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『灰色乙女の流離譚』 私は自分探しの旅に出る【完結】   作者: ペルスネージュ
『大司教座都市メインツ』

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2-19 メインツに別れを告げ、私は再び旅立つ

2-19 メインツに別れを告げ、私は再び旅立つ


「ということは、コロニアまで行くのは良いかもしれないけれど、私の希望をかなえられるのはエッセまで行かなければ難しいだろうということですね」

「はい。コロニアは商都なので、武具に関してはそれなりの身分の方が使う装飾品に近いものの扱いが多いのです。それに、今は戦争が各地で起こっておりますので、諸侯や固定のお客様の需要を満たすことで精いっぱいでしょう」


 メインツでお安い中古の武器を買い漁る私は、バゼラードをまとめ買いしたお店に足を運んで相談したところ、こんな風に言われている。職人も多いが、武具としてよりも身分の高い人用の見栄えのする装備を作るところが多いのだそうだ。


「フルプレートなら、城が買えるほどの価値のあるものも作りますから」

「それは……客筋が違いますね。お奨めはどこでしょうか」


 店員曰く、メイン川を更に下り支流のエム川をさかのぼったところにある小さな街だという。そこならコダワリの鍛冶職人ドワーフも多いという。


 私は良い事を思いついた。ドワーフの職人になら、ベーメンソードの良さが分かる人がいるかもしれない。それに、私の魔銀剣を見せて、この武骨なデザインで魔銀剣を作れないかと持ち掛けてみるのだ。恐らく、ルーン文字を刻んだりして凄い物を作ってくれる気がする。何でも真っ二つにしちゃう怒らせると怖い女を目指すには、それっきゃないだろうね。


「鉄の鍛造で職人が集まっているのは『エッセ』の街だ。メイン川の中流から少し東に行ったところにある。コロニアの先だから、コロニアの武具屋なら顔が繋がるかも知れないね」


 なるほど、そこでは石炭が取れるらしい。鉄を高い温度で加工する為には木炭より石炭の方がいいのだ。錬金術では常識です。最近は『銃』の製造が盛んになっていて、ヒトモノカネが集まっているんだってさ。面白そうです。


 元々、貴族の子女の為の修道院の建てられた場所に市が開かれるようになって、そこに街が作られたことがエッセの歴史の始まりだという。五百年以上の歴史があるものの、街が発展したのはその半分くらいの時期だという。今では、修道院と街の市民が主導権争いをしているという事なので、あまり買い物以外で関わらない方がいい気がする。ギルドも行かない方がいいかもね。


「街の大きさはメインツの数分の一程度と小さいけれど、職人と修道院の街だから住んでいる人たちは限られているんじゃないかな」


 街の大きさは一キロ四方くらいなのだそうで、確かにメインツは三キロはあるからかなり小さな街ではある。いや、密集度が相当高いのだろう。メインツは司教座都市であることや古代帝国時代の街を元にしたゆったりとした設計の都市だが、壁だってただじゃないんだから、小さく作りたいのは良くわかる。住みたくないけれど。


 やっぱ住むならメインツかなー 知り合いもいるしトラスブルも近いし。





 因みに、何故ドワーフが『エッセ』に住みついているかというと、元々この地には魔銀の鉱山があったのだという。その魔銀の副産物としての鉄などの卑金属、さらに豊富な石炭を用いて鍛冶を行っていたのだが、近くに市壁をもつ修道院につらなる街ができるというので移住してきたのだという。


 つまり、この地に住むドワーフたちなら、魔銀の剣を新しく作る事もできるのではないかということなんだな。まあ、偏屈者が多いみたいだから、どうその気にさせるかって考えると面倒だけど。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 事の次第をシスター・エリカに報告する。だって、知り合いいるかもしれないじゃない? 冒険者ギルドは多分関係ないけれど、修道院なら……関係あるかもしれない。


「そうですか。あの修道院は少々特別なのです」


 貴族の子女の為の修道院であり、かなり厳格な戒律を持っているお嬢様・貴族の未亡人専用なのだそうで、紹介したくても貴族でない者を紹介する事ができないのだという。親戚がいるわけでもないから、それはないか……ないよねー


 帝国皇帝の孫娘の為に五百年くらい前に建てられたみたい。そりゃ無理だ。庶民は近寄っちゃなんねぇな。


「コロニアの修道会は同じ会派のものがあるので、そこの院長宛に紹介状を書きましょう。尤も、こちらより随分と世俗的な活動をされているので、驚くかも知れませんね」


 ゲイン修道会は半俗在家の婦人会のような修道会なので、その主催者の姿勢でかなり活動が変わるのだという。コロニアは商売を絡めたバザーのような行為で財貨を稼いで奉仕活動の財源確保をするのが得意らしい。さすが商都の修道会? なのでしょうか。


