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2-17 ビータパパはダンディ、私はちょっと戸惑う

2-17 ビータパパはダンディ、私はちょっと戸惑う


「二人とも、よく来てくれた。ビータの友人が家に来るのは初めてでね。家内も私も楽しみにしていた」

「……お、お父様、それは言わない約束でしょう?」

「いや、お二人は特別だとお教えしただけだ。悪気はないんだよ」


 やっぱビータはボッチだったか……最近は薬草畑関連で同世代とも少し交流できて来たみたいだから、これをきっかけに友人の訪問も増えると思いますよお父様!!




∬∬∬∬∬∬∬∬




 ビータの実家の商会は、中々の構えであったよ。真新しさこそないが、よく手入れのされた建物で、広さも大きい事を考えると、新興の商会ではなく、歴史のある存在なのだろう。『メイヤー商会』と看板がある。


「どうぞ、お入りください」


 中庭に入る通路から、奥の居住スペースへと移動する。最初は通りに面した部分だけに建物があり奥は庭だったのが、やがてL字になり、コの字になり最後はロの字になって中庭が狭くなるのがデフォルトなのだと言うが、ビータ家はL字で済んでいるのは元々の敷地に余裕があるからかもしれない。


 メイヤーって姓は元々「荘園の管理人」という意味があったらしい。その辺りで、荘園の農作物の販売や荘園内での物販代行などを手掛けてからこの商会を開くことにしたのかもしれない。代を重ねられる理由もその辺りにあるかもしれないね。


 来客を知り、中から年配の女性が出て来る。着ているものからすると……


「ようこそ、娘の友人の訪問を歓迎いたしますわ」

「ご丁寧にありがとうございます」

「……」


 プルは可愛らしく……カーテシーしよる……ビータママもビータも硬直する。

私もだよ。


「あらあら、挨拶がお上手ね……『プルですおば様』……プルちゃん」

「……」


 もじもじするのもまた可愛らしい。夕食の準備は進んでいるというが、いきなり訪問して食堂でご挨拶というわけにもいかないので、私的な来客用の応接スペースである書斎に案内されるようだ。書斎……やっぱり荘園主の家系っぽいね。あ、その代行? 管理人さんだね。





 応接間には、短い髪に整えられた口ひげを生やしたダンディなおじさんがいた。顔立ちはお父さん似かなビータは。


「ようこそ、わがメイヤー家に。娘の友人方を歓迎するよ。私がブリジッタの父親のエミールだ」

「私は駆け出しの行商人をしておりますオリヴィア・ラウスと申します。ブリジッタさんには大変親しくさせていただいております。連れの娘は、プルと申します。訳在って保護をしております」

「ふむ、オリヴィアさんにプルちゃんか。座って、少しお話をさせて頂こう」


 お母さんは会釈をし家の奥へ。ビータはお茶の用意をしに部屋を出る。


「どうかな、メインツの街は」

「以前、トラスブルで生活しておりましたが、こちらは歴史がある街だと感じております」

「そうだね。帝国首座の大司教領の都だからという事もあるが、古代の帝国の街づくりが優れていたということの恩恵・遺産でもあるんだ」


 ということで、街についての今までの成り立ちについてのお話を少しさせてもらい、お茶を飲みながら最近の出来事についても話をする。最初は眠そうな顔をしていたプルだが、お茶請けのクッキーが出て来た途端に活性化した。夕食もあるから程々だぞ!!




∬∬∬∬∬∬∬∬




 料理はビータとビータママの共同作業らしい。取り立てて豪華! というわけではないが、肉に魚、野菜にフルーツ、具の沢山入ったスープに白いパンと豪華である。帝国で小麦をふんだんに使えるのはステイタスなのだよ。基本帝国の半分くらいの場所は小麦が育ちにくいから、ライ麦が入っている黒いパンが多い。お金があるほど白くなる。


 黒パンも流石にライ麦100%にはできないんだけどね。それに、パンは焼くのに沢山の薪を使うしパン焼き窯も使うから高くつく。村だとパンを毎日食べられるのは領主館の人達くらいで、普通の村人は麦がゆも多かった。


 そう考えると、週末はパンと肉が食べられるから楽しみだった気がする。とにかく、ビータの家は金持ち&歓迎してくれているってこと。


「料理は口に合うかな?」

「とても美味しいです」

「……おいしい……うれしい……たのしい……」

「それは良かったわぁ、御替わり沢山あるから遠慮しないでね」

「……」


 私はしないけど、プルは遠慮せずするがいい。




 一通り食事を頂きながら、私はこれまでの旅の事を話した。村を出るところは、「成人したのでいつまでも厄介になるわけにはいかない」「先生の教えをより深めるために」といったところでぼかしている。流石に本当の事は言えない。


