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2-12 武具屋は折れた剣に驚き、私はコスパの良い剣を求める

2-12 武具屋は折れた剣に驚き、私はコスパの良い剣を求める


「……ゴブリンの頭に剣を叩き付けたら剣は折れると思いますよ」

「軟なんですね」

「いいえ。斧じゃないんですから剣はそうやって使うものではないですよ!」


 あれ、バゼラードがゴブリンの頭かち割ろうとしたら折れたと報告したところ、何故か反対に怒られちゃってるんですけれど私。お客さんだよ!!怒られて納得いかなかったのだが、新しいショートソードを買い、ポールウエポン用のツゲのしっかりした柄も購入する事にした。


「それも折れたんですよね」

「ホブゴブリンの胴体を叩き切ろうとして、途中でね」

「……ヴォージェで胴体が寸断できるほど、刃が鋭くありませんからね。バルディッシュとかグレイブくらいしっかり曲剣のように刃が付いていないと無理でしょうね。でも、使い方が長剣みたいになるので冒険者向きではないと思いますよ」

「ですよねー なんでも斬れる剣とかないですかねー」

「あはは、魔銀剣であなたが魔術師ならある程度なんでも斬れると思いますけれど、この店に魔銀剣はありませんので無理ですね」


 私の魔法の袋の中には入っているけどね。でも、見せるわけにもいかないので、それは良しとする。




 いろいろな片手剣を見せてもらったのだが、やはり、強度や斬撃力を重視するなら両手剣や斧のように質量が伴わないと難しいことが理解出来ただけだった。でもさ、折れてもいいから次々と安価な剣を使い倒すという使い方はどうでしょうか?


「安価な片手剣……ない事もないですけど、今は数が揃いませんよ」

「何故です?」


 どうやら、帝国の東部や北の国々で農兵が自衛用に持つ廉価な片手剣が大量に生産され持ち出されているのだという。つまり、需給の関係で数が出回りにくいのだという。


「『ベーメンソード』って言うんですけど、あ、ベーメンは帝国の東の地方の名前ですね。元々、異教徒の軍隊が装備している曲剣にヒントを得て作られるようになったコピー商品みたいな剣です。シルエットは反りのある片刃の剣なのでカットラスとかシャムシールみたいですけれど、バゼラードと同じように剣身から柄の部分まで一体成型で柄は金属に革をまいた程度の加工で護拳の部分は柄の後端を折り曲げたような作りです」


 店にある在庫を見せてもらう。中古の剣で、価格は銀貨一枚とかなり安い。作りは雑だし、鉄もそれほど良い物を使っていない気がするが重厚な感じは気に入る。


「これって、鍛冶師に新作を作ってもらう事は可能ですかね」

「難しいね。この街の鍛冶師はこれを作るのは断るだろう。徒弟が数作る事を前提に作ったもんだろうからね。腕のある職人は嫌がる。もう少し、帝国でも武具職人が多くて徒弟の多い場所に行って頼んだ方がいいと思うよ。親方連中は手掛けないだろうからね」


 その、農具のような武骨な剣は、街中には似合わない質感と見た目をしていた。農夫の剣などと揶揄され、徴兵された時に支給される装備だという。確かに、金持ち商人や見た目を大切にする傭兵を相手に剣を作る職人からすると、商売にならない作りの剣だろう。だが、それがいい。


 草刈り鎌のように、魔物の首を刎ねるのにはこんな武骨な剣が似合っている。曲がっても問題ないし、使い捨てでも構わない。投げナイフみたいなものだ。銀貨一枚なら、数匹斬れればお釣りがくるし、それに、今回折れたのは耐久テストみたいなものだから、本来はもう少し上手に柔らかいところを斬る。


 ハンガーと元になった武器は同じような曲剣なのだろうが、ベーメンソードの方がより道具感が強い。個人的にはこの方が好みなのは村育ちだからかもしれない。鋤や鍬に似ているからだろうなきっと。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 修道院の薬草畑に顔を出す。ビータは今日もお仲間の会員たちと薬草畑の手入れをし、お茶を楽しんで帰っていく。多分。


