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3-04 コボルドチャンプは全力で打破ろうとし、私は軽く捻り潰す

3-04 コボルドチャンプは全力で打破ろうとし、私は軽く捻り潰す


 目の前のデカいコボルドは、ロードではなくチャンピオンのように思える。つまり、支配種ではなく上位種の強化版と言えるだろう。首から下は古代の蛮族の勇者のような体つきだ。シュワちゃんとか? 炭水化物をやめてタンパク質中心の食事してない?


『ドチラカ死ヌマデダ!!!』


 いや、ここ掘れワンワンしたら、あんた今すぐ死んじゃうからね。でも、力の強さで認めさせないと、この群れのボスになれそうにもないので面倒だけど力を示さないといけないね。


 さて、こんな事もあろうかと、先日のオーク討伐で見つけた棍棒の逸品を私は魔法の袋から取り出す事にした。


戦棍棒(FightClub)


 オークの戦士であれば片手で振り回せるサイズの大型の棍棒。その先端は、やや円錐形に膨らみ金属のバンドで補強されている。その金属のバンドに金属の突起が数個ずつ付いている。尖ってはいないが、メイスのようにダメージはそれなりに受けるだろう。


 私は、先ずは両手で持ちクルクルと回す。そして、勢いよく右手で持ち振り回してみる。ピィピュンと風切り音がする。悪くないと思う。


『……』

『どうしたの? あんたはその大剣でいいのか』

『モ、モチロンダ!! イ、一撃デキメテヤル!!!』


 ツーバイハンダーと言うよりはバスタードソードを分厚い刀身としたような不格好な剣をチャンプは構えた。黒い剣士ならぬ、クロっぽい剣士。だって名前を付けるなら『クロ』ってつけたくなる様な見た目だから。


 クロの剣は、幅広で真ん中に太いフラーのある両手でも片手でも扱える直剣。剣の鍔元三分の一ほどは握り込める様に刃を付けていない、蛮族が喜びそうなデザインだ。


 片手でクルクルと回した後、両の手で大きく振りかぶり構える。勿論、この剣先を受け止めるなんてことは……多分しない。しないと思う。しないんじゃないかな。


『Wooooooo!!!!』


 振り下ろす剣先を左右に体を捻りながら斜め後ろに動きながら体を躱していく。相手の足さばきに合わせて。だがしかし、バスタードソードの間合いは両手と片手で大きく変わる。その間合いの変化を利用し、翻弄する武器でもある。両手で散々振り回しておいて、ここぞというタイミングで片手で突いてきたりするのだ。


 ほら! こんな風に。


 ガギッと棍棒で下から剣を跳ね上げ、一気に前に出る。待っていたのだよこの、マッチョボディーが突きを放つ瞬間、剣を片手で持てば、当然、下から跳ね上げた力を抑え込むことはできない。剣を下から跳ね上げられ、体が流れるワンワンマッチョ。


『Gyaiiii!!!』

『それそれそれ!!!!』


 両手で戦棍棒を持ち、突き薙ぎ払う。鳩尾に突きが決まり、後ろに吹き飛ばされ、更に左右の脇腹に棍棒の容赦のない打撃が加えられる。ああ、こんなに叩かれたら、晩御飯は食べられないだろうね。


『Wgaaaaa!!!』


 更に懐に踏み込んで、柄を持ち替えて顎下から跳ね上げるように突きを繰り出す。跳ね上げられた顎、そして、肘打ちを再びボディーに決め、ワンワンが後方に吹き飛ぶ。


『どう、その飾りのような頭をこの棍棒で叩き潰してやろうか?』

『……ナ、ナンデ、コンナニ強インダ』

『虎は生まれつき強いものだ。それに理由があるのか?』


 私は、片手に煙管でも持っているかのように見得を切る。周りのコボルドが息をのむ。


 そして、チャンピオンは耳をペタンと塞ぐと『コ、降参スル……』と、群れの主として取るべき選択をしてくれた。さて、今日から君たちは、オリヴィ・グループの主要なメンバーだ。是非、私の為に鉱石を採取してくれ給え!!




∬∬∬∬∬∬∬∬




 何事も権威付けというものには、手順って大事だと思うの。私は、コボルドたちを『土牢』から解放し、先ほど叩きのめしたコボルド・チャンピオンに回復の為のポーションを与える。


『Gawawawa。コ、コレハ……』

『回復の為のポーション。飲むといい』

『ハ、有難キオココロヅカイ、カンシャイタシマス。「我主(My Lord)」』ワンワン頭たちが一斉に頭を下げる。おう、群れの主がこいつから私に変わった……いや、群れの主の支配者となったという事だね。