「それでトラスブルで冒険者になったのかね」

「はい。依頼を受けたり、街で代書屋の手伝いをしたり街の生活に慣れることも必要でしたし、商人の習慣も勉強しなければなりませんから」

「そうだね。行商といっても、初対面では中々信用が無いから買い手が付かないことが多い。何度も足を運ぶ必要があるね。それか、元々取引のある商会の契約商会員になるか……街の商会は私たちも含めてギルドに加わっているから、信用もあるが制約もある。行商ではその辺り、上手くやれるといいがね」


 やっぱり行商は信用が無いから難しいか……まあ、でもいいんだけどね。武器の実演販売とかなら問題ないでしょ? 目の前で信用が出来るんだから。


「それと、しばらくは南の方に近づかない方がいいね」

「戦争の影響ですか?」

「それもある。しかし、少々きな臭い噂が流れているのだよ」


 ビータパパ曰く、帝国南部の小領主たちが武装蜂起しそうなのだという。理由は、経済的困窮。領都を構えるほどの諸侯ならともかく、村の領主程度の騎士や下級貴族、その配下の下級騎士達は年貢以外の収入が無い為、お金が無いのだ。


 それで、金が無ければある奴からふんだくればいいじゃない? という事で、古来からある自力救済措置の決闘フェーデを悪用し、商人のような金はあるが武力の無い者に因縁を付けては金をむしっていたのだが、今は領邦平和令という禁止令が出され、違反した者は逮捕され投獄されている。


 つまり、決闘が禁止されたなら、みんなで一斉に武装蜂起すればいいと振りきれたのだろうという。


「それは商売にもなりませんね」

「ああ。小さな村や街は襲われかねないし、城壁を持つ街だって同じことだろうね」


 今は、南部の大司教座都市トリエルに接近しているのだという。それ以前は、年少の君主であったカトゥン方伯領の街や村を襲っていたという。方伯はトリエル大司教、メイン宮中伯と共同して『盗賊騎士団』の討伐に動いているという。あれ、やっぱりトラスブルに出て良かったっぽい。あのあたり、まさに戦場。


「メインツも影響を受けているから、街道を行くのは勧められない。川を下ってコロニアルより北に行く方がいいかもしれない」

「一度海まで行こうと考えているので、良いきっかけになります」

「海かー 私も見てみたいなー」

「ビータも旅に出たいというのは賛成できないがね」

「そうねー 朝自分で起きられるようになってからねー」

「だ、大丈夫だもん、旅に出たら起きられるようになるもん」


 いや、それはない。一人で起きられないって、成人してるんだよねビータ。


「明るくなる前に目が覚めるのが当然」

「……はい……」


 推定四歳児に窘められるビータ。そりゃ、私も旅の仲間が欲しいけれど、ビータじゃないんだな。危ないからね。自分の身が守れるくらいの力は得てほしい。まあ、土牢で囲んでおいてもいいけれど。カッコ悪いじゃない?





 食事が終わり、お茶を頂きながら旅の話をしようと思うのだが、プルの事を相談しなければならない。


「メイヤーさん、ビータからお話を聞いていただいているかと思うのですが、今日ご相談したかった事は、このプルの事なのです」


 私は、プルとの出会い、彼女の生まれ故郷が分からない事、幼い彼女を連れて旅ができないだろうことを伝える。


「修道会は?」

「街で生まれた子供でないと孤児としては預かれないと言われたのよね」

「そうです。院長先生とは今日はお会いできなかったので、孤児院の責任者のシスターからの返答なのですが。多少寄付をしてでもお願いできないかと改めて相談しようかと思っています」


 ビータが「うちで預かれないかな」と口添えする。ご両親は思案顔である。まあ、朝自分で起きられない娘のセリフだからね。信用度が無いよね。全部ビータママの負担になるじゃない? ビータは下に弟さんが二人いるそうなのだが、知人の商会に見習いとして勤めているのだという。商人の子供はそれが当たり前だから。


「うちで預かるのは構わないが……」

「三年ほど、この子が七歳になるまでです。その先は、私と旅をしながら生まれ育った場所を探したいと考えています」

「なるほど。三年経てば君も行商人として目鼻がつく。この子も見習にでる程の年齢にもなると考えているわけだね」


 私は頷き、お願いしますと頭を下げる。横で、プルとビータも一緒に頭を下げている。ビータママはプルを育てる事には賛成みたいなのだが……恐らくネックはビータが自立できていない事なんだろう。頭をもっと深く下げ給えビータ!!




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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


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