「ヴィー今日も見に来てくれたの」

「そうね。どうかしら、薬草の様子は」

「多分根付いて大丈夫だと思う。枯れたりする気配もないし。あの方法で上手くいくみたい」


 ホクホクとした顔で満足げなビータが、お仲間の皆さんを私に紹介してくれる。その、師匠とか先生とか止めてちょうだい!! 友達で十分だから。


「ビータ、これ、この街の周りにある薬草の採取できそうな場所の地図。私のお手製よ」

「……ありがとう……」


 そう、地図が完成したという事は、そろそろこの街ともおさらばという事でもある。一ケ月くらいの滞在をめどにして高い宿に泊まっているからね。


「じゃ、私はこれで」

「……ちょ、ちょっと待って。あのね、ヴィー……私の家族に紹介したいの」

「あ、……ええ、紹介してもらえるなら嬉しいわ」


 危ない危ない、冗談で『新しい婚約者として?』とか言いそうになってた。いやほら、今は転生した後も土に帰されているから。完全にこの世に存在しなくなったからね。


「それでは、明日にでも宿に迎えに行くわ」

「夕食を共にって感じかしら」

「ええ。馬車を出すので、冒険者の姿でなくてお願いね」


 幸い、あの三着仕立てたドレスも仕上がって来たので、大人しめなブルーのドレスにしようかと思う。装飾品も地味で済むしね。私は快諾し、今日も街の外にでる。薬草採取もできるだけしておきたい。


「じゃあね」


 ビータに別れを告げ、私は再び城門の外にでる。最近、川上の方に採取に出るのがマイブームだ。ゴブリンもいないしね。





 門を出て、少し遠出をする。そうです、街道から外れて『疾風』を纏って加速する。今日は薬草の採取もするけれど、一つの依頼を冒険者ギルドで受けているので、それもこなすつもりだ。星は二つの依頼。


『メイン川支流沿いに最近できた木造の建築物が何か調査する。銀貨十枚、情報の内容によって追加報酬有』


 ということで、単独で活動している斥候能力のある冒険者である私にオファーが来たという感じ。え、だって面白そうだから、ちょっと見てみたいじゃないですかその木造構築物。


 メインツ司教領というのは、川沿いに点々と存在するので、実は、直線距離としては離れていたりする。川岸に拠点となる街ができて、その周囲に領地を持つという感じなのだ。だから、ここは川上でそれも対岸。背後は別の諸侯の領地であり、中に入ることは司教領の兵士や騎士には問題なのだが、狩人や冒険者はその限りではないというグレーゾーン。


 安全というわけではなく、罪にはならないという程度。相手の領地の兵士がいれば詰問はされるし、場合によっては拘束される。危険はそれなりにある。





 川岸から離れ、街を通らずそのまま森に入る。お、薬草沢山自生しているな……調査も大事だけれど採取も大事だね。街の周りはビータたちが採取するから、私は足をちょっと延ばしてこの辺りで採取するのも悪くない。あ、これもいけるじゃない、これも、あそこにも、うわー宝の山だね!!





 しばらく我を忘れて素材採取に励んでいると、少し先の丘の上に何やら人工物としか思えないものが目に付いた。


「……あれか……」


 恐らく、先住民族が作り上げたヒルフォートと呼ばれる原始的な城塞の跡を利用した物だろう。別におかしくはない。古代帝国の築いた城壁を利用して街を開いた場所もあるし、その古代帝国の駐屯地も先住民の要塞を取り込んだ場所もあるのだから。


 石の基礎のように見える低い石垣の上には丸太で取り囲んだ塀がそなわっている。その上に、簡素な櫓が見えるが、恐らくは監視塔のようなものだろう。人影は見えないので今は不在なのかもしれない。ラッキー。


 私の視力では見えても、相手からは見えないから。私、目が良いんだよ。師匠にも「良く見えるな」と褒められたことがあるしね。





 林間を足音を立てず、足跡を残さないように木々の間を駆け抜ける。私は風になる! 


 門が見える位置まで移動する。その周辺にはかなり多くの足跡が見てとれる。人の足跡とは異なるが、それでも似ている大きな足跡……え、だって素足だよ足跡が。おかしいじゃない? 人間が裸足でこんな山奥で砦築いて生活しているなんて。


 それに、私よりかなり大きな足跡だから、成人男性くらいはある。ゴブリンの子供のサイズではない。裸足の足跡。何だか、嫌な予感がビンビンと響いてくるな。


『Geigei!!』


 野太い叫び声のような音が木立に響く。どうやら、門の前から続く道を歩いてくる一団が現れたようだ。足音の数からして凡そ十人といったところだろうか。


 片手には斧か槍、そして何人かは丸盾を持ち、頭には革の兜か無帽、指揮官らしき一際大きな先頭のそれは鎖頭巾を被っているように見てとれる。荷駄に載せた食料に……女……


 そこに現れたのは、醜悪な顔に筋骨隆々である肉体を持った魔物……オークの一団であった。その姿は、その昔、川を遡り海から村々を襲い略奪を繰り返した北方の賊徒のようないでたちであり、その行動様式はそのままのようであった。


「なんでこんな場所にオークの砦が……」


 調査依頼、銀貨十枚じゃ安すぎるよね……





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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


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