『お前に、名を授ける』


 私は、名前がないと呼びにくいので、なんかよい名をこのデカいコボルドにつける事にした。何が良いかね。


『今日からお前のことを、ヴォルグ と呼ぼう』

『ハッ、アリガトウゴサイマス!!!』


 周りのコボルドたちが遠吠えを始める。うるさいんじゃ!! と思いながらも、嬉しそうに声を合わせるので大目に見る事にした。今日から可愛い子分どもだからね☆


『そして、この群れの指導者の証として手づからこのツルハシを与える』


 これは、こんな事もあろうかとダインのおっさんに「採取用に道具クレ」と言ってただで入手した、ダイン謹製のツルハシをヴォルグに与える事にした。これで、ここ掘れワンワンだヴォルグよ。


『ナッ、ナントイウ誉…… 身ニ余ル光栄デゴザイマス!!!』


 再び、コボルドたちが声を合わせて遠吠えをする。うん、だから煩いんだって。





 さて、交渉を始めるとするか。交渉という名も命令でもあるんだけど。


『で、早速、この鉱山で採掘をしたいんだけど、協力してもらえるかな?』

『YES MY LORD』


 という事で、魔銀の鉱脈と水鉛の鉱脈を探す事にした。幸い、魔銀は銅の鉱脈に近いところに見つかったので、銅鉱石から銀と魔銀を分離することにする。銅鉱石は採掘できるみたいだね自分たちで。


 水鉛は石英の鉱脈に含まれているので、これも別の坑道で採掘できる。これはコボルドたちに任せ採掘してもらう事にした。





 今まで採掘して利用できていなかった鉱石を坑道から表に出してもらい、ある程度私の魔術で精製することにする。灰吹き法? 魔術で似たことは出来るんだよ。骨粉で作った皿とかいらないから、こっちの方が経済的だ。


「土の精霊ノームよ我が働きかけの応え、我の欲する鉱物を分け給え……『錬金(alchemia)』」


 といとも簡単に、銀・魔銀・石英・水鉛・その他の鉱物と分けることができました。土の精霊さんたちメルスィー・ミル・フォア!!


『オオオ……』

『じゃあ、このいらない石ころを坑道の外に皆で積み上げてちょうだい』

『YES MY LORD』


 ボタ山……鉱石の場合ズリ山っていうのかな。いらない鉱石を積み上げることで出来る石ころの山なんだけれど、これを使って、坑道の入口を隠蔽する崖を作ろうと思っている。


 このままコボルドが坑道を占拠しているのは問題なんだろうけれど、元々需要が無いから放置されていたり、採掘するコストがかかりすぎるので、放置されていた坑道だから、私が騒がなければ元のまんまだ。


 そもそも、魔銀鉱と魔鉛鉱を採取することが依頼内容で、その手段がコボルドの排除なんだから、しないで採取できるなら問題ないんだよね。だから、坑道の入口を隠してコボルドたちを隠蔽する事にしたわけです。


 イメージは城の甕門です。正面から坑道の出入り口が見つからないように正面を人工の崖の壁で覆うことにする。


「ちょっと、素材を集めないと……まあ、あるもので作ってみるか」


 私は、『モッコ』を作る事にした。木の棒にハンモックみたいに布を吊り下げて石とか土をまとめて運ぶ道具だよ。コボルドも、手で持って運ぶとか大変じゃない? ただ命令するだけじゃなく、作業環境も整えるのが良い主人の仕事だと思うの。目指せホワイト鉱山。


 という事で、モッコを三つばかり作ってみました。魔法袋の中にある丈夫な綱と麻袋を使ってね。


『コレハ……』

『二人一組で真ん中の袋の部分に石を載せて担いで運ぶんだよ。人間の

鉱山では使ってるんじゃない?』

『素晴ラシイ……我ラニ下賜シテイタダケルノデショウカ』


 いや、そんな大したもんじゃないよ? たくさん作るには道具がいるから、ちょっと時間を貰うからね。それに、エッセの街で買えば不審に思われるから、隣の大きな街で買い物することにしようかな。


 精製した残りのボタを洞窟から少し離した場所に積み上げさせる。いきなり洞窟全てを隠すほど積み上げられないから……


土壁(barbacane)

堅牢(adamanteus)



 という事で、正面から洞窟の入口の下半分が見えないくらいの『斜面』を作り上げた。幾つか洞窟の左右にも作って入口を見えにくくするようにしないとね。


 私は、追加のツルハシと、モッコを用意する約束をし、一先ず魔銀鉱山を後にすることにした。人が頼れないなら、魔物を仲間にするっていうのも一つの手段だよね。人間は利益で裏切るけれど、魔物は強者に服従する性質があるから、裏切ることは……あんまりないんじゃないかな。






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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


― 新着の感想 ―
定期的に廃鉱山の管理をしないと、増えたコボルトの中から、コボルトキングが新たに生まれてくるかもしれない
[良い点] 「狼」「魔術師」なんて格好良い名前つけてもらえてよかったね(๑╹ω╹๑) 名付けの効果でコボルトからウェアウルフに新化…ないか(・ω・)
[良い点] コボルトを仲間(部下?支配?)するなんて! 流石ですね!やるなー!!
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