「ありがとうございます。ブリジッタ嬢と一緒にプルも薬草畑の手伝いをする事になっておりますので、お見掛けの際は声を掛けて頂ければ励みになると思いますので、目を掛けてあげてくださいませ」

「ええ、勿論です。見守らせていただきます」

「ありがとうございます」


 ビータだけに頼るのもね、と思うので他に目を掛けてくれる人を作っておきたかったんだよね。


「街を離れる前にご挨拶に伺いますので、もし、コロニアに手紙を出す用事等ありましたら、承ります」

「ええ、お願いするわね」


 という事で、お互い役に立つ関係を結んでおこうと思う。そういう、お互い様って大事だよね☆





 薬草畑でつかまえたプルと、一緒に来たがりの自称姉(仮)のビータを連れ、三人でプルの新生活に必要な物を買い揃えることにした。ビータママはこちらで用意するって言ってくれていたけど、二人で買い物したいからね。これも、暫く会えないことの埋め合わせみたいなもんだよ。


 薬とかは私の作ったセットを置いておく。来た時に減った分だけ足すつもりだから問題ないと思う。減っていれば、何があったかも察することができるし、ビータの家族へのささやかな恩返しも兼ねている。


「パンツ買うかー」

「いらない。それより、被れるマントみたいなブラケットが欲しい」

「あー ポンチョタイプね」

「サンチョ?」


 誰が老いぼれ騎士の従者だっつーの。布は二種類、麻の素材と羊毛の素材の布を買う。柔らかくってふんわりしている物が良い。


 布屋に行く。どうやら、ビータの知り合いの店を紹介してくれるというのだが、そこに好みのものがあるかどうかわからないから、やんわり断る。プルが選んだ好きな物を仕上げてあげたい。


 麻の素材は、薄緑色の芝生のような色の物を選んだ。草木染なのだろうか、悪くないと思う。迷彩っぽくってね。


「……これ……」

「良いわよ。変わった素材だね」


 店員さんに聞くと「ラクダだよ」という。何その動物? とは思わない。見た事はないけれど、話には聞いたことがある。砂漠にすんでいるでかい馬みたいな動物だよね。あと、瘤が背中にあるんでしょ、知ってるわよ。


「羊毛の倍ほども汗を吸うし、直ぐに乾くから風邪を引きにくいんだ」

「へぇ、それは子供向きかもね」

「その分、値段は羊毛の十倍くらいするけどね。普通のお店では扱わない素材だよ」


 十倍☆ まあ、何枚も買うわけじゃないし、旅に出る時はマントに仕立て直すようにすれば、野宿でも安心。悪い買い物じゃない。ビータは「ええっ!!」って小声で叫んでいるけれど、私は躊躇せずに買う事にした。


 健康は金では買えないからね。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 そんなこんなで、私はプルの新生活の準備をしつつ、色々な情報をできる限りこの街で探る事にした。ついでに、コロニア方面で護衛ではなくお使い仕事があるかどうかも冒険者ギルドで見てみたけれど、ないようだった。


 そして、旅立つ前日、ここしばらくの習慣で薬草畑に三人で仕事をしている時の話だ。


「ねえ、ヴィー」

「なに? 改まって」

「プルちゃんを迎えに来た時に、私も一緒に行商のたびに連れてってもらえない?」


 思わぬ物言いに驚いちゃうよ。確かに、最近は自分で起きられるようになったようだけれど、生活力も冒険者としての能力も甚だ怪しい。多分、今の時点でもプル以下だろう。残念ながらね。


 まあ、ビータが旅の道連れにいてくれるのは楽しいだろうが、私もこれからの事を考えて右往左往する時期だから、ビータと今すぐ行商の旅に出るのは不本意でもある。


「修道会で薬草畑を根付かせたら、一緒に行商をしよう」

「……そうね。あなたの足手纏いになるのは……友達として嫌だもの。ええ、皆さんと薬草畑のこと頑張るわ! でも、たまには顔を見せてちょうだい」

「ええ、帝国の西側でうろうろするつもりだから、年に何回かはこの街に立ち寄ると思うの。その時は、必ず会いに来るわ」

「約束?」

「友達としての約束」


 私とビータは寂しさ半分、嬉しさ半分で目を合わせて笑いあった。





 翌日、私は宿を引き払いメイヤー商会に挨拶に伺い、プルの事をお願いすると、当座の生活費を預ける事にした。また、商業ギルドのコロニアとエッセあての紹介状をビータパパが用意してくれていたので、ありがたくいただく事にした。


「では、行って参ります」

「お元気で。プルちゃんの事は任せておいてちょうだい」

「ヴィー、無理をしないでね」

「……またね……」


 北門まで見送りに来てくれたビータとママとプルに見送られ、私はメインツの街を後にした。歩いていくよ……途中まではね。目指すはエッセだよ☆




 これにて第二幕終了となります。第三部は『鉱業都市エッセ』です


第三幕終了後に投稿します。ヴィーの友人ビータとプルのお話です。


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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。

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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


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