13 望まぬシナリオ―2
乙女ゲーム「プリンセスラブストーリー」の全キャラクターのハッピーエンドとノーマルエンドを攻略すると、特典ストーリー『逆ハーレムエンド』が出現する。
選択肢や分岐はなく自動再生のムービーで、最終スチルではちょっぴり大人向けになったイラストが拝める。
可愛いネグリジェを着た美少女ミアが恥ずかしげにベッドに横たわり、それを美麗キャラ総出で囲んでいるの豪華特別仕様スチル。ギリギリR指定を免れた攻めてるピンク色のスチルに、前世のカトリーナはヨダレを垂らして拝めたものだ。
でもそれは2次元だから見惚れるわけで、現実だとしたらとんでもない倫理違反で、ロマンチックのカケラもない。喜ぶのは頭が花畑の女だけだ。
実際にカインに本当に惹かれ、恋している目の前のミアは他の攻略者に拒絶反応を示している。
「ねぇ、どうして他の攻略者のがミアを好きになったのか分かる?例えば相談にのったとか……」
「なんで分かるの?」
「むしろなんで相談に乗るのよ!?通常ルートと同じフラグでしょう。もしや全クリしてないわね?」
「ごめんなさい。ゲーム途中で止めちゃってたから……でも元気がなかったら相談にのるのは普通でしょ!?カイン様の大切な臣下だし、カイン様との仲を認めてもらうためにも私も彼らを大切にしなきゃって思って……」
カトリーナは胸を押えた。計算もなしに攻略者の心を掴むヒロイン度数の高さと、ミアの純粋さに対して自分の汚れ具合が辛い。
天然でやるミアは本当に選ばれたヒロインだ。
「カティ大丈夫?本当にごめん」
「恐ろしい子っ!でもミアの優しいところ、わたくしは好きでしてよ」
「私もカティが好きだよ!でもどうしよう……なんでカティは死んじゃうの?カイン様ルートでは単なる領地送りで終わりなのに」
「他の攻略者の婚約者……すなわち取り巻きが起こした嫌がらせも派閥のトップであるカトリーナが全責任を負うことになるの。部下の始末は上司が取ってクビになるのと同じね」
不祥事を起こしても相手は公爵家の娘。カイン単独ルートではカトリーナの犯行は単独で命の危険はなく、カインの心移りの落ち度もあってカトリーナは領地送りで済む。
しかし逆ハーレムルートは集団いじめと言っても過言ではなく、ミアへの嫌がらせの量は増えて、極めて悪質なものになっていく。国外追放という名の処刑は当然だ。
断罪スチルは王城の地下牢で処罰を言い渡されるという暗くて地味な感じだった。
「カインルート確定だと思って油断してたわ。神スチルもないし、死亡フラグも立つなんて最悪ね」
「でもゲームと違って今のカティは実際に取り巻きに指示しているわけじゃないんでしょう?なら国外追放されることは無いよ!きっとそうよ!」
「あなたって子は……でもきっと取り巻きたちはわたくしに指示されたと口を揃えて嘘をつくでしょうね」
「酷いわ。カティが彼女たちに何をしたっていうのよ」
自分の身にも危険が迫っているのに、カトリーナを本気で心配してくれるミアの気持ちが嬉しい。同時にこんなにも可愛い子を困らせる奴らに怒りと疑問が湧く。
「ねぇミア、この嫌がらせについて自分の婚約者の仕業だって攻略者たちはご存知なの?ミアのカイン殿下に対する気持ちも」
「たぶん知ってる。私がやんわり心に決めた人がいるから誤解されたくないって言っても、友人としてミアの心配くらいさせてくれって離れてくれないの。私よりずっと高位の人だから断ることもできなくて……」
ミアは本気で困っているようで、また空色の瞳に涙が張る。
攻略者たちは王太子カインと元平民が結ばれないと判断して、ミアが失恋する隙を狙っているに違いない。
単独ルートと同じように嫌がらせをする婚約者をわざと泳がせて、一方的に婚約破棄できるための材料を集めながら……
「――――ぁ」
突然見つけてしまった答えに呆然とする。
「カティ?」
「……嫌がらせが増えたこと、カイン殿下は何か言ってたかしら?側近のアルト様と何か相談したり、他の攻略者に嫉妬するような様子とかは」
「カイン様は――――複数の犯行だと分かっている、今アルトが証拠を集めているから待っててくれ、って言ってたわ……あら?分かってるのに他の攻略者に注意してくれないのは何故?あれ?」
「ふふふ……なるほどね。ミアを得るために手段を選ばないあたり王族らしいわね。あぁー嫌になっちゃう。ごめん、少し考えさせてくれないかしら」
ミアは心配する視線を送りつつも、黙って待つ姿勢になってくれた。
「はぁ……」
カトリーナは大きく深呼吸をして天を仰いだ。
幸か不幸か、アルトの行動の理由に気付いてしまった。彼はカインの命を受けて、カトリーナに恋慕する演技をしていたのだと。




