。貧乏騎士ならたかが知れているだろうから、やっぱ鉱山奴隷に売却かな。


 勿論、下っ端は公開処刑だよ☆ 庶民の娯楽があんまりないからね。最後に、世の中に貢献できるって、素晴らしいね。好き放題他人に迷惑掛けて生きてきたんだから、最後くらい喜んでもらえるように努めてくれ。


「どのタイミングで説明しますか」


 ビルの確認はごもっともだね。恐らく共犯でない馭者には朝の出発時点で予想される襲撃場所と、一旦馬車を谷の入口で停車させ、私が先行する旨を伝えようと思う。


 騎士? まあ、谷に入る直前で停車させた後に理由を説明すればいい。そこで、「つべこべ言わずに馬車を進ませろ!!」とか言ってくれると楽で助かる。夫人と同乗している分には問題ないからね。だって、誘拐すべき対象を殺しはしないでしょ? 夫人と共犯騎士以外は皆殺しのつもりだろうけどね。



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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


― 新着の感想 ―
ヴィーの分析力がスゴ過ぎて、もう8割くらい解決していないか? (賊ごときに、ヴィーたちが負ける理由は一つもない)
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